Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#666 鍋を賭ける ~「大江戸定年組 3」

『大江戸定年組 3 起死の矢』風野真知雄 著

回復後。

 

Kindle Unlimitedでも時代小説が読めるらしいと知り、最初に検索したのが著者の作品だった。年末年始はこのシリーズを楽しみ、本書はその3巻目となる。3巻目までは無料で読めるのだが、2巻目を読み終わりすぐさま3巻目を購入してしまった。

 

 

買った理由はすぐにでも続きが読みたくて、そのままkindleで上がってくる続編の購入ボタンを押してしまったからである。なぜそんなに焦ったのかというと、定年三人組の一人、元旗本の夏木が倒れたからだ。

 

その時三人はある事件がそろそろ解決という段階にあり、いざ現場へと急いでいる時だった。普段元気な夏木が頭が痛いという。直前に囲っていた深川芸者と別れたばかりで、きっと元気が伴わないのであろうと藤村と仁佐も「休んでおれ」と先に初秋庵を飛び出した。

 

しかし、夏木を置いてきたことへの不安が募った仁佐はすぐに初秋庵へと駆け戻る。そして玄関で気を失っている夏木を発見する。ここで2巻目が終わった。そんなの続きが気になるに決まっているというものです。

 

そして本作ではその夏木のその後が書かれている。まず、倒れた理由は中風であろうということ。今で言う脳卒中で、回復しても人によっては体の機能に麻痺を残す場合がある。

 

夏木は医師の指示によりしばらくは初秋庵で昏睡状態にあったが、その後屋敷へと戻された。それでもずっと眠ったままである。医師の言葉を信じ看病にあたる夏木家の面々の心も空しく、夏木は何か月も眠り続けた。そしてある日、突然目を覚ます。

 

それだけで読者は乱舞したくなるわけだが、やはり気になるのは後遺症だ。弓の名人である夏木に麻痺が残るとすれば、今後の生活にも何かと支障が出るであろう。しかし夏木がこぼしていた三男が定年組を何かと支えることとなり、新たな展開が見えてきた。

 

旗本とは言え、長男以外は身の置き所に困ること多々だ。夏木家の三男坊の洋蔵も嫁どころか養子縁組さえ叶わぬ始末で、少し前までは手の付けられないこともあったという。ところが人にはやはり特技の一つや二つはあるようで、様蔵は骨董品を見る目があった。その筋のものも驚くほどの知識を有し、定年組を陰から支える。

 

今回は寝付いた父のもとへ弓の事件の解釈が求められた。夏木は「現場の正確な見取り図が欲しい」と言う。藤村が大体の地図を描こうとすると、もっと正確なものが必要だと言い、洋蔵に見取り図を作らせた。それが細かいところまでしっかりと描かれており、またもや定年組を驚かせる。

 

夏木も体調を回復させるための一歩に踏み出した。まずは自宅の庭で杖を使っての歩く練習から始め、年内には初秋庵に行く!と定年組と賭けをする。夏木が勝てば、定年組はこの冬一か月の間は鍋を食べることができない。なんとも彼ららしいと微笑ましい。

 

そして本作も終わりに大きな事件を残して「続く」の文字が現れた。今回もなんとも気になる終わり方なので4巻目に手が出そう。