Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#840 リフレッシュには物語が一番~「火花散る おいち不思議がたり」

『火花散る おいち不思議がたり』あさのあつこ 著

シリーズ4巻目

 

ついに今年もあと残すところ3週間余りなのだが、大掃除が全く進んでいない。昔は土日だけでも結構な気分転換になったのだが、今はやりたいことが多すぎる。毎週末金曜の夜にやることリストを作ってから週末に挑むのだが、この頃はその半分も終えることができず、週休3日ぐらいないとやりたいことコンプリートは無理だと思うようになった。

 

嘆いていてもしょうがないので料理をしたり、本を読んだりでリフレッシュすることに。やっぱり料理は気分が晴れる。集中できるし、美味しくできると満足感でいっぱいになる。読書は読みかけシリーズを選ぶ。

 

 

本作、現在4冊目まで出ているようで、こちらが最新刊の4冊目になる。

 

医者の娘のおいちは、父の松庵の治療を手伝いつつ自身も医者になる夢を抱いている。おいちは普通の娘とは違った。おいちには見えない世界の声が聞こえることがあり、その声はいつもおいちに助けを求めている。生きている者、見えない世界の者、助けを求められたならばすべてに手を差し伸べたい。それがおいちの考えであった。

 

4冊目でおいちはどのような医者になりたいのか、ぼんやりとしていたその道にはっきりとした景色が描けるようになった。父、松庵は町医者でありながらもその腕は確かなもので、最近はその評判が広がり裕福な商家のものまでが通ってくるようになっている。おかげで少しだけ懐が豊になり、長屋にもう一部屋を借りて住居と治療を完全に分けらる生活ができるようになった。

 

さて、おいちは今、父の代わりに患者を訪ねて様子を見ることをも引き受け、なかなかに忙しい。最近は歩くことができなくなった母親を見て欲しいという商家の依頼で定期的に通っている。ようやく患者もおいちに慣れ、少しずつだが自分の話をするようになってきた。

 

帰りが遅くなる日は、新吉が松庵からの頼みを快く受け入れ、おいちとともに診療に出る。そんなある日のことだった。おいちは道で剣呑な事件に出会う。慌てて身を隠すが、傍でなにやら人の気配があった。近づいてみるとお産を間近に控える女性である。今にも産まれそうな気配で、おいちは慌ててその女性を菖蒲長屋へ連れ帰った。

 

おいちにはお産を受け持った経験がない。近くの産婆は腰を悪くしており頼ることができない。そこで長屋のおかみさんたちの助けを得て、どうにか男の子を取り上げた。母親は体力が弱っており、お産に耐えられるか心配をしていたが、我が子の命を守るという母親の意思の強さで全身の力で子供を抱いていた。

 

お産の際、おいちは妊婦に名前を尋ねた。滝代と答えたその女性は、何か事情がありそうな様子であった。名前だけでもお武家とわかるが、何かから身を隠しているかのような気配があり、身元が明かされることのないように細心の注意を払っていた。

 

そして子を産んでまもない滝代は、疲れたおいちが眠っている間にそっと家を出て姿を消してしまった。愛息を置いて一体どこへ?いや、きっと戻って来るに違いないと考えるおいちの心とは裏腹に、滝代は事件に巻き込まれていく。

 

この滝代の件がおいちを女性のための医者になる道へと導くようだ。

 

さらっと読める気楽さが、週末の気分転換にぴったりな作品。