Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#258 ストレスな日々にこそお江戸!

 『江戸は浅草』知野みさき 著

矢を作る真一郎。上方へ渡ろうと旅立つがなぜか浅草に落ち着くことに。

江戸は浅草 (講談社文庫)

江戸は浅草 (講談社文庫)

 

 

4月に入り急に仕事が忙しくなりだした。滞っていたあれこれが動きだし、動き出した途端にやるべきこともどんどんと増えていく。読書こそが気分転換なので毎日何かを読んではいるのだけれど記録の時間を捻出する必要がありそうだ。

 

ストレスフルな日々にはやはり時代小説がよいとこちらを読み始めた。現在3巻まで出ているそうなので楽しみである。江戸が舞台となる時代小説は現在の東京の東側に集中している。深川、日本橋、八丁堀などなど。こちらは浅草が舞台となっており、賑やかなお江戸と人情溢れる日々を読む前から期待してしまう。

 

主人公は常陸出身の真一郎という男だ。決して美男ではないそうだけれど背が高くがっしりとした体つきは遠目にも目立つらしい。母は幼い頃に他界しており、矢師を営む父の仕事を手伝いつつ過ごしてきた。父の他界とともに江戸へ出て来たのだが、すでに戦のない時代が何百年も続く江戸では弓矢がそれこそ飛ぶように売れるような事態はおこらない。真一郎の矢作りもどんなに腕がよくとも日用品のように簡単に売れることはなく、生活苦に矢作りの道具を売り払いなんでも屋のような生活を送っていた。

 

ある日、上方へ向かおうと旅立った真一郎。道中、目の前に母娘の親子が現れて母が病気だという詐欺にあってしまう。出だし早々に有り金をすべて取られてしまった真一郎は、浅草で一先ずその日の寝床を探そうとある寺に入る。そこから真一郎の浅草との縁が一つ一つ組まれていった。

 

真一郎は六軒長屋というところで暮らすことになる。これは寺で出会った人の縁によるものなのだが、やはり長屋というのは人と人とのつながりを築き、なにやら温かい空気を醸し出しているように感じてしまうのはやはり小説だからだろうか。実際江戸時代の長屋というのは恐らくその日暮らしの人々が過ごすようなところであっただろうと思うのだけれど、一つの長屋に生まれる連帯感はすでに今の日本には見られない風習となっている。今なんてよその子を注意しようものならば訴えられることだってあるかもしれないし。

 

この長屋は六軒長屋というだけあり、六軒の店子が暮らしている。大家の久兵衛、鍵師の守蔵、目の不自由なお鈴、面を打つお多香、笛師の大介。ここに真一郎が加わり、「真さん」と呼ばれる頃にはすっかり長屋の仲間になっていた。

 

矢師から久兵衛の用心棒となった真一郎はとにかくピュアで柔らかい印象だ。まっすぐで素朴で自分を必要以上に大きく見せようともしない魅力的な主人公。残りの2冊が楽しみだ。