Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#215  ワタシ「話す内容さえしっかりしていれば通じる!」→ネイティブ「発音悪すぎて何言ってるかわからない ( ゚д゚)ポカーン」

 『イギリス英語発音教本』小川直樹 著

母音・子音のイギリス式発音の方法を伝授。

イギリス英語発音教本

イギリス英語発音教本

  • 作者:小川 直樹
  • 発売日: 2017/05/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

先日読んだイギリス式英語の発音法では、イントネーションを学ぶことは出来たが、音の詳細については学ぶことができなかった。 

 

なんとなく物足りない。出来ていないと認識しているのは「音」で、特にそれぞれの母音やいくつかの子音はお手上げ状態。そこで、同じ著者の本をもう一冊購入していたので早速読み始めた。

 

この本、結論から申し上げるとイギリス英語に関心のある人には必須の1冊だと思う。聞く上でも、話す上でも、本書に沿って練習するだけでかなりの力が付く。

 

英語圏の人たちの中でも日本人の英語の発音は英語を母語とする人には非常に理解しにくく、例えば同じアジア圏の近隣諸国の人の中でも圧倒的に聞きにくいらしい。たまにものすごく英語の上手な方に出会うことがある。「どうやって勉強しましたか?」と聞くとやはり幼い頃に英語圏で生活した経験があるとのことだった。そこで常に疑問に思っていたことを聞いてみた。今や世界各地を繋ぐ公用語は英語になっている。私には時々聞き取れない特定の国の方の話す英語がある。それがインド式の英語で、自分の英語力の低さにプラスしてインド的な言い回し+発音でいつも「ごめんなさい、もう一度お願いします!」を繰り返してしまう。運良く素敵な方ばかりだったので温かく優しく対応して下さったが英語母語者にはインド式英語はどう聞こえているのだろう?

 

ネイティブにはインド式より日本式のほうが圧倒的に聞きにくいそうだ。そして発音だけではなく、イントネーションも大切で、かっこいい文章を下手な文章で話すより、簡単な文章を通じるレベルの英語に引き上げる方が効率的と言う話をしてくれた。日本人はもっと口を動かした方がいいとのアドバイスも頂いた。

 

私はその理由は日本人の発音方式と母音の少なさにあるのではないかと思っている。日本語はあまり口を動かさずとも話すことができる。口の前側を使って発声するので、子音の音も弱い。特に母音は「あ」の音ひとつ取っても、イギリスでは口を大きく開ける「あ」から、「お」に近い音、「え」に近い音、曖昧な「あ」など多彩である。きっと日本人の話す英語は、英語を母語とする人には腹話術みたいに見えるのではないだろうか。はっきり口が開いてない、唇が突き出ていないから、モヤモヤした英語に聞こえていることだろう。

 

発声における口の中での位置については前に読んだ本にも記されており、この本を練習した後でUKの発音を始めた方が効率出来だと思う。 

 

以前読んだ本に日本人の英語のまずさについて書かれていたことがあった。日本人は大学教授であっても発音についてはひどいものであったという話である。ある著名な大学教授が海外で講演を行うこととなった。その教授の論文は内容はもちろんのこと、書かれていた文章も詩的に美しく、読者に「こんなに素晴らしい文章を書くとは、いったいどんな人なんだろう」と期待させるものであった。しかも日本人が英語を駆使しているわけで、これは講演会にお招きしても問題ないだろうとご招待に至ったわけである。

 

あの!教授の講演会とはなんと貴重な!と多くの人が詰めかけた。いざ、その教授が到着し壇上に上がり、まずはご招待のお礼にとご挨拶から講義を始めた。そして専門分野についての講義に入ったわけだが、聴衆はぽかんとしている。教授は気が付かずに話を進めていたが、やはりリアクションの薄さにはさすがに気が付く。たまたま新しいアイデアを報告していたところだったので、きっと自分の新たな発見にみんな感心しているのだろうと思っていた。

 

そこで教授は、壇上のスクリーンに1枚の資料を映し出した。それが現れた途端、会場が騒然となった。急にわいわいと騒がしくなり、立ち上がるものまで出始める。教授は驚いた。もしやすでに発見済み、もしくは同内容を研究する学者がここにもいたのだろうか、と不安になった。そして2枚目の資料を映し、次に3枚目を映す。そこには核心となる研究結果が記されていたのだが、映されるや否や会場内はより一層騒然となった。一瞬ひるんだ教授。そこへ一人の聴衆が近づいてきて、教授の手を取り「教授、なんと素晴らしい!これは我々の分野に革命を与えることでしょう!」となかなか手を離さない。そこへ一人二人と研究者たちが近づいてくる。その中の一人が言った。「私たちは日本語がわからないので、資料が出る前はなんの話なのかがよくわからなかった。本日は英語での発表を期待していたのだが、資料を見て驚いた!これは新たな発見だ!」と興奮している。教授はもちろん英語で発表したのだが、発音がひどすぎて話が全く通じていなかったという話だ。

 

なんだか落語みたいなオチだが、でも「さもありなん」な話でもある。外国人が話す日本語はわりと聞きやすい。まったく日本語を学んだ経験がなくとも、「日本語ではなんていうの?」と聞かれて「〇〇だよ」と答えると、短い文章ならば日本人にも確実に伝わる音で「〇〇」とリピートできてしまう。これは日本語の子音の音が弱いこと、母音が真似やすいことにあるのでは?と思う。

 

いつの頃からか日本の英語教育も発音の悪さを改善するような内容になっているようだが、そんな教育を受けられなかった世代は相変わらず発音で苦労しているわけで、「話す内容さえしっかりしていれば絶対に伝わる!」という気合をゴリ押しする方式は実は伝わっていないということを真摯に認めるべきで、今すぐに発音について学んだほうが良いと思う。

 

小川先生のこの本には14種類もの母音が記されている。一つ一つの音の特徴を説明し、画期的な練習方法が記されている。それはフィンガーアクションというもので、声を出す時、一緒に手を動かすとなぜか口も手の動きに伴うというものである。詳しくは小川先生のブログにもあるので参照にどうぞ。

 

実際にやってみると、不思議なほど楽に発音ができ楽に身に着けることができた。しかも画期的なのは再現しやすいということだ。目の前にネイティブの先生がいて、丁寧に発音を直してくれる場合ですら一度上手くいってもすぐに身につくものではない。独学で勉強する人なら尚更である。私は練習の時に録音したりしながらチェックをしているのだが、フィンガーアクションのおかげですぐに上達を感じることができた。

 

子音も聞いては真似、聞いては真似を繰り返してもなかなかできない音がいくつもあったのだが、それも丁寧な説明のおかげで「なぜできていなかったのか」の理由がわかったことから改善の兆しが見えてきた。むしろ出来てると思い込んでいた音が全く出来ていなかったということもわかり、1回通しで練習しただけでコツがつかめたように思う。

 

ここまでやるとリスニング力もかなりアップしたように思う。BBCのようなRPはもとより聞きやすいのだが、方言なども耳に入ってきやすくなった。失敗したのはこの本を読み始める前に音読を録音しておかなかったことである。聞き比べれば絶対に差があったはずなのに惜しいことをした。この本で定期的にチェックをしたいと思う。特に仕事で英国の方と話す前は必須の1冊。お宝本。