Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#367 今年買ったレシピ本で1番好きかも!「フランス人がこよなく愛する3種の粉もの」

『フランス人がこよなく愛する3種の粉もの。』上田淳子 著

キッシュ!タルト!ケークサレ

 

在宅勤務だといつでも荷物が受け取れてしまうところへ、楽天ラソンが追い込みをかけてくる。つい!「買っておかなくちゃ!」と日用品などを買い込んでしまい、気が付くとビックリするくらい買い物をしていたりも。このところの楽天ラソン、回数が増えている気がするのはやっぱりコロナ禍のせいだろうか。なんだかんだと毎回何かを買ってしまうようになり、ありがたい事に楽天ポイントがぞくぞく溜まる。しかしこのマラソンでのお買い物で付与されたポイントは使用期限があるらしい。私はこのことをいつもすっかり忘れてしまい、気が付くとポイントが失効しているなんてことが何度もあった。

 

今回は頻繁に買い物していたせいか、いち早くポイントの利用期限が迫っていることに気が付いた。さて、何を買おうと悩んだ結果、早速料理関係と英語関係の本を数冊購入する。味噌とか醤油とか買えばいいのに、また本を買ってしまったとちょっぴり反省したのだけれど、届いた本を見て今回は本で大正解!と小躍りしている。

 

まず、本書。この本は今年読んだ料理本の中でも群を抜いて使える度が高そう。とにかく美しい、美味しそう、作ってみたいと心から気に入った1冊となった。

 

上田さんのフランスシリーズは今までにも数冊読んでいる。

 


上の2冊も良かったけれど、本書は断トツで好みの料理が多かった。フランスの粉ものと言えば、キッシュ。そもそもキッシュってどこで食べてもたいてい美味しい。街角のパン屋さんのキッシュでも「これは食えん!」なんていうものはほぼ無いはず。そのキッシュをおうちで作ってみましょうということなんだけれど、それがどれもこれも美味しそうなのにシンプルなレシピが並んでいる。キッシュのパイ生地自体、手作りがめんどくさそうな気もするのだけれど、上田さんのレシピだと至極簡単なものに見えてくる。なんとガレットデロワのレシピもあり、これまた心が浮き立ってくる。キッシュは全部コンプリートしたいと思えるほどの魅力で、型あり、型なし、全部とにかく美味しそうでたまらない。

 

そして型があるなら、キッシュの他にもタルトができる。これまたタルトも至極シンプルなんだけれどひねりのあるレシピもあって「ベリーのタルト黒こしょう風味」はものすごく気になる一品だった。タルトは生地を上手に焼きさえすれば、アレンジし放題なので作る楽しみも多い。私はたいていカスタードクリームベースの甘いものばかり作っているけれど、今年はナッツのタルトも作りたいと思っている。あとは季節的にパンプキンタルトもいいな。

 

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そして最後に忘れてはいけないケーキ生地。本書はほぼケークサレのレシピなのだけれど、いつもケークサレってフランスの人にとってはどういう位置づけなのかな?と考えていた。どのタイミングで食べるのかな?とか何を合わせるのかな?などなど。このレシピ本を読み、日本でいうところのおかずパンの立場にあたるのがケークサレなのかな?と感じるに至った。キッシュほど本格的な重さはなく、軽くお腹に入る感じイメージだろうか。

 

一つ一つがすべて際立っていて、とてもとても美しい。多分本書を手にしたほとんどの人が、少なくとも数品作ってみたいと思えるレシピに出会えると思う。キッシュ好きとかタルト好きならきっと全部一度は作ってみたい!と思うに違いない。暇さえあればずっと読んでいたくなるくらいに気に入ってしまった。写真がとにかく美しく、レシピに至ってはすぐにでも作りたくなるほど。作業の一つ一つを写真で追うスタイルの本ではないので、一度作ったことがある人向けかもしれない。ほんと買って良かった!今年買った中で一番好きな料理本かも。

 

#366 お金のこと、小説で学ぶのも良いですね「マネーロンダリング」

マネーロンダリング橘玲 著

香港を舞台とする金融小説。

 

天気がものすごく安定しないので気持ちも少しどんより気味。こういう時は片付けに限ると思うのだけれど、家の中のものは大がかりになってしまう。なのでまずはパソコンや携帯の中を整理してみた。Kindleの中身もチェックしたのだけれど、未読本が100冊を超えており、これはいけない!と焦ってしまった。そもそもアガサシリーズだけで100冊くらいになるのでこのボリュームは仕方ないかなとも思う。でも紙の本もカゴに積まれたままだし、欲しい本はあるしで目についた作品から読んでいくことに。

 

本書は2003年の発売で、物語の舞台は2000年になる直前の香港になっている。主人公は30代前半の男性で、金融業界を渡り歩き、アメリカから香港に流れてきた秋生。この名前は実は仮名で、小説の中では一度も本名は語られていない。

 

この本を買ったのはセールの時で、香港が舞台だというだけで購入した。香港、行きたいなあ。。。長くどこにも行けない日々が続いているせいか、知っている地名が出てくるだけでウキウキしてしまった。秋生の香港での生業は何ともつかみどころのないものがあり、FAとは言えば聞こえは良いが、脱税やオフショアなどなど「いかに税金を払わずに資産を守るか」ということを教える立場にある。香港だといろいろな裏技があるんだなーと思いつつ読んでいくと、やはり大金が絡むせいだろうか。ちょっぴりハードボイルドが入った感じに仕上がっていた。

 

まず、主人公の秋生は一匹狼風で、香港の裏社会に出入りしている感があって影がある。ガツガツした感はなく、才能を隠しつつ闇に紛れてる感じ。そしてハードボイルには美人がつきものだが、秋生の出入りする何でも屋に若くて美人で有能なお嬢さんがいる。この子だけでもアイドル的な要素はあるけれど、やっぱり誰もが振り返るような美人も登場し、この美人が嵐を巻き起こす。

 

美人はもちろんハードボイルドでは追われて逃げて、彼女を追いかけるのは顎が割れてそうなごっついそれなりの怖いところに所属する人たちなのだけれど、ちゃんとそういう人も思った通りの登場っぷりに「おお!」となった。

 

内容としては、金融の話は文句なく面白く、そこにちょっと無理設定のハードボイルドが入ってくるがポイント。でもそれが話を面白くしている感も十分にある。あっという間に読み終えてしまい、読んだ後は自分のお金をどう守ろうかと言う気にさせてくれる。

 

たまには経済小説も面白いなーと思った次第。

#365 アガサのお誕生日に短編集~「黄色いアイリス」

『黄色いアイリス』アガサ・クリスティー

ポアロシリーズ第21弾、短編集。

 

本日9月15日はアガサのお誕生日だそうだ。やっと21冊目を読み終え、また読み順に疑問を感じている。アガサの代表作のうち、ポアロミス・マープルはとてもとても有名な登場人物だ。アガサの1作目の作品の主人公がポアロであったことから、ずっとポアロ作品を順番に読んできた。ここに来て今までポアロシリーズの順番にのみ従って来たけれど、考えてみればアガサの作品を出版順に読むのであれば、合間合間に違うシリーズも入ってくる。改めて読む順番どうする?としばし悩んでしまった。

 

Title: The Regatta Mystery and Other Stories

Pubulication date: 1939

Translator: 中村妙子

 

なぜ順番について再考したかというと、本書は短編シリーズで、その短編の主人公が多彩だったからだ。邦題は「黄色いアイリス」だけれど、それは挿入されている物語のタイトルのうちの一つで、英語のタイトルにあるようにいくつかのストーリーがおさめられている。

 

ガイドブックにこうあった。

これまでの短編集は、いずれもイギリスで刊行されたものを日本語に訳したものだが、本書は一九三九年にアメリカで刊行されたTheRegattaMysteryandOtherStoriesから一編を除き、短編「二度目のゴング」を日本で加えたもの。本書に収録された作品がイギリスで刊行されるのは一九六〇年代以降まで待たねばならなかった。このあたりの刊行にまつわる事情は不明だが、収録作品は一九三二年から三七年の期間に書かれているから、アメリカの出版社が、「ミステリの女王クリスティーの最新作品集」として、直近の短編を一冊にまとめた、というようなことだろう。

 

アメリカの出版社の手によるものだったがために、雑多な登場人物となった可能性もあるかもしれない。本書は9つのストーリーがあり、主人公は4パターンがある。タイトルと主人公を記しておく。

 

1.レガッタ・デーの事件 The Regatta Mystery(1936年)-Parker Pyne

2.バグダッドの大櫃の謎 The Mystery of the Bagdad Chest(1932年)-Hercule Poirot

3.あなたの庭はどんな庭? How Does Your Garden Grow ?(1935年)-Hercule Poirot

4.ポリェンサ海岸の事件 Problem at Pollensa Bay(1936年)-Parker Pyne

5.黄色いアイリス Yellow Iris(1937年)-Hercule Poirot

6.ミス・マープルの思い出話 Miss Marple Tells a Story(1939年)-Miss Marple

7.仄暗い鏡の中に In a Glass Darkly(1934年)探偵は登場しない

8.船上の怪事件 Problem at Sea(1936年)-Hercule Poirot

9.二度目のゴング The Second Gong(1932年)-Hercule Poirot

 

特記しておくべきは、2つ目は語り手がヘイスティングズであること、7つ目は探偵が登場せず、ちょっとオカルト入った内容で主人公の目線で語られていることだろう。あと9作目は既視感たっぷりで、恐らく「死人の鏡」の元ネタかと思われる。

 

 

確かにポアロが主人公であるストーリーが多いけれど、1発目にパイン氏が出てきて、緩~い謎解きをし、やっとポアロが来た!と思ったらまたパイン氏がやって来て万事屋的な相談事を解決する。そしてまたポアロが出てきたら、大物ミス・マープルまで登場して「この雑多さはなに!?」と慌ててしまった。ガイドブックの説明でようやく納得。

 

そこで最初の読む順番をどうするか問題がやってくる。アガサの作品順はこちらのWikipediaに詳しい。

この順で読むのも良いのだけれど、短編でこれだけ狼狽している私のことなので、行ったり来たりは向かないのかもしれない。ということで、やっぱりポアロシリーズをまず先に読むことに決めた。47冊のポアロシリーズをまず読み切り、それから次を考えることに決めた。

 

逆にアガサのお誕生日にアガサの作品を代表する登場人物に溢れる短編集を読むことで、よりアガサに触れられた気分になった。お誕生日、おめでとうございます。

 

評価:☆☆☆

おもしろさ:☆☆☆

読みやすさ:☆☆☆

#364 視覚で英文法を理解する~「THE DUO論理的思考力」

『THE DUO 英語X論理的思考力』鈴木陽一 著

論理的に理解を得る英文法参考書。

 

 

もともととの予定では緊急事態宣言は13日より解除になる予定で、それに合わせていくつか仕事のスケジュールを組んでいたこともあり、今週はなんとなくバタバタしている。急なキャンセルや、急なオンライン会議への変更などなど、今月末の解除までもう少しの辛抱。

 

さて、この頃ずっとドラマを見ており、内容によっては字幕に頼らずとも理解できている。ところが、英語で話せとなると、一瞬ためらい、息をのみ、覚悟を決めてあやふやに話し出す。一度話し始めて少し頭と舌が追い付いてくればしめたもの。ところがその状態になるまで日を追うごとに時間が掛かるようになってきた。

 

本は今、カゴにいっぱい山となって積まれており、もちろんその中には英語関連の本もある。一番小さく手軽に見えたものを手に取ったらそれが本書だった。DUOといえば、文章を暗記するタイプのこれがある。

 

DUO 3.0

DUO 3.0

Amazon

 

受験コーナーに山積みになっているので私も購入したのだけれど、淡々と文章を暗記するという作業に慣れず、早々に本棚の奥へ放ってしまった。それなのになぜ、本書を購入したのかというと、「論理的思考」という内容が気になったからだ。

 

実際に読んでみてわかったことは、日本語と英語の差異に注目し「なぜ」を説明してくれる本は多くあるが、本書はそれを視覚的に上手に説明してくれているので非常にわかりやすく、実践しやすいということだ。

 

最近読んだ本の中では「鬼100則」がとにかくわかりやすく、英語を学ぶことが楽しくなるほどすっきり明快な内容だった。受験のように長文を解いたり、文章を書いたりするにはこの本の知識がとてもとても役に立つ。説明文がすっと頭に入ってくるし、なるほど!と思えることばかりで、読めば読むほど知識がだるま式に膨らむような気持になる。洋書読みたい!な気分になる本気でモチベを上げにかかってくる参考書である。

 


一方での本書、説明文は控えめだ。その代わり視覚で訴えかけてくるので記憶にのこる。文字から知識を植えるというより、言葉ではなく体験や体感でぐぐっと脳に知識として刷り込んでいく感じなんだけれど、読んでいる本人はなんの苦労もなくすっと情報を受け止めている。ただ、記憶するには「なるほど!」「そうか!」などの驚きや感動があったほうが記憶に残りやすいとは思う。

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上の写真はAmazonからお借りしてきたものだが、上に「普通形」とある。これは著者が考えた言葉で、時制を説明するにあたり「現在形」という言葉を当てはめるのは適当ではない、という考えの元「普通」という単語を採用している。日本語の現在-過去-未来というのは今まで私たちが学校で学んできた文法用語には確かにすっぽり当てはめられないものもある。

 

この絵がものすごくわかりやすい。そして頭に残るし、英語を母語とする人がどのように考えているのかを知ることで難しいことを考えずとも話せてしまう気持ちにさせる。

 

特に「語順」は、英語を学ぶ上での軸になるわけだが、日本語のように主部と述部、補語や目的語の順番を入れ替えても意味に大差ない言語に慣れていると、順番ががちがちに固められている言語のほうが決まり事が多すぎてわかりにくいよー!と弱音を上げたくなりがち。しかし、Mindという単語の真の意味を理解すると、そのがちがちの語順主義もすんなり理解が出来、「なんだ、そんな簡単だったのか!」と英語への距離感がぐっと近づく。たくさんの参考書を読んできたわけではないけれど、今まで読んだ書籍ではなかなか得ることのできない経験のように思う。

 

もし、来週英語でプレゼンしなくちゃいけないんだというならば、私はまずこの本に目を通し、次に暇を見つけては単語を覚え、常時英語を聞きつつたまにはシャドーイングしたりして準備するかもしれない。本書はもちろん受験などにも使えるけれど、受験用としてはちょっと足りない気もする。それよりは、ある程度英語の知識がある大人が、実践の場に出ていく前の虎の巻的な使い方をする方が効果的のように感じた。

 

鬼100則が読み書き用ならば、本書は会話用で、両者ともにすごくすごく使える本。

 

 

#364 視覚で英文法を理解する~『THE DUO

『THE DUO 英語X論理的思考力』鈴木陽一 著

論理的に理解を得る英文法参考書。

 

 

もともととの予定では緊急事態宣言は13日より解除になる予定で、それに合わせていくつか仕事のスケジュールを組んでいたこともあり、今週はなんとなくバタバタしている。急なキャンセルや、急なオンライン会議への変更などなど、今月末の解除までもう少しの辛抱。

 

さて、この頃ずっとドラマを見ており、内容によっては字幕に頼らずとも理解できている。ところが、英語で話せとなると、一瞬ためらい、息をのみ、覚悟を決めてあやふやに話し出す。一度話し始めて少し頭と舌が追い付いてくればしめたもの。ところがその状態になるまで日を追うごとに時間が掛かるようになってきた。

 

本は今、カゴにいっぱい山となって積まれており、もちろんその中には英語関連の本もある。一番小さく手軽に見えたものを手に取ったらそれが本書だった。DUOといえば、文章を暗記するタイプのこれがある。

 

DUO 3.0

DUO 3.0

Amazon

 

受験コーナーに山積みになっているので私も購入したのだけれど、淡々と文章を暗記するという作業に慣れず、早々に本棚の奥へ放ってしまった。それなのになぜ、本書を購入したのかというと、「論理的思考」という内容が気になったからだ。

 

実際に読んでみてわかったことは、日本語と英語の差異に注目し「なぜ」を説明してくれる本は多くあるが、本書はそれを視覚的に上手に説明してくれているので非常にわかりやすく、実践しやすいということだ。

 

最近読んだ本の中では「鬼100則」がとにかくわかりやすく、英語を学ぶことが楽しくなるほどすっきり明快な内容だった。受験のように長文を解いたり、文章を書いたりするにはこの本の知識がとてもとても役に立つ。説明文がすっと頭に入ってくるし、なるほど!と思えることばかりで、読めば読むほど知識がだるま式に膨らむような気持になる。洋書読みたい!な気分になる本気でモチベを上げにかかってくる参考書である。

 


一方での本書、説明文は控えめだ。その代わり視覚で訴えかけてくるので記憶にのこる。文字から知識を植えるというより、言葉ではなく体験や体感でぐぐっと脳に知識として刷り込んでいく感じなんだけれど、読んでいる本人はなんの苦労もなくすっと情報を受け止めている。ただ、記憶するには「なるほど!」「そうか!」などの驚きや感動があったほうが記憶に残りやすいとは思う。

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上の写真はAmazonからお借りしてきたものだが、上に「普通形」とある。これは著者が考えた言葉で、時制を説明するにあたり「現在形」という言葉を当てはめるのは適当ではない、という考えの元「普通」という単語を採用している。日本語の現在-過去-未来というのは今まで私たちが学校で学んできた文法用語には確かにすっぽり当てはめられないものもある。

 

この絵がものすごくわかりやすい。そして頭に残るし、英語を母語とする人がどのように考えているのかを知ることで難しいことを考えずとも話せてしまう気持ちにさせる。

 

特に「語順」は、英語を学ぶ上での軸になるわけだが、日本語のように主部と述部、補語や目的語の順番を入れ替えても意味に大差ない言語に慣れていると、順番ががちがちに固められている言語のほうが決まり事が多すぎてわかりにくいよー!と弱音を上げたくなりがち。しかし、Mindという単語の真の意味を理解すると、そのがちがちの語順主義もすんなり理解が出来、「なんだ、そんな簡単だったのか!」と英語への距離感がぐっと近づく。たくさんの参考書を読んできたわけではないけれど、今まで読んだ書籍ではなかなか得ることのできない経験のように思う。

 

もし、来週英語でプレゼンしなくちゃいけないんだというならば、私はまずこの本に目を通し、次に暇を見つけては単語を覚え、常時英語を聞きつつたまにはシャドーイングしたりして準備するかもしれない。本書はもちろん受験などにも使えるけれど、受験用としてはちょっと足りない気もする。それよりは、ある程度英語の知識がある大人が、実践の場に出ていく前の虎の巻的な使い方をする方が効果的のように感じた。

 

鬼100則が読み書き用ならば、本書は会話用で、両者ともにすごくすごく使える本。

 

 

#363 映像の中の「日常」がステキすぎてエッセイも読みたくなりました~「聡乃学習」

『聡乃学習』小林聡美 著

大好きな女優さんのエッセイ。

 

週末、久々に目覚ましをセットせずに過ごしてみた。というより、時間を追求しないように暮らす感じだろうか。そもそも夜更かしが苦手、早起きが得意体質なので、どちらかというと早寝早起のライフスタイルが続いている。特に在宅勤務になってからは移動時間が不要となるので思いっきり寝るのが早い。長年身についてしまっているせいか、目覚ましがなくても日の出前には目が覚めてしまい、お湯を沸かしてお茶を入れ、いつものドラマを見た。

 



「パンとスープとネコ日和」は朝見るに限る。なんとも言えないゆったりした時間にキッチンから雑貨までステキと思えるものを見るのはとても楽しい。小林聡美さんは昔から好きな女優さんで、ちょっとコミカルなところがものすごく愛らしくてこんな大人になりたい!と思っていた。「かもめ食堂」あたりからインテリアからファッション、キッチン、雑貨まで、もう全部がステキ!と思う作品の真ん中にいつも聡美さんが鎮座しておられ、より一層目が離せなくなった。地に足のついた、自分のライフスタイルや暮らしを実現している姿に憧れている人、きっと多いだろうな。

 

ということで、本書を買ったまましばらく読んでいなかったことに気が付き、ドラマを見た後に読み始めた。この作品は2014年から雑誌に掲載されていたエッセイをまとめたものらしく、巻末には2019年の発売時点での小林さんの編集後記ものせられている。

 

雑誌やネットで聡美さんのお名前を発見したら必ずチェックする日々を長く長く送ってきているので、エッセイを読みながら懐かしさすら感じつつ、好きな作品のことを思い出した。すっかり忘れていたけれどセミロング手前くらい髪を伸ばしておられたことあったなあ!とか、舞台そうそうありましたよねえ、など独り言を言いながら読んでいたのだけれど、やっぱり日頃日本の芸能事情に疎いせいもあり、知らない作品もちらほら。

 

児童文学の翻訳で知られる石井桃子さんの作品を映画化したこと、まったく知らずにいた。50代となり、自然の中での生活に憧れる聡美さん、ご自身でも試してみたりなどもあったそうなのだけれど、やはり一筋縄ではいかない。石井桃子さんは戦後女友達と二人でそんな生活を続けてみたらしい。その時の経験から書かれた作品が「山のトムさん」で、その映画化された作品に聡美さんが登場しておられるそうだ。

 

日々の聡美さんの生活は猫と一緒にゆったりお過ごしのようで、それでもお仕事が絶えないはずだから、あれこれお忙しくされていることと思う。猫ちゃんたちとの生活の他、ご家族のこと、そして時折感じる元だんな様の影、プライベートについてさらりと書かれているところも聡美さんらしいなあと感じてしまう。

 

本書は50代になられたということで、聡美さん流の健康に留意されているエピソードがある。体操したりヨガしたり、文章で読んでいるだけなのになんとなく目に浮かぶのが不思議だけれど、考えてみたら週に1度は聡美さんの作品を見てたりするので(料理する時とか掃除する時とか、なんとなく流してます)映画のワンシーンのように妄想できてしまうのかもしれない。これからどんな風にお仕事を選択し、生活を整えていくのかなどにも触れられているのだけれど、きっと聡美さんはずっと女優さんとしてカメラの前に立ち続けつつ、心をリセットするための日常でもっともっと磨きをかけていかれるのだろうと思う。一人で山に行ったり、散歩したりというエピソードを読むと、もしかするともっとひっそりしておられて、すっとその場の雰囲気に溶け込んでおられるのかも、とも思う。

 

聡美さんやもたいまさこさんのファッション、誰にでも似合うわけではないのかもしれないけれど、いつか取り入れてみたいと思っている。色使い、フォルム、バランスが良く、清潔感もあって人当たりの良い印象がある。パステルカラーが苦手な私にもこの組み合わせならイケるかな?と思わせる。エッセイの中に、ファッションについてのお話があったらもっと嬉しい!と思う人多いだろうな。

 

#362 季節を先取りして「ポアロのクリスマス」を読みました

ポアロのクリスマス』アガサ・クリスティー

ポアロシリーズ第20弾。

 

タイトルに「クリスマス」とあるので9月もまだまだ始まったばかりのこの時期に読むのもどうかなーと思ったのだけれど、やっぱり順番通りに読みたかったのでアイス食べながら読み始める。雨続きで少しどんよりした天気だったこともあり、それなりに冬のイギリスを思い浮かべながら読み終えることができた。

 

Title: Hercule Poirot's Christmas

Pabulidation date: December 1938

Translator: 村上啓夫

 

本作もアガサの序文があり、義兄ジェームスの要望に応えて書いた作品だとある。

 

あなたは最近わたしの書く殺人が、あまりに洗練されすぎてきた――つまり、貧血症的になってきた、という不満を述べられました。そして「もっと血にまみれた、思いきり兇暴な殺人」を求められました。それが殺人であることに一点の疑いをさしはさむ余地のないような殺人を!

 

なるほど、なんだか恐ろしい作品が始まりそうな気配を漂わせているけれど、これもクリスマスシーズンに暖炉の前でゆったり快適な部屋で推理小説を読もうという読者を驚かせたいというアガサの茶目っ気かな?という思いもよぎる。

 

本作は12月22日から28日の6日間を日を追って語るスタイルになっている。語り手は第三者で、ポアロはクリスマスを友人の大佐のところで過ごすつもりで旅行に来ていたところ、またもや殺人事件が発生し警察をサポートするという流れだ。

 

舞台はイギリスのロングデールというところで、そこにゴーストン館という屋敷がある。主人はシメオン・リーという老人で、昔ダイヤモンドで一山あて、巨額の富を手にした男だ。百万長者の二倍以上のお金持ちらしい。今は従順な長男のアルフレッド夫妻と共に暮らしており、40年以上一家を支える執事も健在だ。老人は今年のクリスマスは愛する家族と共に過ごしたいと子供たちを呼び寄せるが、実はそんなほんわか家族ではなく、父の奇妙な性格のせいで家族はそれぞれゴーストン館には近寄らずにいた。シメオンの妻はすでに他界しており、その妻のことすらシメオンは丁重に扱ってはいなかったようなふしがある。次男のジョージは国会議員をしているが、ケチで口が上手い。三男のデビッドは芸術家で極度のマザコン、母の他界後は一度も実家へ帰ってはいなかった。四男は未婚でたった一人で帰ってきたハリーで、世界各地を放浪しては実家に金をせびる男。デビッドの妻など初めてやってきたわけだから、そのギスギスっぷりに圧倒されている。

 

そこへ二人の訪問者が現れた。一人は老人の唯一の孫娘であるピラールで、ピラールの母親ジェニファーがシメオンの娘だ。ジェニファーはスペイン人に嫁いでおり、ピラールもずっとスペインで暮らしていたのだが、母の死によりイギリスへとやってきた。他の家族はピラールが来ることは知らずにおり、突然の登場に驚いた模様。もう一人はシメオンが南アフリカでダイヤモンドの仕事をしていた時の友人の息子スティーブンで、彼は初めてのイギリス旅行で、懐かしい父の友人のおじさんを訪ねてみたというものだった。

 

とにかく家族の仲が悪すぎて渡鬼風なドロドロ感がある上に、ムダにお金のある家で子沢山なところに孫とか出てくるし、もう遺産がからんだ殺人来そう!感がにじみ出ている。で、思ったように殺人がおき、ポアロが登場して一つ一つ解決していく。今回は密室での事件だったのでポアロの推理なくては事件が解決することはなかっただろうと思えるダイナミックな展開だ。

 

さて、今回の翻訳は読み始めから数分で飽きが出てしまい前半部の読書はあまりはかどらなかった。登場人物のうち、長男嫁、次男嫁、三男嫁、孫娘が会話するシーンが多く盛り込まれているのだが、女性の会話の語尾に「~ですわ」がこれでもか!な程に並んでいて、それがどうにも気になり話を単調にさせて飽きてくる。下の文章は長男の嫁が夫に話しているところだが、合わせてこちらのサイトで拾った英文も併記しておく。

 

「それならば、この家の家族の大部分は――不自然です!でも、もう議論はよしましょう!わたし、あやまります。あなたの感情を害してすみませんでした。信じてください、アルフレッド、わたし本当はそんなつもりではなかったのです。わたし、あなたの――あなたの――誠実さには心から感嘆しているのです。忠実という徳は、近ごろではめったに見られない美徳ですもの。わたし、ひょっとしたら、嫉妬しているのかもしれません。一般に女は、義母に対して嫉妬心をいだくものだと言われていますが――それなら、義父に対してだってそうしないわけはないでしょう?」

‘In that case, most of the members of this family are—unnatural! Oh, don’t let’s
argue! I apologize. I’ve hurt your feelings, I know. Believe me, Alfred, I really didn’t mean to do that. I admire you enormously for your—your—fidelity. Loyalty is such a rare virtue in these days. Let us say, shall we, that I am jealous? Women are supposed to be jealous of their mothers‐in‐law—why not, then, of their fathers‐in‐law?’ 

 

これも長男嫁のセリフだけれど、恐らくミスプリントと思われるところがある。

 

かわいそう老人!わたくしはいま初めて、義父のことを気の毒に感ずることができます。あの人は、生きていたときは、言葉に言いつくせないほどわたくしを悩ましたものですが!」

‘Poor old man. I can feel sorry for him now. When he was alive, he just annoyed
me unspeakably!’

 

多分「かわいそう老人!」とすべきところ一文字抜けてしまったに違いない。とにかく「ですわ」「ですわ」が続いてくると、キャラの区別がつかないし、他にも語尾の使いようがあるのに!と自分ならこう訳すなと英文に立ち返ったりしてなかなか読み進まなかった。

 

翻訳者は1899年生まれ、東京外語大学英米語学科卒で、本書は1957年に刊行されている。1969年に他界されておられ、その後1976年に早川文庫から再販されているが、同訳のまま出ている模様。そろそろこれは新しく訳し直したほうがよいのでは?と思う点が多く、良い作品であるだけに新訳はぜひ出して頂きたいと思った。

 

今回私は冴えていて、言葉の平坦さに飽きた!と言いつつも、それが逆に言葉の矛盾を気づかせる原因となって早い段階から「これは!」と犯人の山を張りつつ読書していた。とはいえ、トリック自体はかなり見事で一体どうやって事を成し遂げたのかがわからない。うーむ、こういうところがミステリーの面白さなんだな!と20冊目にしてやっと自分がアガサにハマっていることに気が付いたわけである。

 

この本は前後する話も出てこないので、年末にミステリーでクリスマスを過ごしたい!と言う方にもおススメできる。とはいえ、イギリスのクリスマスらしいクリスマスシーンは登場しないので、別にクリスマスに読まなくては!というお話でもないかも。

 

さて、そろそろスピードアップして読み始めないと年内に読み終われなくなりそうなので続けてサクサク読んでいきたい。

 

評価:☆☆☆

おもしろさ:☆☆☆☆

読みやすさ:☆☆☆