Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#768 最寄りの観光地~「目黒横恋慕殺人事件」

『目黒横恋慕殺人事件』風野真知雄 著

耳袋秘帖シリーズ第19弾。

 

海外出張3日目の日曜日、この日は唯一の自由時間だった。とりあえずやらなくてはならない書類を片付け、2時間ほど街中を散策した。海外では水を事前に確保したいと思っているので頻繁にスーパーに行く。コンビニでもよいのだが、スーパーのほうがその国の姿を伺うことができるし、幅広い選択肢があるので喜んで出かけている。食生活を垣間見れるという楽しみもあるが、外食で補えない野菜やフルーツへの欲求を満たすためである。

 

そうそう、海外出張には必ず持参するものに「堅ぶつ」という揚げ餅菓子がある。米が食べたい時や小腹が空いた時など、ちょっと食べるだけでかなり満足できる。海外の食事が飽きて来たり、口に合わないと思う時、それは和食とは異なる塩分が理由のような気がする。甘すぎたり、味がなさすぎたり、逆に味が濃すぎたりなど、塩分が和食のそれとは異なる場合、まず舌が物足りなさを感じはじめ、次に体に疲れが出る。ここ数年はこの「堅ぶつ」のおかげで海外でも舌や体調をリセットできるようになった。みそ汁などもよいのだけれど、水が違うせいなのかあまり満たされないこともあるので「堅ぶつ」はおすすめ。粉々になる心配もなく、かさばりもしないので旅で和食が恋しくなりがちな方には本当におすすめです。

 

さて、今回も南町奉行所は大活躍である。南町奉行所のある現在の有楽町から目黒まではそう遠いとは思えないが、当時の人にしてみると新宿も目黒もちょっと離れた観光地的な感覚なのが面白い。当時のアトラクションは寺社巡りだから、目黒不動なども大人気であったはずだ。

 

その目黒不動の近くに音無しの六蔵という岡引きが住んでいた。六蔵はとにかく耳がよい。普通の人には感知しがたい音をキャッチし、問題解決に大いに役にたっていた。

 

今回の目黒の事件はいろいろなことが重なり合い、同時進行でいくつかの事柄が動いていた。まず、白河の御前こと松平定信が恋をした。彼は趣味が多彩でそれもすべてが玄人レベルだったそうだ。センスもよく、知恵もあり、根岸が知らない世界にも精通していたりする。そんな御前の趣味の一つに俳諧があった。時節の句を練り、味わう。その趣味で出会った中に京都からやってきた女性がいた。

 

この女性は先回の作品で品川に宿を取っていた材木屋の主、淀屋月右衛門の紹介で江戸の俳諧へと顔を出した。どうやら淀屋が大阪時代に出会った女性らしい。そしてその俳句の会に白河の御前が同席し、どうやら恋に落ちたようだ。

 

淀屋は気鋭の建築家に設計をまかせ、白河の御前の目黒の別邸を新築する。その家の作りはなんとも重厚で外からでは様子がわからない。完成した折に南町奉行所の面々も招待を受け目黒へと赴いたが、ただただ驚くばかりであった。

 

御前はなんとかこの女性を口説こうとするも、それがなかなか手に落ちない。そのうち、その女性が狐に化けたというような話まで出てくる始末だ。御前が恋心を募らせている頃、目黒不動で音無しの六蔵の姿が発見された。すでに息は無く、何かをつかんだことが命を落とすことになったと奉行所は考えた。

 

南町奉行の元々の部下である宮尾が目黒へ派遣され、あれこれ情報を得ようとするのだが、事実は闇の中から顔を出さない。

 

暁星右衛門を追う南町奉行所だが、大阪に調べに行っていた坂巻、梅次、しめの3名ですら淀屋の正体を見極めることができなかった。漠然と淀屋こそが暁だと考えるも、やはり決定的な証拠がない。ただ、何かが一歩近づいたような予感だけが漂っている。

 

はっきりとした糸口の見えぬまま、目黒の話は終わってしまった。この日曜日は朝から雨が降り注ぎものすごく寒い一日だったが、雨の日は読書が進むというもの。そういえばアガサ・クリスティーの作品を全部読むという目標も数年越しになっていることを思い出す。読みたい本がたくさんある幸せ。