Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#229 懐かしい平成のマンガを堪能してます

 『レナード現象には理由がある川原泉

進学校を舞台にしたちょっと変わった学生さんのお話。

 

セール中に買いあわったマンガを一つ一つ読んでいるのでこの頃の読書傾向はすっかりマンガになってしまっている。大作を2つも続けて読んだせいか読後の感想は極めて充実感に溢れていて「読み切った」という安堵もあって満足している。

 


 今回の作品はセール対象だった白泉社の作品の中でも古いものから割と評価の高かったものを拾ってみたうちの一つ。私立彰英高校という天才ばかりの集う学校がある。そこにはがむしゃらに勉強して受かっちゃいましたタイプではなく、なんとなく余裕のあるというか天然風な学生さんがたくさんおり、彼らの一風変わった生活にフォーカスした短編集となっている。

 

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とにかく優秀な学生さんたちばかりで、賢いだけではなく裕福な学生さんもいる。競争で殺伐としている雰囲気は皆無で、むしろ緩い。生徒さんには、例えばヒーリング能力の高い女の子とか、他人の能力を開花させるほどに能天気な女の子がいて、むしろお勉強ができる設定のほうが不思議と思えるオーラがあるのだけれど、やっぱり言っていることは賢い。

 

Amazonの評価からコメディータッチの作品だろうと想像していたのだけれど、私にはあまりツボに入るところはなかったように思う。むしろ「大奥」のほうが笑ったかも。ただ、昭和や平成のゆったりした時代を思い出せる作品だったと言えるだろう。

 

もともとは2003年に発売されたものらしいので約20年前のものだ。学園もののコメディーとしては「ほんわり」「ゆったり」という軸もあるので、今読んでも楽しく読める。けれど、今風の笑いとはずれているので「電車の中で読んでいて笑いを堪えるのに必死でした」的な内容ではなく、疲れているときに気分転換になるようなお話。

 

 

#228 歴史ファンタジー 男⇔女入れ替わりの江戸に魅せられる!

 『大奥1~19』よしながふみ

徳川の御代、赤顔疱瘡が男子を襲い、女人が将軍の座に。

大奥 1 (ジェッツコミックス)

大奥 1 (ジェッツコミックス)

 

 

緊急事態宣言の延長により在宅勤務も伸びた。職種によって在宅勤務もままならず、常に人と接する環境で働いている方も多いだろう。自粛により営業が儘ならない企業もある中、在宅勤務、最高!とか言ってはいけないのだけれど、やはり在宅勤務は精神衛生上、非常にプラスになっていると思う(私には)。

 

先月Amazonのポイント50%還元キャンペーンで大量にマンガを購入したのだが、期間ぎりぎりになりこの本を追加で購入。よしながふみさんの作品には食べ物がテーマになっているものが多くいくつか読んではいたのだけれど、どうもBL的な内容になると興味がそれるというか、長く読んでいられないというか、読み疲れてしまう。

 

この作品はずっと話題になっていたのでいつかは読みたいとは思っていたけれど、男性大奥という前情報にBL要素が多そうな気がしてなかなか手が出ずにいた。50%というチャンスがなくてはきっと購入には至らなかっただろう。まずは1巻購入して内容をちらっと把握し、次に続けて3巻購入した段階で「これは買いだ!」と残りを一気に購入。一冊一冊がとても深く、他のマンガのようにさらっと読み進めることができない。小説を読むようにじっくり読まざるを得ないので、19巻完読するのに結構時間がかかる。

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ストーリーは三代将軍徳川家光の御代から始まる。突然若年男子にのみ罹る病気が流行する。風疹のように顔に疱瘡ができ、熱と痛みであっという間に死に至る。それがじわじわと日本に広がり将軍の住む江戸城にまで到達した。

 

そうではなくても江戸時代は病を治すすべがなく、子供の命は7歳まで生きることすら難しかった。将軍家の跡取りも赤顔疱瘡に命を落とす。そこで病が治まるまでの臨時の対策として女性の将軍が立てられる。外面的には男性名を名乗っているが、政を司るものも女性となる。

 

次々の女性が後を継ぐ中、十代家治(女)を支えた田沼意次(女)老中が赤顔疱瘡の治療法を見つけることに人生を注いだ。長崎からオランダ語のできる蘭医者を江戸に呼び、大奥で研究を続ける。その研究が功を奏し、江戸の男子の命が救われていく。

 

最終巻の19巻では大政奉還、そして徳川家が江戸城を去り維新そして明治へと日本が大きく姿を変えたところで物語は終わる。

 

完全にフィクションのなのだけれど実在の人物が登場する。そこがリアルさを醸し出し、読んでいるうちにあたかも本当にあったことのような気がしてしまう。それぞれの将軍の正確も教科書で学んだような個性が生かされていてとても面白い。

 

肝心の男女が逆になっているという設定だがBL的なものもなく、歴史マンガを読んでいるかのような気分になる。絵も美しく、日本家屋の背景が素晴らしい。将軍は権力を持っていつつも孤独である。信じられる者はほんの一部で、婚姻もすべて政略的なもの。どこに心の支えを置くことができるのだろう。

 

子供との別れ、将軍の薨去、政治の流れなど思わず涙してしまうところも多く、徳川の歴史にも関心を持たずにはいられない。

#227 肉も魚も野菜もフルーツもありなんて、ポルトガルってばゴージャスすぎる!

 『ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅』馬田草織 著

 お料理からデザートまで、ポルトガルの食の魅力が満載。

ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅

ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅

 

 

以前に読んだ著者の作品をきっかけにすっかりポルトガルに魅了されてしまった。

 

この作品を読んでいる間に京都からお取り寄せまでしてしまい、カステラのご先祖ともいえるパォンデローを食べ「これは一度行かねばならぬ」とまったく知識のなかったポルトガル行きを決心させるほどだった。ただ、こちらの本は文章がメインで写真がない。料理もすべてポルトガル語で説明されているので、一つ一つ検索しながら読み進める必要がある。そういえばこの本はKindleで読んだ。

 

ということで、もっと楽にポルトガルの食に触れてみたいと同じ筆者のこちらを購入。カラーの写真も多く、ポルトガル行きが現実となる日にはきっとこの本を持参するに違いない。著者も現地に知り合いがいるとは言え、バスを使って移動しているのでちょっとした旅行記も兼ねている。

 

さて、そのポルトガル料理なのだが肉も魚介もフルーツも野菜もすべてがある。地産地消が当たり前でむしろそれを推進している国があるなんて聞けば「は?なんで土地のものを食べないの?一番美味しいのに。」と言うだろう。これは著者の筆のなせる技も多分にあるとはいえ、写真からも食材一つ一つがパワフルでどっしりとした重みを感じる。味の深さや香りまでもが届いてきそうで、一度食べたい!と思ったら止まらなくなる。

 

私は下戸なのでワインのお話にそれほど食指が動かない質なのだが、それでも先回の作品に続き微発砲のヴィーニョ・ベルデには心が動く。名前のさわやかさもさることながら、美的なお酒のような気がしてならない。きっとグラス1杯も空けることができずに卒倒するに違いないのだが、是非ひと嘗めしてみたい。

 

食の質が問われる昨今、育てる側も可能な限り有害なものを避け、昔ながらの自然な力で育てることに重きを置いているが、自然栽培では収穫率に影響を与えてしまうわけだから、肥料や農薬の力に頼らざるを得ない。ヨーロッパではBIOがどんどんと市場を席巻し、一部の富裕層の食べ物ではなく一般が手にする食材となりつつある。ポルトガルもヨーロッパの一国でそんな流れに沿っているとは思うのだけれど、この本を読んでいる限りではもともと化学の力に頼らない農業があるようにも感じられた。

 

それは恐らくポルトガルの食事のバランスにあると思う。外務省の資料によると、ポルトガルは日本の1/4の国土に約1千万強の人口がある国とのことだ。穀物自給率も日本とそう変わらない数値だし、畜産も盛んなうえに海がある。1000万人の人口を満たすことができるわけだから、量より質に方針を取ることができるのだろう。歴史を紐解いても多くの文化からの影響があるようで、お皿に乗るメニューを見ていると野菜、肉、魚とバランスが良い。ただ、甘いものには目がないお国柄のようで砂糖を多用するのはよろしくないかも。

 

あまりにもポルトガルのことを知らなさすぎて、この本で初めて知ったことがある。それは、ポルトガルにも島があるということ。首都のリスボンから1000キロほど離れた大西洋のアフリカ寄りの海に数々の島がある。

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さっそくググるとこの辺り。アフリカの真横にも遠く遠く離れた海にぽっかりアソレス諸島、マデイラ諸島などなどがポルトガルなのだそうだ。そのマデイラ諸島はサッカー選手のクリスチアーノ・ロナウドの出身地とのこと。

 

この本ではマデイラについて紹介しているのだが、豊富なフルーツに驚いた。東南アジアかと思うほどのパッションフルーツ、バナナも獲れるそうだからフィリピンや台湾やベトナムのような気候なのかと思いきや、最高気温も30度そこそこ、冬には15度くらいとなんとも過ごしやすそうだ。

 

マデイラはワインの製造も盛んらしく、醸造過程で「加熱」の行程があるらしい。これは大航海時代の知恵で船で長期保存したものが美味しかったことから発展したとのこと。暖かい地域を航行し、樽の中で揺れて熟成されたワインを加熱で再現しようということだろう。著者はお酒がいける口らしく、所々でワインを楽しんでおられるのだがそれが羨ましくてならない。ああ、お酒が飲める体になりたい。

 

先回の本ではお菓子に心が奪われたのだが、この本では写真が加わったこともありがぜん魚と肉料理に目が行った。作ってみたいと思うものも多く、まずは食べてみなくては話にならないのでポルトガル料理店をチェックした。ちょうど近くに良いところがあったのでこれは行ってみなくては。

 

コロナ禍が落ち着いたら何をしようかなと考えることが増えた。今行きたい国はいくつかあるのだけれど、この本を読んでポルトガルがかなり上位にランクイン中である。ポルトガル語も気になるし、戦国時代にポルトガルからやってきた宣教師のことなど歴史にも興味が増し、今かなりポルトガル熱が来ている。話が変わるが、個人的にはロナウドよりもジョゼ・モウリーニョ派です。 

 

#226 ゆったりまったり気分転換が叶うカフェに巡り合いたい

 『鹿楓堂よついろ日記1~13』清水ユウ 著

古民家カフェはお菓子も料理も絶品。ラテアートだけはちょっと怖い。

 

Amazonのセール、今回はずいぶんとマンガを購入した。紙で持っていたシリーズものや、気になっていた作品などもちらほら購入。こちらは気になっていた方の作品で、今現在13巻まで出ている。

 

この作品の舞台は都内の古民家カフェで、4人の男性が営んでいる。この古民家はオーナーであるスイの祖父がもともと経営していたもので、祖父の没後にスイが復活させたものだ。料理担当のトキタカは著名な陶芸家でお年寄りに愛されるキャラ。スイとは同級生で、偶然店を手伝うこととなった。パティシエのツバキは和菓子も洋菓子も作れてしまう凄腕で、バリスタのグレはイタリアとのハーフで運動好きだが美的感覚が独特。4人は鹿楓堂に同居しており、そろいもそろってみなイケメンという設定。

 

鹿楓堂はカフェではあるが食事も出す。食事はトキタカが担当しており、彼は庭に畑を持ち自分で野菜を育てたりもしている。料理のお話のところだけ、レシピやこうすれば美味しいですよ的な内容になっているけれど、お菓子についての特別な話はなかった。

 

今まで読んできたマンガとは違い作ることに主眼を置いている作品ではなく、そこは少女マンガらしく目に美しく、食べて美味しく、人にやさしい温かい空間がテーマとなっている。実際、運営面で考えてみても席数がちょっとしたファミレスくらいの広さに見えるのに従業員4人で回すというのは難しいだろうし、たとえ裏庭で野菜を育てているとはいえ原価設定がずれているようにも見えるので、あまりリアルさは感じられないかも。

 

とはいえ、登場人物の人柄が面白く結局13巻大人買いしてしまった。特にバリスタのグレのキャラがコミカルで笑える。彼はイタリア育ちでバリスタの腕もイタリアで磨いており、最高のカフェを作る。が、ラテアートが問題だ。

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気合を入れたウサギのラテアートがかなり微妙。しかし味はとんでもなく美味しいのだけれど、やっぱりラテアートが微妙。しかし常連さんには「今日はどんな奇抜なラテが来るのかな」と楽しみになっているし、その微妙さが話題になっていることにパティシエのツバキは納得がいかない。とにかく、すごく微妙なのだ。そして、これは飲めばもっとすごくなる。

 

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飲み口からフォームが吸い込まれていくので、アートがどんどんムンク化。この作品はウサギだけれどもっと恐ろしい可能性を秘めたアートもあるので、それを楽しみに読んで頂きたい。

 

気分転換にはなる作品なので次のセールがあればその時点で出ている作品を購入してもよいかな、と思う。家の近くに行き着けのカフェがあったらな、と常々思っていた。チェーン店ではなく、喫茶店的な空間でそんなに騒がしくなく、ひっそり本を読んだりできそうな所。そこに行くだけで気分転換になるような、元気をもらえるような、そんなカフェに巡り合いたいものである。そういう意味では鹿楓堂は理想的なカフェなんだろうな。

#225 能の世界へ近付けてしまう美しい少女漫画

 『花よりも花の如く1~19』成田美名子 著

能を舞台とした美しい世界。

 

現在19巻まで、3月には20巻が出るらしい。ちらっと見た絵があまりにもきれいなことと、評価の高さに惹かれて購入した。本当にキャンペーン、ありがたいです。

 

能、狂言、歌舞伎などなど日本の伝統芸能は数多いが、能はお面を被るくらいの知識しかなかった。たまに小説などで能の話が出てきてはネットで調べて「なるほど」と知識を入れてから続きを読んだりしていたのだけれど、ストーリーはわかってもどのように演じられるのかなど想像したことが無かった。

 

もし能についてマンガで学べたらどれだけ楽しく近づけるだろうかとかんがえていたのだけれど、まさかそれが成田美名子さんの作品で読めるだなんて!絶対に美しいに違いないと早速出てるものを全巻買った。

 

そして、その成田さんフィルターを通した能の舞台がこれ。舞台一つでも美しいのだけれど、この細やかさがまたすごい!

 

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木の香りまで届いてきそうなほどの舞台の絵に圧倒されつつ、ストーリーもかなりの研究を重ねた上で丁寧に書かれているので内容がすーっと入ってくる。きっと物語の一部に過ぎないとは思うけれど、まったく能の世界を知らなかった人でももっと知りたい!と思えるに違いない。

 

能はお面を付けているので表情が変わらないように見えるけれど、作品の中での演者の「感情」がしっかりと読者に伝わるすごさ。泣けるし笑えるし、深みがある。

 

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能を演じるのは憲人3人兄弟の長男で、母親の実家は能の家元で師匠は祖父である。弟の西門は父方の実家である青森の神社へ養子となり、幼いころに家を出ていた。西門は弓の使い手で前作『Natural』でも大活躍。末っ子は妹で弓にも能にも造詣がある。

 

憲人の能に向き合う姿の中でも、能の舞台となったところへ出かけていくちょっとした旅行の場面もとても勉強になる。寺や神社の話も「ああ、そういう歴史があったのか!」と新たに学べることが多い。

 

この作品は少女漫画というよりは登場人物の年齢も少し高めなので大人向けの作品かと思う。ただ恋愛がテーマとなる瞬間はやっぱり少女漫画だなあと思い出せるのだけれど、その恋愛もさらっとうっすら。毎回の表紙といい、能のシーンといい、ため息が出るほど美しい。

#224 能のお話の予習としてバスケのお話を読んでおきました

 『Natural1~5』成田美名子 著

理子に弟ができた。弟はペルーからやってきた少年ミゲール。

NATURAL 1 (白泉社文庫)

NATURAL 1 (白泉社文庫)

 

 

白泉社の書籍が50%ポイント還元と知り、書籍で持っていたものや他の電子書籍で持っていたものを買い直そうと思い立った。

 

さっそくランキングをチェックしていたら能をテーマとした成田美名子さんの作品があり、その絵の美しさに数巻を購入したのだけれど、1巻目を見たらいきなり家系図が出てきた。

 

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一番下に「くわしく知りたい方は『Natural』全11巻をみてみてねー」とある。おや、続き物か?と早速Naturalを購入。

 

多分合本になったのだろう。全5巻完結セットとあったので一気に買ってすぐに読み始める。舞台は東京。研究家の父の関係でペルーの田舎で生活していた理子は、父親がリマに転勤になったことから一足先に母親と日本に帰国していた。リマは治安が悪いらしく父親は一人で数年滞在していたわけだが、ついに帰国が決まり理子は父の帰りを待っていた。

 

父はなんと「弟」を連れて帰ってくる。ペルー人の男の子を養子として引き取り、一緒に日本に連れてきた。男の子の名はミゲールで、大天使ミカエルから名を取ったのだろう。もともとミゲールの家族がリマの父の家で働いていたらしく、ミゲールは父になついていた。

 

ペルーと日本では言葉も生活習慣も異なる。理子自身も帰国子女として苦労したし、なんとか日本の生活に馴染もうと努力した経験もある。だからこそミゲールの不安を感じ取れたのだろう。理子が元気を取り戻すきっかけとなったバスケットボールをミゲールにも教え、ミゲールにも日本の生活の中で居場所が芽生えていく。

 

ミゲールは影と憂いのある少年だった。何かに怯えるようでもありながら、猛然に襲い掛かるがごとく怒りを見せる。それが理子の存在でどんどんと溶け、高校に進学するころには日本語も上達し、素直な少年となった。

 

物語は高校生となったミゲールを中心に組まれており、理子がきっかけを作ったバスケットと、ミゲールがやりたいと願った弓道の2本のスポーツからなっている。人物はほぼどちらかのスポーツにかかわっていて、弓道側のメンバーが本来読みたかった能のマンガにもつながっているようだ。

 

それにしても成田美名子さんの絵はいつみても美しい。この作品は20年ほど前のものなので主人公はガラケーだし、ところどころ古さを感じるけれど絵の美しさにそんなことも忘れてのめりこみ、そういえばこんなことあったよなーと昔を懐かしむ楽しみもあった。少女漫画らしいストーリー。

 

さて、次は能の話だ!

#223 大根一本まるっと食べる方法

 『堤鯛之進 包丁録 2』崗田屋愉位置 著

助けた男の子に鯉という名を付け面倒を見る鯛之進。子の親の知らせを聞く。

 

この間読んで面白かった本の2巻目。

 

 料理関連のマンガは料理の手順を学べるので面白い。具体的なレシピも兼ねているマンガもあれば、ざっくりした作り方だけれどどうしても食べたくなってしまうような料理が並ぶ作品もある。この本はどちらかというと後者で、時代背景が江戸ということもあって日本人の好きそうな献立しか出てこない。

 

料理を作るのは北国育ちの浪人で、かまど一つで一汁一菜が並ぶのみ。それなのになぜかとても美味しそうに見えてくる。やっぱり出汁から作るというが魅力なのだ。出汁をとってお味噌汁を作るのが当たり前だった時代はもう遠い昔の話となってしまった。削られた鰹節がビニールパックに入れられて売っているけれど、それすら使わずとも出汁の素がいろいろな形で売られている。

 

出汁が料理の要であることがわかっているだけに、昔ながらのやり方に惹かれるのかもしれない。手軽に作ることではなく、美味しく作るには素材を生かして出汁をとり、余すところなくいただくこと。こういう生活が尊く感じられるのはこの間まだ食べられるのに捨てられてしまう食品廃棄物の多さについての記事を読んだからかもしれない。

 

食べられない時代の話をされても、今の時代に生きる人には何も伝わらないし「無理して食べるより良い」という考えの人もいる。作った側の気持ちになれば「大切にいただかなくては」と思うのだろうか。今は農業の技術も発展し、食品ロスさえなければ十分に国民の胃袋を支えられるのではないだろうか。むしろ私たちは食べ過ぎなのかもしれないし、昔の生活に戻れというわけではないけれど、嗜好品など栄養とは別の観点での食も楽しんでいる。

 

それに比べて江戸の食は添加物もないし、冷蔵庫もないわけだから、その日に買ったものを調理してその日に食べる生活だ。食に集中しているように見えるせいか、鯛之進の料理に対する貪欲な思いに並んで、シンプルながらに滋養のある食事を作りたくなってくる。今回知った林巻大根も作ってみたい。

 

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思えばいまや大根もカットされたものが売られていて葉のついた大根をまるまる一本売ってないことすらある。野菜の皮には滋養があるけれど、食べないことも多いと聞く。食生活の何が正しいのかはわかからないけれど、食べ物を無駄なくいただくということは守っていきたい。「いただきます」と「ごちそうさま」の気持ちを大切に、食べられることへの感謝を忘れないでいたいと思っている。

 

この本、著者名から男性のマンガ家さんかと思っていたが女性なのだそうだ。筆のタッチも力強くて迫力があって面白い。他の作品も読んでみたくなった。