Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#521 京野菜以外にも関西由来の野菜ってたくさんあるんですね~「すかたん」

『すかたん』朝井まかて 著

大阪で野菜を扱う。

 

昨日読んだ本の余韻のせいか、朝井まかてさんの本を読続けて読みたい気分になった。


著者の時代小説は登場人物がどれも魅力的で、人柄自体が面白い。今回の作品は大阪の天満が舞台だ。天満と言えば、高田郁さんの「みをつくし料理帖シリーズ」を思い出す。そういえば大阪に出張に行く機会はあっても天満あたりって行ったことが無かったかも。次回はぜひ大阪天満宮に行かなくては。こうして小説から行き先を選ぶことが増え、旅に楽しみが加わった。やっぱり読書っていいなあ。

 

さて、その天満に野菜を一手に集める青物問屋がある。太閤秀吉の時代からというからかなりの歴史を誇るが、中でも河内屋は市場の纏め役を担う大店だ。そこに、清太郎という息子がいる。いい年になっても家業を継ぐことよりも野菜作りのほうが楽しいようだ。

 

一方で主人公の知里は武士の夫について江戸から大阪にやって来るも、夫が突然他界する。もともと夫の縁者たちからは結婚を反対されていたので、夫亡き今は自分で生活を支えなくてはならない。そこで子供たちに字を教える仕事などをやってみたのだが、それも長くは続かなかった。文化の違い、言葉の違い、水の違い。もともとは饅頭屋の娘だったので身分の垣根はさほどないとは言え、それでも大阪は世界が異なっていた。

 

知里が教え所をクビになった日、なんと長屋に泥棒が入った。なにもない知里の家とはいえ、どうにか残してあった現金と夫がくれた簪だけは大切にしまってあったのにそれも取られてしまう。こんな時なのに大家は家賃を払えと言う。困った知里になぜか河内屋への奉公の話が舞い降りて来た。江戸へ帰るお金もないし、知里は大家とともに河内屋へ挨拶に行く。

 

老舗の河内屋には、それはそれは厳しいしきたりがある。加えて、ただの奉公かと思いきや、知里はなんとお家はん付きの奉公であった。言葉の問題だけではなく、一つ一つの所作や仕事に神経を注がなくてはならない。しかし、その厳しさから多くのことを学び、知里は成長していく。

 

さて、タイトルのすかたんだが、これはちょっと間の抜けた人のことを指した言葉のようだ。では、だれがすかたんなのか。そこがこのストーリーの面白い所だと思う。能ある鷹は爪をかくすではないが、真に世の中を見通すにはすかたんでもよいのかもしれない。

 

からっと明るく、楽しい話で大変良い気分転換になりました。とにかく野菜の知識が増えたのも良かったし、今まで関西ならではの野菜と言えば京野菜に限定されるものと思っていたけれど、昔は難波で葱が取れたのか!と久々に野菜の産地について調べたい気持ちになった。今一番気になっているのは勝間南瓜!いったいどんな味なんだろう。本書で若旦那が「うまいで」と言っていたのでぜひ食べたくなった。芋栗南瓜は積極的に試したい。ああ、久々に市場に行きたいなあ。