Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#896 濃くて甘くて。~「夜叉萬同心 2」

『夜叉萬同心 2』辻堂魁 著

ビターチョコも加えたい。

 

昨年退社した同僚は1年ほど自由を満喫中で退社後は旅を楽しんでいる。旅から戻る旅に連絡をくれ、土産話を聞かせてくれることを楽しみにしている。今回はベトナムに行ったとのことで私の好きなベトナムコーヒーを山ほど買ってきてくれた。ベトナムコーヒーは専用のドリッパーで淹れるのだが、今回スタバのVietnamese coffee filterまでプレゼントしてくれた。今自宅で使っているものは以前にハノイに出張に行く同僚にお願いして買ってきてもらったもので、市場で売っている一家に一台的なスタンダード型でステンレス製だ。今回頂いたスタバのものはスタイリッシュなデザインでなんだかかっこいい。アルミ製でとても軽く、作りもしっかりしている。アルミは熱伝導が良いのでコーヒーを淹れた後は熱くなるので気を付けたい。

 

私が気にっているベトナムコーヒーはものすごくベタだけどリスの絵のついたCON SOC COFFEEで、たっぷりのミルクで飲む。本来は練乳で飲むのが本場流なのだろうが、練乳だと甘みが強すぎるので私にはミルクが丁度よい。

 

本当はすぐにでも飲みたかったのだが夜に眠れなくなることを思い、成城石井のディカフェのドリップコーヒーを飲みつつ本書を読む。

 

硬派な時代小説で、読み応えがある。


2冊目も夜叉萬こと七蔵は堅実に江戸の平和を守っている。1冊目の事件で出会った音三郎という武士がいる。二人は馬が合い、その後の捕り物などにも手を貸してもらうなどの付き合いが続いている。七蔵は親しみを込めて「音さん」と読んでいる。その音さんは兄の仇を討ち一度藩に戻ったのだが、この度また藩の事情で江戸へ戻った。

 

そしてまた新しい人物が七蔵の生活を盛り上げてくれている。まず、捕り物を手伝う樫太郎が七蔵の家の離れに住むこととなった。遠くから通うよりも同じ家のほうが便利との理由だが、家を切り盛りするお手伝いのお梅にもかわいがられて家の中が明るくなった。加えて母方の姪のお文が武家で行儀見習いをしたいとやってきて、家の中はいつも笑いが絶えない。

 

2冊目に入りより小説の味がぐっと深みを増す。悲しみが生んだ事件が多く、七蔵の優しさが心に染みる。すべては永代橋の事故から始まった。その日は深川の富岡八幡宮の祭礼の日だった。あまりもの多くの人々が祭りに参加しようと深川を目指した。皆が深川を目指す中、徒歩で橋を渡る者もいれば川を船で移動する者もいる。もちろん裕福な者が川を使っての移動を選び、そのために橋の通行を一時止めるなどの処置がとられたことから人々の行動は統率できないものとなる。橋の通行が解放された途端に人々は深川を目指して移動した。祭りに興奮した人々が一気に橋を渡ったことから事件が起きた。橋がその重さに耐えられず崩落、次々と人が大川へと落ち、その数は数千名にもなったと言う。

 

川へ落ちた中に武士の夫婦がいた。祭りへと向かっていた二人は大川へ落ち、二人はどんどんと流され生き別れてしまった。夫は一命を取留めるも妻が見つからない。しかしきっとどこかで生きていると信じ、必死に探し続けるも妻の姿は見当たらない。川から海へと流れたのかもしれぬと漁師町まで探しにいくが、妻はどこにも見当たらない。そしてある日、夫の亡骸が見つかり、七蔵は調査に当たる。

 

その事件で縁ができたのが猫の倫だ。まるで七蔵の心がわかるかのように、そして七蔵も倫の言葉がわかるかのような気がする。事件の後、倫は七蔵についてきて、ついには七蔵の家で暮らすこととなった。真っ白でかわいらしい倫は萬家で歓迎され、特にお文とは仲良しだ。

 

その倫が連れて来た縁もある。ある日家の中から子供の声が聞こえて来た。近所の子でも遊びに来ているのかと思った七蔵だが、話を聞いて心を痛める。倫に連れられてやって来たまだ4歳の女の子は火事で両親を亡くし、6歳のあんちゃんと二人で暮らしているという。あんちゃんはたった一人で一切の家のことを引き受け、妹を支えているという。6歳なんてまだまだ子供だ。しかし家事をこなし、どこからかお金も稼いできているという事実に萬家の面々に彼らのことを守りたいという気持ちが湧く。

 

その頃、赤蜥蜴という窃盗団が再び江戸に現れた。北町奉行所でも全力を挙げて赤蜥蜴を追うが、簡単には奉行所の手には落ちない。七蔵は残された小さな証拠から赤蜥蜴に迫るが、その調査には樫太郎、嘉助、お甲といつもの手の者に加え、音さんの協力を得つつ悪へと迫っていく。そしてその悪の手のすぐそばに意外な人物が捉えられていた。

 

1冊にいくつかの事件が混在しており、愛憎が入り交じりより悲しみが深くなっている。とにかく内容が濃くて、渋みもえぐみもすべてが詰まっている。1冊目を読みハードボイルドが過ぎると思ったが、2冊目になってその傾向に人の温かみが加わりシングルモルトにビターチョコといった感じ。そうそう、ベトナムコーヒーの濃さみたいな感じ。濃くて甘くて。

 

今からもう3巻目が楽しみすぎて他の本を手に取りたい気持ちが皆無です。

 

#895 負の感情をシステムでカバーできれば嬉しいかも~「とにかく仕組み化」

『とにかく仕組み化』安藤広大 著

会社のシステム。

 

4年に一度のうるう年。朝からあれこれ面倒なことが発生している。午前のうちに片付いたので良かったが、明日からの3月はかなり忙しくなりそうなので今日の午前はウォーミングアップと思っておこう。

 

去年の秋くらいから週に5回、30分のオンライン英会話を始めている。私は英国アクセントの教師を選んでレッスンを受けており、ほぼおしゃべりみたいな感じではあるがそれが結構楽しかったりする。昨日、こんな話を聞いた。その先生には他にも日本人の生徒がおられ、その生徒さんから「日本は4月の年度初めに合わせて大きな組織改編や人事異動がある。」という話をされたそうだ。なんでもその方の同僚でチームとして一緒に働いていた方が異動となり、代わりにいらっしゃる方は今までそのチームが関わるビジネスとは別畑の方が抜擢されたとのこと。また一からのスタートとなるのでそのことが心配だというお話をされたらしい。

 

先生は日本の異動制度のことを知り、ものすごく驚かれたようだ。私にも「日本の企業はみんなそうなのか」と聞いてきた。先生の主張はこうだ。「専門性をもっと尊重すべきなのではないか。全く新しい業務というのも会社としては価値あることかもしれないが、その方個人の成長や今まで築き上げた専門知識が今後の業務に活かせないのではないか。」確かに欧米には終身雇用という概念もあまり無いようだし、国によっては個人の専門性を磨いて転職していくことでステップアップや昇進をしていくような面もある。

 

一方で日本は多くの部署を経験して個人の技能を高めつつ、将来的に上の立場になった時にそのビジネスについての知識から正しい判断ができるようになる。ただ、何百人もの同期がいるなかで役員にまで上り詰める人はたった数人、管理職だってそう多くはないはずだ。しかしいろいろな部署での経験は個人を育てる場合もある。興味がなく、その存在自体よくわからない状態であっても、仕事として学んで行くうちにどハマりすることだってありうる。

 

今、ちょうど本書を読んでいるタイミングだったので企業のあり方についての話はいろいろな立場からの意見を聞く様で楽しかった。

 

事前にしっかりチェックすれば良かったのだが、本書は3部作からなっており最後に読むべき3冊目。書店で見つけた時に「仕組み化」が目に入り購入したのだが、その時手に取った理由は日頃の仕事の効率を上げたかったからである。業務の総量は変わらないどころか増えるのに対し、効率化が追い付かないので残業ばかりが増えていく。今はとにかく業務をシンプルに行う仕組みを作るべきで、本書から何等かのヒントが得られるかもしれないとタイトルだけを見て購入した。

 

著者は「識学」という組織運営のコンサル会社を運営しており、識学は意識構造学という学問から取った造語とのことだ。会社は組織であり、組織とは同じ目的を目指している人によるまとまりや構造のことである。よく社員の一人一人を組織の歯車に例える例があるが、全ての構成員が同じ熱量で動くことで企業の活動は円滑なものとなる。歯車自体の大小の差はあれ、上手く組み込まれていれば組織は問題なく動く。

 

本書での仕組みというのは、その歯車を動かすための大きな仕組みであり、私が求めていた個人の効率を上げるための仕組みとは若干異なる。もちろんパフォーマンスが上がるような快適な仕事環境であれば、個人の能率も必ず上がる。例えば管理職やマネージャーらがどのように部下や業務に対峙するべきか。それをシステムとしてどのように築いていくべきかを学ぶことができる一冊で、決め事としてはその業務の中に感情を入れないことが必須である。

 

人間関係が業務に与えるストレスは大きい。私もついつい「嫌い」を表に出してしまうことがある。社内の人間を信用できないということがそもそもおかしいのだけれど、こういったマイナス感情もシステムの中で決められた流れに沿うことで解消できるのであれば自ずと能率は上がるはずだ。

 

確かに一緒に仕事したくないと思う人との業務も淡々と効率よくこなすことができれば、本人にとってもプラス。会社にとってもプラス。上の役職に就けばまた違う悩みもあるのだろうけれど、感情をコントロールしつつチームで働き利益を生むというのはどこの会社で働いていても同じだろう。ノイズになる感情をプラスに変えられるという点に関心が湧いた。

 

そして会社の目標や理念、知っていますか?という部分も耳が痛い。とっさに口に出たのは中長期の目標であり、会社が創立されたころの社是ではなかった。そうか。会社の未来を決める時、この理念が基準になるわけか。

 

本書のシリーズ、最終巻から読んでしまったが他の書籍も読んでみたい。

 

 

 

#894 日本酒よりはウイスキー片手に読め!的な時代小説~「夜叉萬同心 冬かげろう」

『夜叉萬同心 冬かげろう』辻堂 魁 著

シリーズ1作目。

 

余りの風の音に夜何度か目が覚めてしまった。しかも寒い。満足な睡眠時間というのは人によって大きく差があると思われる。私の場合ベストは5~6時間で、8時間寝ると体がだるい。5時間を下回ると次の日に疲れを持ちこす感が残る。一度寝入ってしまうと朝まで起きないタイプなのだが、昨日は1時間おきに目が覚めてしまい、朝はまだ眠りの中にいるような感じ。

 

さて、昨日のことだが「。ハラ」の話になった。これ、英語の場合、「.(ピリオド)」打たないってことになると思うのだが、多言語でのメッセージのやり取りどうしている?というのが社内でのテーマ。その場にいた業務上日本語以外の言語でのやり取りの多いメンバーはみな、「ピリオドは打つ。文章が2つ以上になったら絶対打つ。」とのことだった。あと絵文字入れるという人も多くいた。どこどこの国の人はこの絵文字が好きだ、みたいな話でも盛り上がり、結局日本語の「。(マル)」の扱いについては「むしろSNSを使って日本語で長文打つことがない。だから。が登場しない」というオチである。試しにみんなでSNSをチェックすると、ものの見事に短文ばかりである。こういうことから将来的に小説の傾向なんかも変わって来るのかもね。

 

昨日はちょっとストレス多めの一日だったので読書に癒しを求める。疲れには時代小説が一番ということで、早速Kindleの中を物色。まだまだ読んでいない小説があることが嬉しくなったのだが、それでもやっぱり書籍数が多すぎるので早めに読んでいかなくては。

 

本書を購入した意図はいろいろな作家の作品も読んでいこうと考えたからで、著者のお名前のかっこ良さに惹かれてのことだった。なんとなく硬派な武士ものを連想する。

 

主人公は北町奉行所の同心で名を萬七蔵という。「よろず」と読むが、親しい与力などは「まんさん」と呼んだりもする。多くの同心は一代限りという本来の習わしには従わず、ほぼ世襲であった。萬家も息子の七蔵が引き継いだのだが、それでも七蔵の父が鬼籍に入ったのは本人が7歳の時であるから相当早い。父は事件の中で命を落とし、父の他界から数か月で後を追う様に母も亡くなった。13歳で見習いとして奉行所へ入り、異例の速さで出世した七蔵は、嫉妬のせいか口悪く言われることもしばしばである。

 

加えて剣術も強く、16歳にして師範代になるほどの腕前でもある。恐ろしく強いことから「夜叉」の二つ名が界隈に響くようになった。それはまだ30代にして定廻り同心となった時代のことで、夜叉萬を知らない悪党はいないほど名を轟かせていたのだが、ある日お奉行より七蔵は隠密廻り方同心へとの命を受ける。

 

もともと七蔵には冷静に深く考えるようなところがあるようだ。よって剣術の強さや体躯の良さから周りから恐れられたわけではない。事件の真に迫る方法を知っているがため、罪を犯した側にすれば「逃げられない」という思いが募る。しかし夜叉のあだ名はあれとも七蔵は鬼ではない。幼い頃に両親を亡くしているせいか、情にもろいところがある。理不尽な行動もとらず、どこかに悲しみも携えているようなちょっとハードボイルドな武士ストーリーである。

 

本当に悲しいのだ。七蔵は二十歳を過ぎ嫁を娶るも、若くして病で急逝。親代わりであった祖父も嫁を見送った数年後に逝ってしまった。今は祖父の面倒を看てくれていた手伝いの婆さんとの二人暮らし。後妻を娶ることもせず、今七蔵は四十代となった。

 

しかし七蔵の周りには信頼できる気の良いものも多い。同心には小者と言って捜査を手伝う者がいる。元は髪結いの嘉助が七蔵を手伝っていたが、嘉助ももう歳を取ったことと知り合いの地本問屋の息子である樫太郎がぜひ七蔵のもとで働きたいいうことで、七蔵の手下は嘉助から樫太郎へと変わる。樫太郎は16歳の若造にしては気も利くしよく働く。またお甲という女手もいる。もとは盗賊だったが今の奉行を支える与力の久米がお甲を仕事の担い手として育てたという過去がある。逆恨みを受けしばし上方に身を隠していたお甲だがこのほど江戸へと返り咲いた。捕り物で知り合った音三郎も心根の優しい青年だ。兄の敵を取るべく今は江戸にいる。

 

それにしても今回は立ち回りのシーンが多く、剣道などもかじったことのない読者にはちょっと理解が難しい。戦いのシーンはさっと読み流すくらいで読み進めているが、ぎゅっと詰まった濃いストーリーに読書の満足感が増してくる。決して派手ではないが、落ち着きとじんわりした優しさのある深みがまさにウイスキー感たっぷり。

 

しばらくはこれを楽しみに読み続けたい。

 

 

#893 夢にまで出て来た青髭ブックス~「書店員 波山個間子 2」

『書店員 波山個間子 2』黒谷知也 著

本のプロ。

 

この間、本書の1巻目を読んだ。それがなんだか頭から離れずしかも青髭ブックスに行く夢まで見てしまうほどで、潜在意識の何かが波山さんに共鳴しているのか?と思うほどにずっとこの本のことを考えていた。1巻目を再読し、2巻目も読む。

 

 

書店員の波山さんは食費を削って本を買うほど読書が大好き。接客は苦手だが今はブックアドバイザーという肩書をもらい、日々お客様も要望に応えている。

 

表紙には今回紹介されている書籍が描かれているが、今回も波山さんが紹介するに至る過程が面白い。

こんな無茶ぶりでもちゃんと波山さんは答えてくれた。

 

このくだりが好きだ。波山さんが真剣にあっと驚くような本を探している場面ではいろいろな小説が頭の中を駆け巡っている。波山さんはどちらかというと小説、それも純小説が好きだ。おそらくディープな専門書なんかは読まないだろうが、文化に関わる書籍は読んでいるような印象がある。推理小説も小説のうちだが、純文学とはちょっとずれる。しかしやっぱり波山さんは面白い作品を知っていて、それがお客さんのツボにはまるだけではなく、波山さんの説明を聞いている人がみんな「それ、読みたい」と思うほどに熱のこもった説明は「本」をより魅力的にする効果があるようだ。

 

恐らく、波山さんが何よりも本を愛していることは置いておいて、彼女がお世辞を言えるほどに世間慣れしておらずむしろ頑固一徹な人であるから、言葉に重みが出るのだろう。あの波山さんが言うのだから絶対に面白い!と人柄そのものに説得力がある。

 

波山さんの様子を見ていると、自分も自信を持ってプレゼンし相手に信頼を得ているかが不安になる。口先だけでその場をやり抜けようとしてはいないだろうか。

 

私も波山さんのコメントに本書に出てくる作品を数冊購入してしまった。読まなくちゃ!な気分になってしまったのだから波山さんのプレゼンは相手に訴えかけるものがある。プロは波山さんのようなタイプを目指すべき!

 

それにしても読書離れで街の書店がどんどんと減ってきているという。波山さんのようなアドバイザーさんがいれば書店の維持は可能になるだろうか。書店経由の購入で電子書籍の売り上げの一部が書店さんに行くようなシステムは作れないのかしら。いや、こんな単純な案はすでに誰かが考えているはず。波山さんの姿に書店の今後まで妄想してしまった。

 

#892 どんな大人になりたいか、10年前から準備すべし~「フランス流のもの選び」

『フランス流のもの選び』Katie 著

暮らしの楽しみ。

 

今年は何としてでも断捨離を実行しなくてはならない。スペースに対して持っているものが多すぎるため、常になんらかの物が視界に入る。それが知らず知らずのうちにストレスになっていることに出張に出て気が付いた。

 

出張時には場所によるが大抵1万円~1万8千円くらいのビジネスホテルに宿泊することが多い。金額が微妙なのは社内規定で決められている最大限値に合わせているからで、役職が上に行けばいくほど1泊あたりに使用できる宿泊費が増えるというシステムになっている。このくらいの金額だと日本のビジネスホテルチェーンはほぼ宿泊できる。個人的な好みと出張地での有無から私はダイワロイネットを使うことが多い。ホテルの部屋に入ると、テーブルの上、デスクの上、収納にも何もない。その機能的で整えられた環境がものすごく心地よい。ああ、そうか。視界に飛び込んでくる情報は時にストレスになっていたんだなあ、と気が付いたわけだ。

 

もう先月の話になるが、仕事で使う書籍を購入するために書店に行った際のこと、料理やファッションなどのコーナーをちらっと見ていて本書が目に入った。フランス風ファッション、フランス風レシピ、フランス風インテリアという単語は大好物なので早速購入した。本来ならその日のうちに読みたいところだったのだがあれこれが発生して手に取るのがすっかり遅くなってしまった。

 

すきま時間はたいてい読書に充てているので、流行というものが全くわからない。SNSYoutubeも見ない。そもそもアプリ持ってないし(これを言うと多くの人に呆れられます)よって各界で活躍しておられる旬な方々がSNSなどで人気を博した一般の方であると知って毎回驚いてしまう。本書の著者もYoutuberとのことで、本書を読んだ後、久々にYoutubeでチェックした。

 

 

こちらの動画、本書の表紙の写真にも似ているが内容も肝を語ってくれている。本書を読んだ時はフランス在住の方だと思っていたのだが、動画を見て日本にお住まいであることを知る。フランスの企業に長くお勤めで、実際フランスでも生活された方がフランスで知った生活の知恵を紹介するような動画になっている。

 

全ての動画を見たわけではないが、おそらく本書に書かれている内容は恐らく動画でも紹介されているであろうと想像するが、書籍は書籍の良いところがある。まず、動画では少しのコメントが流れている他は映像で生活を紹介することがメインになっている。例えば使っているブランドの紹介やお店の情報などがあっても、「なぜ」の部分は語られていない。その見えない心の中の様子が語られているのが本書である。

 

著者は30代から「不要なものは手にしない」と決め、リストを作り行動を制してきたとのことだ。それも長く使うことで愛着が湧くような「一生もの」のみを購入し、それを大切に使っている。どれも安価なものではなく、40代になってリストの最後にあったバーキンを購入したそうだが、買おうと思ってすぐにバーキンを購入できる人は世の中のほんの一部の人のみだ。著者は10年かけてリストを吟味しつつ購入したそうだ。ファッションにおいてもライフプランを作るという点にものすごく共感する。

 

なんとなく良さそう、セールやってる、人気だから、などなどの理由でついつい靴や服を買ってしまうのだが、著者ならきっとぐっと我慢して買わないはずだ。足るを知ったワードローブなので必要以上の洋服はなく、コーディネートも瞬時に作り出せる。

 

リスト作りの中で10年後を想像するために今の自分より上の世代の雑誌などを見て購入するものを吟味したとあった。この頃同世代のモデルさんよりシニア世代のファッションを見て「こんな風になりたい」と思うことが増えて来たのだが、草笛光子さんを見て自分が80代になった時に何を持ち何を着ているかを想像するという発想はなかった。これを知れただけでも価値観が変わる一冊だった。

 

本書とYoutubeに久々に触発され、週末は少し洋服を整理した。この勢いで断捨離進めて居住空間をクリアにしたい。

 

#891 雨の連休、読書が進む~「若さま同心 徳川竜之介 11~13」

『若さま同心 徳川竜之介 11~13』風野真知雄 著

なんと続編もあるらしい。

本日よりの3連休は雨でスタート。今月初めの雪の日は羽田着のフライトが欠航となったりと関東でも大きな被害となったが今回は雪になっても積らないとのこと。すでに朝からしんとした寒さで今にも雪に変わりそうな空模様なので外出の際には気を付けたい。

 

さて、こういう雨の日は読書が進む。好きな音楽を流しながら心行くまで読書を楽しもう。後少しでシリーズを読み終える本作から連休の読書を開始。

 


天気さえ良かったら時代小説ゆかりの場所へ出かけようと思っていたのだが、雨なので仕方がない。しかしまだ暗いうちから雨音を聴きながらの読書はなんとも贅沢で豊かな気分だ。こういう時間がいつまでも続けば良いのに。

 

本書は時代小説の中でも江戸の末期が舞台となっており、時代小説の王道である武士の時代が終わる頃が描かれている。加えて主人公は徳川御三卿の若様である。あまり歴史に興味がなかった頃、徳川御三卿徳川御三家の違いについて区別が出来ていなかった。わかりやすいのは徳川御三家で、こちらは要は分家で徳川家康との血縁がある家柄で将軍家の次に家格が高い。尾張紀伊、水戸の三つでこちらはよく耳にする。

 

主人公である竜之介は田安家の11男だ。田安徳川家御三卿の一つだ。御三卿というのは八代と九代将軍がそれぞれの息子のために分家したもので、田安、一橋、清水家がある。御三家と異なるのは、御三卿の方が身内としての扱いがあり、それぞれ千代田の城内に邸宅があったことだろう。よって11男とは言っても竜之介の身分はかなり高い。とはいえ、御三家も御三卿も将軍家の跡取り問題を解決する道の一つとして創設されているので、なんとなく似たようなところはある。

 

田安家は御三卿の中でも家格が高く、竜之介はその末男として生まれた。母親は貴賤の身ということで竜之介が幼い頃に城を出たと聞かされていた。その母にも面白いエピソードがある。

 

賢い竜之介は京都で起こった尊王攘夷の動きや、鎖国時代が幕を閉じどんどんと日本が変わっていく様子を真摯に捉え「徳川の時代は終わる」と考えていた。竜之介が徳川の城を抜け出して同心見習いになったのは、将来この時代が終わった後の自身の進むべき道を思ってのことで「江戸を守る仕事はきっと将来も必要になる」という理由からである。

 

竜之介は徳川の未来を担う一人でもあった。というのも代々徳川家の中でも最も才のあった一子のみに密に受け継けられている剣術が竜之介へと継がれていたからだ。自ら葵新陰流と名付けるが、竜之介はどこか徳川の未来を剣術に重ねて見ている。世はもうピストルの時代だというのに、この刀は未来永劫続くこととなるのだろうか。

 

著者の作品が好きでいくつか読んでいるが、私はこのシリーズが代表作と考える。予想が追い付かないストーリーは読んでて全く飽きが来ない。とくに後半部はとんでもない状況へ落ちた竜之介が逆境を回避していく姿に読者も息をひそめて見守るような気持ちになる。

 

今の日本でそういう立場の人がぱっと思い浮かばないのだが、将軍家だからロイヤルではないけれども、政治的に大きな力を持った国一番の家柄の傍系で、11男ではあるけれどその家柄の姓を名乗る一族のメンバーだ。容姿端麗、賢く誠実ピュアで、強い。しかも武士の矜持を持ち合わせた真直ぐな青年が初めて町民の中で暮らすわけで、上の立場から庶民の暮らしへ身を置く様子がちょっと救世主っぽいところもある。

 

庶民の生活がわからない竜之介は江戸っ子らしい言葉遣いを真似てみたり、巷の料理を毒見無しに食べてみたりと全てが新しいものだった。そして町民にとってもどこか余裕があり、擦れたところのない竜之介は珍しい存在だっただろう。その互いのギャップが小説をより面白いものにしている。

 

幕末から明治へ。その当時のことに思いを馳せていたら、なんと本シリーズに「新」と名の付くものが出ていた。時代は逆戻りで同心見習いの頃の竜之介の事件解決にスポットを当てたもので、現在3巻まで出ていると言う。やっぱりファンが多かったんだろうなー。今はもう少し余韻を楽しみたいので続編を読む気持ちにはならないが、竜之介が恋しくなった頃に続編も読みたくなるかもしれない。

 

#890 ホンモノの読書好きな方の日々は常に本に囲まれている~「書店員 波山個間子 1」

『書店員 波山個間子 1』黒谷知也 著

ブックアドバイザー。

 

悩みに悩み、この連休は家で過ごすことに決めた。台湾か香港かにでも行って英気を養いたかったが、しっかり準備してこそ楽しい旅になる。ぎりぎりフライトも確保できそうだった。しかしぎりぎりということは、旅行者にとって都合の良い時間ではなく、滞在時間も短くなる。事前にしっかりと予約しておけば費用も抑えられるし、スケジュールの都合をつけやすい。ということで、今回は本を読む+部屋を整えるための時間に費やそう。

 

ということで、早速週末読む本を探すことにした。Kindle内にあるものも良いがまずは山積みの紙の書籍から読むべきだろう。できれば読むのに時間のかかりそうな厚みのある書籍を読むことにしよう。集中して読めるせっかくのタイミングなので読書を楽しみたい。

 

そんなことを思っていた時、Kindle Unlimitedで台湾本を探している時に見つけた本書のことを思い出した。表紙のイラストからいかにも読書が好きそうな女性の姿に惹かれて早速読んでみる。

 

波山さんは「はやま」さんと読む。青ひげブックスは町の中規模の書店だ。前の店長は今は体を壊して入院しており、娘さんが書店を受け継いだ。店長さんはちょっと変わった方で読書よりは本を売ることが好きと言ってはばからないサバサバしたタイプ。

 

波山さんはそこでブックアドバイザーとして働いている。ブックアドバイザーという仕事は店長が作った新しい職務で、まじめで本について良く知っている波山さんを依怙贔屓した結果とのことだ。店長は波山さんが気に入っている。彼女の内気な性格や本への向き合い方などすべてを加味して、というより波山さんの仕事を認めているからこそより彼女の世界を広げ、育てたいと思ってのことではないだろうか。波山さんは本に詳しい。頑固なところもあり、まじめだ。一日に何冊もの本を読む。本を愛し、読書を愛し、心の底から没頭して本を楽しんでいる。ただ本と向き合いすぎてちょっと内向的なのだ。

 

波山さんが読書を始めたのは高校時代とのことだが、書店を訪れるお客様からの質問に応えることが出来るほどに多くの種類の本を読んでいた。小さなヒントからその1冊を探し出す。

お客様の曖昧な記憶の断片から探し出した一冊は、まさにそのお客様が欲していたものだった。そして本書の良いところはその物語についての波山さんの感想が素晴らしい。読んでいるうちにその本そのものが読みたくなる。

 

一日に何冊も読む波山さんのご自宅は書籍に囲まれており研究室のようだ。天井まで届く本棚が何台もあり、本好きが憧れるお部屋そのもの。加えて図書館からも本を借りて読むほどで、私も読書好きではあるが波山さんの読書ペースには驚いた。しかも斜め読みではなく、集中して本に対峙する読書スタイルであれば、1冊読むのにも時間がかかるはず。感情移入が激しく、時にカフェや図書館で本を読んでいる間に涙してしまうこともあるが、それくらい集中しているからこそ読んだ本の内容を忘れず、ブックアドバイザーとしてのお仕事が成り立つのだろう。

 

旅行記を探すお客様に提案したお話に大好きな本が出て来て嬉しくなる。

旅行好きで本書を読んでいない人はすぐにでも読むべき「深夜特急1―香港・マカオ―(新潮文庫)【増補新版】」はハードカバー、文庫、Kindle版すべて持っている。そういえばここ数年読んでいなかったとこれもまた読みたくなった。いつ読んでもわくわく感にブレがないし、もう何十年も前の旅のお話だから時代感は否めない。しかし「旅」という行為そのものや旅に対する人間の心というのはそう大きく変わらない。だからいつ読んでも心震えるものがある。

 

こんなに好きな本だというのに、その続編?の「旅する力」の存在を知らずにいた。ああ、これは今すぐにも読んでみたい。雨だけど本屋に行くしかないな。

 

ビジネスの現場ではもちろんのこと、物流問題についての話題が尽きない。個人の力で何ができるかを考え、私はネットショッピングからオフラインでのショッピングに切り替えることにした。配達量の削減につながればと始めたことだが、おかげで書店に足を運ぶ機会が増えて新しい本との出会いを楽しんでいる。あとは電子書籍の利用を増やすことと、購入単位数を増やして1度の配送で今までのショッピング5回分くらいの量を買うくらいかな。

 

雨の日は読書が進む。皆さまも楽しい週末を!