Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#375 イタチじゃなくて常陸~「本所おけら長屋 17」

『本所おけら長屋 17』畠山健二 著

鉄斎のだんな、ボディーガードに。

 

電車の中で本を読むことは多いけれど、この本だけは絶対に家で読むと決めている。既読の巻で展開を全て把握していても絶対に外では読んではならない。待ちきれずにうっかり新刊を外で読めば、人情にほろりとして涙するくらいならまだ我慢できるけれど、号泣したりしてしまうこともある。そして頂けないのが大笑い。これだけはどうにも止められないので大勢の人の前で吹いてしまうことのないように、大人のたしなみとして家での読書と決めている。

 

万松が出てくるだけでも笑えるのに、今回はその上を行く。なぜなら「笑い」がテーマのストーリーがあるからだ。漫才の先駆けのようなコントのような、畠山先生はガチで読者を笑わせにかかって来ておられるので、笑わずにいること自体が難しい。そのやり取りが秀逸な上に、毎度毎度おけら長屋の住民たちが間髪入れずにボケ突っ込みを連発してくるので、いつも以上にリラックスした状態で読む必要がある一冊だった。

 

4編が収められており、その中で1話目の鉄斎のだんなが婿入り!という怪情報は、おけら長屋にとって鉄斎がどれほど愛されているかを語る話でじーんと来る。鉄斎のことをおけら長屋の「宝」だと言い、良縁にてめでたくここを去るわけだからと鉄斎の幸せを誰よりも祝う気持ちではあるけれど、それ以上にだんながここを去ることが悲しくてならないと、あの万松まで泣き出す始末。

 

笑いについては、三祐がキーだ。三祐はおけら長屋の面々が足繫く通う居酒屋だが、主の過去についてはなかなか語られることがなかった。居酒屋をきりもりするのは晋助と姪のお栄だ。晋助の妻はずいぶん前に他界した。一人息子は家を出たまま長年帰っていない。そして場所は変わって常陸。三平という百姓の三男がいた。百姓仕事は激しい労働にもかかわらず、貧乏暮らしで生活は苦しいまま。そこで江戸に出て一旗揚げると国を飛び出す。偶然が出会いと笑いを誘うというお話。

 

まあ、今回も読み終われば全体的にほっこりとはいえ、要所要所に笑いの壺がごろごろ転がっているので、いつも以上にスッキリした読了感。やっぱり江戸、いいですな。