#257 明治時代のロマンかー。
『 若様とロマン』畠中恵 著
若様たちの未来はどうなる?
明治シリーズの3冊目。読んだ感じでは3冊で完結なのかな?という流れとなっている。舞台は明治で、1冊目と同様、若様たちがちゃんと巡査になってからのお話だ。2巻目は巡査になる前の流れが書かれているので1巻目より時が戻ったような内容になっている。
さて、3巻目でついに主人公たちの将来がどんどんと見え始めてくる。貿易商である小泉商会に出入りする若様たちと真次郎だが、近く戦争が起こるらしいという社主の言葉にそれぞれの道を模索し始める。
社主は戦争に反対する立場で、有力者を味方につけようと画策する。その作戦の一つが若様たちの婚姻にあった。元旗本の家々は明治の半ばになっても家臣がそのまま残っており、巡査の薄給では家族を養うので精一杯。嫁なぞ望めないと思っていた若様たちだが、社主や警視たちは若様へお見合いを進めてくる。みな、立派な家の娘さんたちで社主の側にぜひともついて頂きたい人たちに近しいお立場ばかりだ。
若様たちも実際に会ってみるとみなよい娘さんたちなので割とすんなりお見合いを受けていたりする。リーダー格の長瀬は最もお見合いが難しいと言われていたが、実際になかなかよいお話が届かない。
3冊目は今度は日本が大海を渡り学ぶ時代のお話となっている。真次郎はもともと外国人居住区で育ったので言葉で苦労することもない。育ての親ともいえる居住地の人々にアメリカ行きを進められていた。一方小泉商会の一人娘の沙羅はイギリスで経済の勉強をしたいと考えていた。女である自分が小泉商会を継いだとしても男のように店を引っ張っていくことができないと考えていたからだ。
どうにかイギリスに行きたい沙羅。それを支える若様たちの友情が一番の読みどころ。これで本当に終わりとなるんだろうか。帰国後の話も読みたいところが、戦争があることを思うとこの終わり方がベストのような気もする。
明治時代に学んだ方々のおかげで諸外国の知恵が日本語に翻訳され、今の私たちは大きな恩恵を受けている。その当時苦労して翻訳された言葉は今、すっかり定着して日常の言葉として使われているわけだけれど、日本のみならず漢字圏の国は日本人が翻訳した西洋語をまるっと使っている不思議。学校、社会、哲学などを言葉を自分たちの言葉と思っている彼の国の人々はきっと明治時代に苦労して学んだ日本人の努力などに思い至ることはないのだろうなと思うとちょっぴり苦いものがこみあげてくる。