Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#133 寒くなる前に江戸探訪しようかな

『入り婿侍商い帖 1』千野隆司 著

旗本の次男坊が米屋に嫁ぐお話。 

入り婿侍商い帖(一) (新時代小説文庫)

入り婿侍商い帖(一) (新時代小説文庫)

 

 

日に日に寒くなり、ついに着る毛布を出してきた。朝晩めっきり冷えますね。

 

Kindleに入っている作品を少し読み込もうと思い、以前セール時に購入していた本を読み始めた。まずはシリーズものの最初3巻までを購入していた本書から読む。

 

主人公の五月女角次郎は家禄三百五十石の旗本の次男坊で、二十歳を超えそろそろ婿に行かねばと考えるもなかなか希望通りにことは運ばない。家督は長兄に譲られる世の中だから次男坊としては身持ちの良いところに婿に行くなくては五月女家の厄介ものになってしまう。兄とはたった1つ違いなのだけれど、兄はすでに嫁も娶り、あとは世継ぎを待つばかり。行き遅れているだけでも気不味いところだが、角次郎は7年余りを家ではなく祖父とともに知行地である下総の野田で過ごした。祖父の他界後に江戸に戻り、今は家の雑務をこなす以外は剣術で腕をならすのみの日々だった。

 

知行地という言葉、今回初めて知ったのだけれど「ちぎょうち」と読み、各藩の藩士に対して年貢の徴収権を認めた土地のことらしい。野田は利根川の地の利を活かして江戸との交易がさかんだったようだ。周りには味醂や醤油を作る地もあり、角次郎は祖父について農業や農産業について学んだ。みっちりしこまれたので、米の状態や香りで産地がわかるほどの目利きとなる。

 

ある日角次郎に転機が訪れる。気分転換にと外神田にある家を出て両国広小路をぶらぶらしていた時、やくざ者が商人に言いがかりをつけているところに出食わした。周りに人だかりはできていても誰も助けようとはしない。見かねた角次郎が商人を助けるのだが、乱暴された時に小僧の肩の荷からこぼれ落ちた米を見てすぐに産地を当ててしまう。驚いた商人は自分が本所元町の舂米屋の大黒屋善兵衛であると名乗り、角次郎を店へ誘う。

 

店で歓待を受ける角次郎だが、店主は角次郎が米の産地を当てたことに対する関心が尽きない。野田でのことを告げた角次郎だが、米を当てるだけではなく試しに舂いた米の技量も素晴らしく、すぐさま舂き米の仕事を申し出た。

 

こうして角次郎は大黒屋へ出入りすることとなるのだが、後に大黒屋が嫌がらせに巻き込まれていることを知ることになる。深川今川町で手広く米を扱っている佐柄木屋は次男の商売の地として両国広小路に目をつけていた。嫌がらせをして店子を引かせ、次男坊のために佐柄木屋の分店を立てようとしており、大黒屋のある場所がまさに欲しい土地だったために嫌がらせは加速した。もともと剣術に長けている角次郎は用心棒としても心強いし、何より米についての知識もある。聞けば次男坊で嫁も探さねばならぬという。ここで店主は娘お万季との縁組を申し出る。タイミング良く実家では兄嫁解任のニュースがあり、角次郎も商人となることを決心する。

 

なんともお江戸らしい展開なのだけれど、のんびりお茶を呑み呑み楽しめる内容だった。ひとまず手元の3冊を読み続けようと思う。それにしても江戸の時代小説を続けて読んでいる癖に日本橋にはちょくちょく行っても両国や憧れ(!?)の本所に行ったことがない。本格的に寒くなる前に一度行ってみなくては。回向院ははずせない。深川辺りまでだと遠いかな。資料館にも行きたいし、帰りは蔵前でお茶もしたい。蔵前に出るならかっぱ橋も・・・。と思いばかりが先立つのだが、なかなか重い腰が上がらないのが問題。