Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#306 日本を知ってこそのグローバル化ということですね

 『イギリス人の、割り切ってシンプルな働き方』山嵜一也 著

ロンドンオリンピックで建築チームとして関わった著者のイギリス式働き方指南書。

 

辞書として使っているものに、『そのまま使える 建築英語表現』というものがある。たまたま仕事で建築現場で英語のやり取りがありそうななさそうな気配があり、その場凌ぎの付け焼刃で良いから英語の表現を勉強しておかなくては!と購入した書籍のうちの一つである。建築英語といっても種類はいろいろなようで、個人住宅からウェアハウスなどなど、構造の違いや機能性の違いで使う言葉は様々だ。そもそも日本語でも建築用語なんて全くわからないわけで、同時に建築についても学ぶことができた。

 

Kindle Unlimitedのセール期間のうちにいくつか読んでおかなくては!とAmazonを見ていた時、本書がパッと目についた。まず著者のお名前にピンと来て、次にイギリスの働き方というところにも関心が高まり早速ダウンロード。

 

本書は著者が渡英してからの10年強の間に建築現場で活躍した際に学んだ事柄が掛かれている。職場に慣れ実績を残すには、まずあちらの文化を理解すること。その理解の過程や著者が気が付いたポイントなどが丁寧に説明されていた。

 

海外で仕事をする場合、大きく3つに分かれると思う。一つ目は日本の本社からの出向や派遣の場合、二つ目は現地採用として日本の企業に勤める場合、三つ目は現地の企業に採用される場合だ。一つ目と二つ目は大きな違いが内容に思われるかもしれないが、実は待遇などの差で大きな違いがあると思う。私の勤める会社でもそうなのだが、海外赴任のスタッフはいつか本国に帰るかまたは他国の事務所に異動になる可能性がある。そして海外赴任の場合には十分な手当も期待される。滞在国の言葉が出来なくても生活を支えてくれるスタッフがいたり、通訳がついたり、語学学習システムがあったりする。数年で帰任するわけだからそれが社内のシステムになっているところも多いだろう。一方で現地採用の日本人は現地と日本をつなぐ役目をすることが多いけれど、金銭面での手当などは現地並みだし昇進だって壁がある。でも海外とは言え日本の企業文化の中なので、それが嫌だという人もいるかもしれないけれど、日本のテンポで働くことができる。

 

著者のように現地の企業に採用される人というのは実力勝負で現地の人と同様に働くことを求められるわけで、著者のように何度も当たっては砕け、アプライし続けて大きな役割を担う方は海外の日本企業では体験することのできない空間に身を置き、多くの貴重な経験をされたに違いない。

 

イギリス人の働き方についての本ではあるが、実はイギリスだけでの話ではなかった。ロンドンで働いていた著者は、場所は英国でありながら実は世界で働いていた。というのは、ロンドンには世界中の人が集い、必ずしも英国人だけが働いているわけではないからだ。移民も多いし、国際舞台で力を試したいという人が世界各地から集まってくる。すると育つ所が違えば文化が異なり、考え方や感じ方もそれぞれ異なるわけで、皆が同じということのほうがむしろ特殊なことになるのではないだろうか。他人の個性を尊重し、その上でどうすればスムーズに働くことができるのか。その工夫を繰り返すことでグローバルな働き方となるとのこと。

 

初めて外国に行く時、和辻哲郎の『風土―人間学的考察 (岩波文庫)』を読むようにと言われた。この本にも登場しているのだが、日本がわからない限り「自分が周りとどう違うのか」を見出すことができない。著者はそのことを何度か書かれており、自分を知り、周りを知り、共存を目指す方向を示されている。

 

仕事で出会った彼の国の方がいる。いつも「日本は先進国のくせにここもダメ、あれもダメ。」と不満ばかり言っており、例えば銀行(待たされたから)、JRの切符の買い方(乗車券と特急券が2枚いるから)、ネットの接続(申請した当日に来ないから)、などなどのせいで日本はダメな国とのこと。この本を読んでいてその方のことをなんとなく思い出し、対応する側としての気持ちも同時に理解することができ、どう受け取るべきかということを改めて考えさせられた。

 

自分の中の日本に気がづくことこそ、グローバル化の第一歩である!