Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#493 氷山の下にあるスキーマを育てたい ~「英語独習法」

『英語独習法』今井むつみ 著

英語を学ぶ方法。

 

週末、一気に温かくなりすっかり春の陽気だった。先週まではウールのコートを着ていたが今日から春のコートを着ている。スーパーに行けば鍋物用ではなく彩り鮮やかな野菜でいっぱいで、見ているだけで楽しくなった。来週は桜開花な?

 

さて、そろそろコロナ禍による規制も緩和され、海外とのやり取りも以前のように増える予感。早めに備えておかなくては!と英語関連の本を読んだ。著者の書籍を読むのはこれで2度目となる。

 


どちらがより楽しく読めたかというと、圧倒的に本書を読んだ後のほうが「勉強したい」というモチベーションが上がったような気がする。違いは何か。前書は著者の研究対象である子供の言語習得についての実験よりなっており、どちらかというと論文を読んでいるような気持ちになった。とはいえ、言語に興味のある人にとってはなるほどと思える内容ばかりだが、認知言語学に興味がなければきっと途中で飽きてしまうのではないだろうか。

 

一方で本書は認知言語学の見地から、そして著者自身の言語習得の経験値より日本語を母語とする人がどうすれば英語を学ぶことができるかが書かれている。言語習得では人により「読む・書く・聞く・話す」の中で強化したい部分が異なることと思うが、著者がこの4つに共通して言うことはたった2つだ。

 

一つ目は「スキーマ」を持つこと。スキーマとは知識のシステムというべきもので、言葉を学ぶにあたっては「使えることばの知識」のことである。例えば、「今日はあったかいなんだから、コートはいらないね。」と誰かが話したとする。きっと聞いた人は違和感を感じるだろう。話者は外国人なのかな?と思うかもしれない。この違和感を感じさせるのがスキーマだ。「私は日本人ある。」「昨日時間はありますか?」など、文法的にちょっと違うと感じられるような知識のシステム、つまりスキーマは、実は氷山の水面下にあるのだそうだ。無意識にスキーマを通して瞬時に判断しているそうだ。

 

国語学習者がこのスキーマを身に着けるには相当の努力とセンスが必要になるはずだ。感覚的に適切な単語を選ぶためのシステムを自分の中に作るには、対象となる単語とその類語から違いを学ぶことが効果的とのことだ。オンラインで使用可能なサービスを使ってスキーマを身に着けるべく、敏感に違いを学ぶ方法も具体的に紹介している。

 

二つ目は「単語」だ。英語と日本語の大きな違いとして動詞をあげている。例えば日本語であれば動作の状態を副詞を使って情報を補足し文章を作る。「ぶらぶら歩く」「ゆっくり歩く」「ふらふら歩く」「千鳥足で歩く」など、「歩く」の前にその動作の様子が加えられているが、英語の場合は全部動詞が異なる。

 

英和辞典で調べるとwalkもwanderも「歩く」と表現されるだろう。しかし英語を母語とする人にはその違いを「スキーマ」のフィルターを通してしっかり認識している。単なる文語と口語の違いではなく、動作の様子がそれぞれ違うというのは確かにそうだ、と今までの自分の間違いの歴史を思い出しつつ大いに納得した。

 

知覚動詞はまさにその最たるもので、「話す」にsay, speak, tell, talkとあるが、正しくこれを使える感覚を育てるためにCOCAやWordNetなど使い方を具体的に説明しながら、そしてどのように活用するのかまで丁寧に説明されていた。

 

最後には実践問題があり、これを通してやってみるとなぜ「スキーマ」が大切なのかが一目瞭然だ。20ページくらいだろうか。簡単な問題がいくつかあり、実際にやってみると迷うこと多々だ。またしばらく時間を置いてからやってみたいが、これをやることによってオンラインでの調べ方も同時に学べて大変役に立った。

 

久々にかなり学習意欲が湧いてきた。語学は継続しないとあっという間に忘れてしまうので、定期的にブラッシュアップしなくてはならない。でもなかなか上手く行かないのが現実で、こうして効率的プラス楽しい方法を知ったことで持続できそうな気がしてきた。「スキーマ」育てます。