『損料屋喜八郎始末控え 2』山本一力 著
損料屋を営みながらもお世話になった札差米屋の2代目の仕事にも目を光らせる。
シリーズ2冊目。1冊目があまりに面白かったのでさっそく2冊目を購入した。
時代小説も軽い文章のものとどっしりした読み応えのものがある。この本は主人公、喜八郎の実直さと堅気さに溢れた文章で男らしさが止まらない作品である。
今回も喜八郎は江戸の平和のために日夜目を光らせる。喜八郎と与力の秋山の働きがもとで棄損令が下され、江戸は困窮の最中にある。棄損令は武士の困窮を救済するためのもので、禄米の売買で金貸しまで仕事を広げた札差は借金を踏み倒されて以前のような派手な生活はできなくなった。
日々淡々と過ごす深川の人たちにとって、富岡八幡宮の祭りは誇りそのもの。札差は蔵前を本拠地とし華やかさは浅草や両国にあったが、深川には八幡様と江戸屋がある。江戸屋は1000坪ほどの敷地をもつ料理屋で、女将の秀弥と喜八郎はなんだか縁がありそうだ。
この小説は浮ついたところがないので、読んでいると妙に落ち着いてくる。謎の武士や悪徳商人なんかが出てきても、やっぱり喜八郎がいたらどうにかなる!と思えてくる。喜八郎の姿は男性がみて「かっこいい」と思える姿なんだと思う。真っすぐで嘘がなく、決して強がらず威張らず、弱気を助ける。上司としても申し分ない。正しいことを瞬時に見極め判断する知的さも忘れてはならないだろう。そして何より強いのだ。
今回は仲間と花見に行ったりと粋な深川の暮らしものぞけたりと読み応えたっぷりだった。そして喜八郎がかっこよすぎて、こんな風に芯のある人に出会いたいものだと思わずにはいられない。世の男性にぜひ読んで欲しい。