Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#920 英語は筋トレって本当でした。翌日の英語力に俄然差が出ます!~「英語のハノン 初級」

『英語のハノン 初級』横山雅彦・中村佐知子 著

英会話。

 

今年は2月に入ってからほぼ毎週海外からお客様を迎えているのだが、国内のお客様とお会いする際にも英語を使う頻度が増えて来ている。オンライン会議も加えると一日の中で外国語を扱う率が半分を超える日もあり、家に帰ってからの脱力感がすごい。

 

そして日によって英語の出来栄えが異なることに気が付いた。こんなに達成感に差が出るのはなぜだろう。出来栄えというとわかりにくいかもしれないが、要は「今日は英語が上手く喋れてるぞ」という自己満足の度合い程度のことと思って頂きたい。

 

テンポよく、かつ相手の会話を妨げないように英語を話し続けるにはコツがあって、頭で考えながら英語に置き換えて発話するのではなく、瞬間的に感じたことや思ったことがさっと口から出なくてはならない。つまり文章を書くときのように感じたことを頭の中で立派な文章に組立て、それを翻訳して発話しているようでは間に合わない。

 

例えば目の前を歩いているおばあさんの前に猛スピードで自転車が向かってきたとする。しかしおばあさんは自転車に全く気が付いていない。それを見ている人はとっさに「危ない!」と口に出すだろう。それと同様に反射的に使える英単語やフレーズを増やしていくことがスラスラと英語を話す時の要だと考えている。もちろん頭の中でも危険な状況を察知し、それに見合った言葉を思い出させるような作業が起こっているには違いないが、視覚や聴覚などから得た情報をとっさに言葉にするように、外国語も使い慣れていく必要がある。

 

そして「喋る」という意味で外国語を使い慣れるには、その言語を発話する経験値を増やすしかない。よく語学学習を筋トレに例える方がおられるが、それ本当に真理だわ!と感じるような経験を何度も繰り返して来たので、とくに会話を磨くには発話して体に覚えさせるのが一番早い。

 

その語学筋トレに最も効果的なのは瞬間英作文だと思っていたのだが、たまたま読んだ記事で本書のことを知り、早速練習を始めてみた。

 


瞬間英作文と英語のハノンには大きな違いがある。瞬間英作文は聞こえて来た日本語を英語に置き換えるという作業だが、英語のハノンは英語の文章を2回リピートし、その後に変化球が投げられる。例えば、

 

The supermarket is near the station.

 

という文章が2回繰り返される。学習者は聞こえて来た文書を同じように2回リピートする。すると今度は指示が出される。例えば「negative」という指示だったとしよう。それを聞いた学習者はその文章を否定文にして答える。

 

The supermarket isn't near the staion.

 

そこへ正解が聞こえて来てそれに合わせてまた2回リピートする。音声はまずはスローペースで、次はネイティブの一般会話の速度で発話される。1つの項目に5つの文章があり、ユニットは全部で19と結構なボリュームだ。本書の肝はこの変化球で、まるで会話している時のように結構な負荷を与えてくる。頭の中にその文章が残っていなければ指示に合わせて変化球に立ち向かうことができないので、このシステムは英文がさりげなく記憶に定着すると共に英語筋肉も同時に鍛えられるという優れモノである。

 

私の学習法は1回目のスローペースはテキストを見ながら発話。2回目のネイティブスピードは本書を伏せて練習した。加えて2度目のネイティブスピードのものは1つの項目(5文章)が完璧にこなせるまで何度もやってみた。

 

まさに筋トレ。1冊終わった今、ちょっと舌が滑らかになった気がする。可能な限り毎日1ユニットに取り組んだのだが、どうしてもできない日もあった。するとどうだろう。翌日の英語の出来栄えに大きく差がでる。脳と口の距離が遠くなったかのように、とっさに言葉が出てこない。英語は主語によって動詞の格を変化させなくてはならないが、それすらうまくでてこない。これは瞬間英作文を越えたかも。

 

疲れてどうしようもない日などは1つのユニットを分けて学習するなどの対応を取ったが、とりあえず言えることは「毎日学習すること」だ。次のステップである中級もすでに購入してあるのだが、本書には英国英語の音声もあるとのことで有料だそうだが試してみるつもり。

 

よく同じテキストを最初から最後まで通して学習した後にもう一度同じようにチャレンジすることを「まわす」と言うが、本書に至っては私も3回まわしてから次のステップに行くつもり。2回目は1回目と同じ様に1日1ユニット。3回目はもう少し増やしつつやってみたい。中級に入るのはその後かな。

 

春になり俄然やる気が出てきております。英語がんばる。

 

#921 (仕事の)数字に強くなりたい~「財務経営力の強化書」

『財務経営力の強化書』赤岩茂・鈴木信二 著

確かに強化書。

 

なかなか記録の追い付かない日々。この頃は紙の書籍を読むよう努めている。圧倒的に多いのがビジネス書で、書店で見つけて「これこそ今の私のパワーアップに必要な一冊!」と意気込んで購入するのだが、それが全く実力につながっていない。というのも必要と思える本を購入し、手元にあるという安心感だけで満足してしまっているからだ。しっかり読まなくては身に付かないし、本もその栄養価がフレッシュなうちに読み始めないと内容価値が劣化してしまう。書籍そのものの質が下がるのではなく、「必要」と思っている読む側のモチベーションが下がるので拾える情報に限界が出てくるのではないだろうか。

 

私は数字に弱い。だから財務関連の内容の話題が出てくるとものすごく焦る。みな暗算でものすごい数字を把握したりするのだが、私がゼロの数を下から一十百千万と数えてやっと1,234,567,789,000が1兆2345億6778万9000であると数字の大きさを把握している間に同僚はすでに上の数字を米ドルに計算し大体の財務状況のシミュレーションが終わっている。

 

すごい人が周囲に山ほどにいるので、会話のテンポも速く付いていくだけで精一杯。いや、ついていければラッキーなほうで、半分以上わからないこともある。本書は多分そんな打たれまくった日に購入した一冊なのだろう。結局「財務について学ぼう」の波は徐々に落ち着きを見せ、今や完全なる静かな凪ぎ。しかし、財務の話はビジネスにおいては避けられないので、とにかく目を通さねばと強い意志で読み始めた。

 

まず、私のように会計や財務について、社会人になって会社に入ってから学びました!な人には体力をつけてくれる一冊かもしれない。決算書とかわけわからん!な場合にはこれよりもより嚙み砕いて説明してくれている書籍は沢山あるので、そちらを数冊読んでからのほうがわかりやすいだろう。

 

加えて本書は会社を経営する立場の方がお読みになれば、具体的なお金事情が見えるような内容となっている。自分の会社がどのくらいのお金を持っているのか、何に使っているのかを知り、次に何をすべきかを考えるにあたってのポイントがかなり具体的に記されている。

 

私の場合、さっと目を通し今自分が知りたい事を探すのに大いに役立った。それは「どこに問題があるのか探す方法」で、決算書の中からどう引き出すかが説明されている。計算式が提示され、その具体例があることから私でも理解することができた。日頃数字に対する苦手意識があると、ロジックをすぐにキャッチできないので読むことすら苦痛になることがある。「あ、無理」と気持ちがシャットダウンしてしまうのだが、そこをもう一歩がんばって1章でも読んでいくと、必ず一つの知恵が授かる構造になっている。一度読んでわからなくても、表や例を何度も見てゆっくりで良いから納得するように読んで行けば、説明されている内容をどう業務に活かすかが見えて来た。

 

まずは知りたい内容や必要な情報だけを読んでいく読み方でも構わないだろう。まあ、最初から読んでいく方が決算書についての包括的な知識が付くと思うが、数字苦手な人は必要なところから読んで、いつか全体的にわかるようになる方法でも良い。私も今はそんな感じで読み、とりあえずいつでもチェックできるように会社のデスクに常備した。

 

本書は一つのポイントを知ることで実務に大きな進歩を感じられるようになったことから「強化書」であることは間違いない。ああ、数字に強くなりたい!ところで本書、今みるとKindle Unlimitedでも読めるらしい。なんと便利!

 

#919 表紙の美しさに見惚れる~「リボン」

『リボン』小川糸 著

生きること。

 

やっとの思いで携帯を新調した。スマホを使い始めたのはまだ海外に居た頃だった。通信会社はそれぞれの国でそれぞれのプランを持ち、その差は結構大きかったりする。料金形態も異なるし、カバーエリアの差によりそれぞれの通信会社ごとに1台ずつスマホ持ってるよという地域に出かけたこともある。海外ローミングが激安な国もあれば、とんでもない金額になる国もある。その点では日本はまだまだ基本料金が高額ですね。

 

数年前に帰国した時、選択肢がありそうでなさそうな日本の「事情」がなかなか把握できず慣れるのに苦戦した。というより未だあまりわかっていないことも多いのだが、とりあえず使うに困ることはない。スマホはとても元気に丈夫で、壊れてもいないし普通に使えるし、もっと言えば会社の携帯も持たされているので全く不便を感じずにいたのだが、この頃充電が持たないことが増えてきた。そろそろバッテリーの寿命かなと思いつつ数か月。ついに電話1本でバッテリーがFullから30%台になってしまい、重い腰を上げてアップルストアへ。その場ですぐに購入した。私の旧機はホームボタンのある一桁台のiPhoneだったが、下取りキャンペーンのおかげで約1万円ほどがキャッシュバック。アップル、ありがとう。

 

それにしてもスマホ、高いですね。携帯は古いものでもあまり気にないのに、なぜかmacbookだけは定期的に新調し続けている。このほど出張用にairを買おうかと検討していたのだが、スマホと金額に大差がなくて驚いた。こちらは秋まで待とうかな。

 

さて、そんなスマホ新調に気を良くして、Kindle内の読んでいなかった書籍から表紙のキレイなものを選んだ。

([お]5-4)リボン (ポプラ文庫 お 5-4)

 

きれいなのでもう一回張っておこう。

よくよく見ると刺繍です。この鳥はオカメインコと言うそうで、彼が本書の主人公である。鳥はペットの中でも比較的長寿で30歳くらいまで生きるそうだ。30年と言えば、小学生が大人になって結婚し、子供が産まれてその子が小学生になるくらいの期間に相当するだろう。

 

本書は短編集の形式で、1話目と最終話が時代を経てリンクする。1話目で卵から鳥がかえった。3つの卵のうち、かえったのは一つだけだった。産まれた彼は「リボン」と名付けられる。リボンはおばあちゃんのすみれちゃんと、孫のひばりさんの手でこの世に誕生した。卵を見つけたすみれちゃんは、なんと自分のおだんごまとめた髪の中で卵を温めた。小学生のひばりさんは転卵などを手伝う。大親友の二人は祖母と孫の関係であるが、実は二人に血のつながりはなかった。というのも祖母はひばりの父を養子として迎え入れ、育てたからだ。

 

すみれちゃんは若い頃に音楽を学んでおり、ちょうどベルリンの壁が築かれた頃にドイツに留学していた。ベルリンの壁は約30年あまりベルリンを東西に分け、1989年についに崩壊。その様子をすみれちゃんとひばりさんはテレビで見ている。1989年は平成元年だから、時代設定は平成のお話となる。

 

すみれちゃんとひばりさんの温かい関係性にリボンの存在が加わり、和やかにストーリーは流れていく。読んでいるとおばあさんとお孫さんのふれあい、そして「生きるとはなにか」を伝えるという点で梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ(新潮文庫)」に重なるところがあるのだが、そこにリボンがいることで話は育つ。

 

ある日、学校から帰ったひばりは、玄関前ですみれちゃんが倒れていることに気が付いた。急いで駆け寄ると、窓を開けた隙にリボンが外へ飛んで行ってしまったという。そこからストーリーはリボンの旅となる。

 

リボンは飼い主が変わる度にに新たな名を付けられる。みな、意味があり、思い入れがある。リボンの行く先はいつも何か事情があり、やはりそこでも「生きる」ことがテーマとなっている。

 

最後の章を読むことで本書の筋が見えてくるのだが、想像した通りではあっても泣けてくる。美しい鳥の表紙が心から離れない。

 

#918 春はお片付けの季節です~「1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話」

『1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話』昼田祥子 著

断捨離。

 

春が近くなり衣替えの準備をしたいと考えている。早いうちにクリーニングに出すべきものなどはお店に持参。あと今年はお直し予定のものもあるので早々に対応したいところだ。断捨離を考えるにあたり、私にとっては服が最も始め易いアイテムで、単純にある一定期間の服の登場回数を基準に粛々と進めている。全く着なかったものは処分。数回来たけれどあまり個人的に好みではないというものは外出用から家着などにシーンを移動させ、古いものを処分。とてもシステマチックに考えられるので楽々断捨離である。

 

一方で本となるとそうはいかない。そもそも未読が多すぎるので捨てる捨てないの判断が出来ない。まずは読んで内容を吟味することから始めなくてはならないのに、あれも読みたいこれも読みたいと次々に購入してしまう完全なる沼。まずは「読む」という対象物そのものに対峙するというスタートラインが洋服と本では異なるので、洋服のほうが私にとっては痛みの伴わない断捨離となる。

 

とは言え、そう愛着があるわけではないが捨てられないものがある。それは購入時の金額が高額であったもの。この「高額」は文字そのもののhigh priceではなく、買った当時の収入に占める割合と言うか労力というか、それを購入するにあたり生活費を切り詰めたとか、ものすごく考えに考えて購入したとか、当時の買い物として費用対効果があると判断して買った物だ。つまり買った事自体に思い入れがあるために捨てられない。

 

しかし、本書を読んで少し気持ちが変わったかもしれない。

 

本書は洋服に特化した「捨てる」の話であり、断捨離関連の数ある書籍と内容が重なる部分も多い。しかし、一般人が1000着もの衣類を持ち合わせているということはまずないだろうし、コーディネーターというお仕事柄、洋服を見る目は超えているに違いない。衝動買いのレベルも異なるだろうし、捨て服なんて無いに等しいのではないだろうか。

 

人によっては洋服の断捨離は簡単でも趣味で集めた物が捨てられないという場合もある。むしろ本書の「衣類」の部分を本やCDや化粧品や食器などに置き換えて読むことで2倍にも3倍にも本書の意図が広がってくる。コレクターに向けての断捨離とは!を説いた本といった方がわかりやすかもしれない。

 

タイミング的に人生におけるイベントが著者の断捨離のタイミングと重なり合っているようなところも否めないが、確かに大きな変化は起きている。もし今、私の家から1000冊の本が消えたら、確かにスッキリ感はあろうだろう。常に頭の中に「紙の本を読まなくちゃ」という意識が小さなストレスになっていたとしたならば、それが完全に消え去ることで気持ちも晴れやかになるに違いない。

 

こんな感じで服を別のものに置き換えて考えていると学びは大変多かった。著者は自身の経験からご実家の片付けについて書かれており、そのお話が妙に印象的に心に残った。著者のお父様はがん闘病中ですでに何度かの手術をされているそうだ。すでに子供たちは巣立ち、80代のご両親お二人で6LDKの戸建てに住んでおられる。スペースがあるだけに物を溜め置くことが可能であることから、ご両親はお子さんに関する全てのものを、約50年あまり保管していたそうだ。

 

80代という年齢は恐らく過去に執着してしまうと思うので、よりお子さんの小さな時のものなどは捨てたくない!と思われるだろうし、もしかするとそれがどれほどの量になっているのかも想像つきにくいのかもしれない。小さな赤ちゃんの洋服も思い出の1着くらいなら良いけれど、全て保管となると相当な量になりうる。

 

しかしこう言っては残酷かもしれないが、80代となれば終活に向けての作業を始める人もおり、残された人に迷惑が掛からないようにと身辺整理を始める方が少なくないという。著者が「80になって’いつか使う’はもうないんだから、今使っていない物は全部捨てて!」と書いておられるが、高齢になるとその判断が付かない上に片付ける労力もない。頭の中に自分の実家の様子が思い浮かび、せめて実家に置きっ放しの自分の物は早々に片付けようと決意。

 

物を手放す行為の中で最も期待する点は、片付けや断捨離関連書籍でよく見かける「何かを手放せば必要なものが入って来る」ことだ。もちろん本書でも触れられており、そこがモチベーションアップにつながった。捨てられなかったあれこれも、デザインが古くなっているし、重さや機能性などを考えるとそろそろ卒業時期なのかもしれないと思えるようになった。1000枚もの衣類を手放せば部屋1つ分くらいの荷物になるわけで、そこから発生した変化はきっとこの1冊では書ききれなかったことだろう。なんとなく続編があるような予感。

 

#917 江戸の美に癒されています~「夜叉萬同心 9」

『夜叉萬同心 9』辻堂魁 著

品川。

 

時代小説を読むことは、私にとってファンタジーを読むと同様で、実際に経験したことのない世界を想像できる点で共通している。江戸のお話は魔法モノの作品を読むこととそう大きな違いはなく、どちらの作品も想像力が広がることと目の前の現実から別の次元へ飛び立つくらいの大きな気分転換になっているのだが、この読書の習慣が無かったらきっと押しつぶされていたかもしれない。趣味や気分転換の方法を一つ持っておくことをこの春社会に出た方には是非是非おススメしたい。

 

さて、今ものすごく楽しみながら読んでいた本書だが、この9巻目が今でている最新刊であり最終巻である。小説を読む時、1日で読めるものもあれば何日もかかるものもある。まるで外国語の小説を原書で読むかのように、本書は一語一語を楽しみながら読み進めたのでかなりの時間をかけて読んだという印象がある。

 

 

隠密方同心の七蔵は、この頃関東地域にやって来たという押し込みの一団を追うこととなった。品川にある旅籠の主人が何者かの手によって襲われたという。それが押し込みの特徴と合致していたことから、密にお奉行様より七蔵へと調査が依頼される。

 

当時、品川というのは江戸の出入り口のような役割で、ここにも岡場所は設けられ、江戸郊外の繁華街というイメージだったようだ。島本は静かに海景色を楽しみたい人に打ってつけの旅籠で老舗として地域をまとめる役割も担っていたという。その主人は料理の腕も良く、夫婦でしっかりと伝統を守りつつ運営していたという。

 

ところがある晩押し込みがやって来て、なんと押し込みは鉄砲を持っていた。当時は種子島と言ったらしい。その種子島こそが押し込みであることの証拠であり、七蔵らは追うこととなる。

 

島本にやってきた七蔵らだが、品川は町方ではなく道中方の担当であった。しかも道中方は勘定方の支配下にあるので、町奉行とも指令系統が異なる。よって事件の子細が分からない。すでに事件から半年ほどの時がたっており、事件の証拠となるべきものは消えかけているに違いない。

 

しかし七蔵は島本に滞在しながら一つ一つの証拠に迫る。同時に島本には客があった。権三は顔に傷があり、一見恐ろしそうなのだがなぜか人の心に温かく迫るところがあった。牛を買うために品川にやって来たという権三と島本の風呂で出会った七蔵は、牛の市で聞いた情報として、品川に新しい遊技場の計画があることを告げる。

 

それにしても今回は終わり方がものすごく美しかった。ああ、やっぱり時代小説は心震わすものがありますね。本書、22年に出版されているが続きは出るのかな?著者の他の作品もぜひ読んでいきたい。

 

 

 

この9巻目は終わり方が印象的だった。

 

#916 どうすれば経験ゼロでも農家になれるのか~「農ガール、農ライフ」

『農ガール、農ライフ』垣谷美雨 著

農地を得る。

 

今年は天候が読めない。よって花粉症対策に空振り感がある。かゆいのです。私の場合。鼻より目と肌に来る。まだ今年は目には出てきていない。花粉症の皆さん、どうぞご自愛下さいませ。

 

Kindle内の本を整理しながら、どうすれば読書のスピードを上げられるか考えていた。ひとまず読みやすそうなものを次々に読んでいこうと現在がテーマになっている小説を読んでいくことにした。

 

今年に入りどんどんと物価が上がっている。毎月の食費も少しずつ増え続けており、ちょっとでも質の良いものを購入しようとBIOのものを見ると今までの何倍もの価格でなかなか手が出せない。加工品も随分値上がりしており、いつものペースで調味料を購入していたら結構な金額になっていて驚いた。これからは積極的に節約する必要がありそうだ。

 

ただ春は季節の野菜がおいしい時期で食費を抑えるのは難しい。確かに去年と比べると数十円高めの価格になってはいるが、それでも農家さんを考えると積極的に食べていきたいし、付加価値の高い野菜や果物の価値をしっかり味わいながら頂きたい。なので、食費は相変わらず増え続けております。

 

そこで未読の書籍の中にある農業関連の書籍を読むことにした。まずは小説から気軽に読んでみようと本書を選ぶ。

 

本書は東京で暮らしていた久美子が派遣切りと失恋を同時に迎え、新しい生活へと前進するストーリーだ。久美子の境遇は恵まれているとは決して言えない。まず両親はすでに他界しており身内がいない。広島から東京へ出て来た久美子は、大学を出て就職はした。ところがその会社がなんと倒産。その後なかなか正社員として勤められる先に出会えず、派遣会社に登録してキャリアをつなごうと考えた。派遣とは言え全力で勤めていた久美子。いつかはその会社から「ぜひうちに!」とのお声がかかるものと思う程に会社に尽くしていたにも関わらず、派遣切りに合ってしまう。さらに派遣切りにあったその日、一緒に暮らしている修に結婚を考える女性がいることを知る。

 

とにかく悪いことが次から次へと重なっていく。パートナーが結婚するとあれば家も出なくてはならない。次の仕事を探すにも間がかかりそうで、久美子に手を差し伸べてくれる人は全くいない。それでもどうにかしなくてはと必死に知恵を絞る。

 

久美子が選んだ道は農業だった。久美子には身内がいないために引越しするにしても保証人を頼める人がいない。30歳を超え、なかなか次の仕事も見つからない。途方に暮れていた時、たまたま見ていた番組で20代の女性がピンク色の作業着を着て、一人で農家として働いているという特集内容が目に入った。そうか、農業は女性一人でもできるのか!と、農業への関心が一気に膨らむ。

 

久美子の母親は小学生の時に病気で亡くなった。母親の実家は農家で祖父母と一緒に畑に出た記憶もある。しかし母の実家の農地はすでに売却されており、今から久美子が手にできる土地はない。調べると就業を援助してくれる市町村の存在を知る。

 

都道府県の援助は農業に限らず、人口増加を期待しての移民を推進している地域も多い。久美子もその援助の助けを受け、農業の基礎を学ぶことにした。ほぼ無料に近い金額で一から農業を教えてくれことから、今の久美子にはありがたいシステムである。ここで出会った人々は久美子同様農業経験はなく、耕す土地もない。

 

まず久美子は学校の側へ引っ越すことにした。まず解決すべきは保証人問題だ。そういえば学生時代の先輩でアパートを持っている方がいたと思い出し、恥を忍んで連絡を取った。運よく住む場所を得た久美子は一人で農業を行うという夢に向かって歩み始めた。

 

学校で学ぶことであらゆることがうまく回るのかと思いきや、卒業後の農業生活は思ったようにはいかない。土地がないのだ。いや、土地はある。しかし久美子に貸してくれる人がいない。農業を営む地域の方々は今までのやり方を崩されることを嫌うし、知らない人に自分たちが手塩にかけて育てて来た土地を貸す理由がない。例え後継者がいないとしても、赤の他人に貸してやろうという人はいなかった。

 

しかし久美子の両親は幼い頃に他界しており、逆に親世代からの言葉がむしろありがたかった。ふれあいが嬉しかった。懐かしかった。先輩の母親である大家さんや農業を指導してくれる人々の言葉を素直に聞き入れ、真摯に取り入れていった。それが次第に信頼へとつながっていく。

 

農業のノウハウよりも、どうやって農家になるのかがテーマとなっている。いざ農業を始めても収入が安定するとは言い難い。ちょっと別の角度から農業に迫った小説。

 

#915 春のおススメ。夢に向かって日本から世界へ!~「成瀬は信じた道をいく」

『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈 著

親善大使任命。

 

この頃、無性にショコラショーが飲みたくてたまらない。ホットココアでもよいのだけれど、チョコ味濃厚なショコラショーの方が断然好みだ。その時の気分に合わせて作れるので自宅で飲むショコラショーが一番美味しいのだが、外に出ている時に飲みたくなるとちょっと困る。というのもメジャーなチェーン系のカフェでもあまりココアは相手にされておらず、冬の間にちらっと登場する程度。しかも3月に入ってからはメニューが春仕様となりココアは早々に退散している。

 

そこで、この頃はコンビニでスティック状のココアを購入し、そこにブラックチョコを溶かすことで、欲するに近いものを編み出せるようになった。おかげで社内でのストレス軽減が可能となり生産効率も上がっていると信じたい。

 

さて、今は切実に紙の本を減らすことに勤めなくてはならないのだが、Kindle本もそこそこに溜まって来ており、ストレス解消に3月だけで随分と書籍を購入してしまっている。加えてなかなか読むタイミングもつかめない日々が続いているので、とにかくどんどん読んでいくことに決めた。

 

ということで、こちらを読んだ。すでにシリーズ2巻目。

1巻目では高校生であった主人公も2巻目では大学生に。

 

主人公の成瀬あかりは、できるが故に独特なキャラクターとして描かれている。たとえば、将棋の藤井棋士のようにあの若さでありながら見事な落ち着きと丁寧な言葉遣い。加えて大人も驚く知性に多くの人が魅了されている。他とは違う特別さがにじみ出ているのだ。きっと同級生の輪の中に入れば年相応のふるまいもなさるとは思うが、逆に同世代から見ると大人過ぎる態度に「変な奴」と一目置かれながらも敬遠されることが予想される。他の誰とも違う「自分」を若いうちに持っている人は何か強いオーラに包まれているような印象がある。成瀬も「私は成瀬」というオリジナリティーを主体としたパワーに包まれており、それが読んでいる側にも個性を磨こう!というメッセージとして伝わって来る。

 

成瀬の場合、性別も年齢も不詳なキャラクターだ。成瀬の口調だけを拾って読んでいくと、時代さえも曖昧になりそうな気分になる。しかし大学生になった成瀬はついにスマホも手に入れたし、インスタも扱えるようになっているのでやっと10代らしさを身に付け始めた。一方でやっぱり成瀬は成瀬の道を行く。

 

さて、成瀬が親友の島崎と組んでいるゼゼカラも相変わらず続いている。しかし大学進学の時期と同じくして、島崎が親の転勤で東京へ引っ越すこととなった。ゼゼカラのために時折島崎は滋賀へ出向くが、以前のようにずっと成瀬と一緒にいるわけではない。しかし携帯を手にしてもやり取りする相手はやはり島崎と家族だけのようだ。ここにも成瀬には他に迎合しない強さがあるように見える。

 

成瀬は自分が決めたことをやり抜く力がある。よって周りの意見に左右されないし、簡単に道を変えることはない。周りがそんな成瀬を笑ったり、遠ざけたりしても、それが成瀬の心を砕く事はなかった。成瀬がいじめられていた時、一緒に登下校していた島崎の目にはそれが「いじめ」に見えたと思うが、成瀬自身がどう思っていたのかはわからない。しかし島崎に対して感じている友情は別格であるということがヒシヒシと伝わって来る。

 

成瀬は予定通りに京都大学へ進学し、益々勉学に勤しんでいる。最近ではバイトも始めたほか、大津をアピールする親善大使にも選出された。活動範囲がどんどん広がり、膳所から世界へ!という成瀬の夢が一つ一つ叶っていく。この思ったことを実践する力というのは、成瀬のように直進していく強さがなければ難しい。それが一番早いとわかっていても、人は周りの意見にくじけてしまうことも多い。揶揄されればモチベも下がるし、なぜ自分がそこに向かっていくのかわからなくなるだろう。しかし、世の中には夢を叶えている人も多くいるのだ。そのうちの一人が成瀬なんだと思うと、夢の叶え方のヒントが見えてくるかもしれない。

 

今は2024年だが、ほんのちょっとだけ先の2025年という時代設定だ。今の高校生が読めば臨場感を味わえるかもしれないし、ちょっと先の未来を読むことで自分の夢の叶え方に気が付くかもしれない。春に読むにはとても良い一冊。

 

とにかく明るい気分になりたい時にはもってこいの作品です。