Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#610 フランス式、境界線が私を強くする!~「なるほど、そう来る?フランス人」

『なるほど、そう来る?フランス人』香田有絵 著

フランスあるあるの謎解き。

 

この秋、思えばあまり栗のお菓子を食べていないことに気が付いた。この頃はチョコレートが美味しすぎてハイカカオのものをひたすら食べ続けているのだが、これはきっと毎日のコーヒーのせいかもしれない。たしかにコーヒーや紅茶を飲むと何か甘いものが欲しくなる。できる限り小麦粉系のものは取らないようにしているので(お腹いっぱいになりすぎて眠くなるし、デスクの上が汚れるから)最近はハイカカオのチョコレートがお気に入りだ。

 

しかし、緑茶と和菓子という組み合わせほど秋に似合うものはない。加えて言えば芋栗南瓜は秋にはぜひ食べておきたいベスト3だ。和菓子は丁寧にお茶を入れて楽しみたいので、帰りに久々に和菓子でも買おう。そして週末は和菓子と共に読書を楽しみたい。

 

さて、Kindle Unlimiteは約10冊の書籍を一度にダウンロードできる。せっかく登録しているので最低月10冊は読みたいなあと思っているのだが、なかなか速度が上がらない。しかも何をダウンロードしてあるのか覚えていなかったりもするので、定期的にチェックしなくては。ということで、長く読まずにいた一冊を読破することにした。

 

Amazonの評価も非常に高く、タイトルがまた秀逸だ。外務省による海外在留邦人数統計調査(令和元年)によると、フランスには約4万4千人が滞在しており、パリにはその35%強にあたる約1万6千人が住んでいるそうだ。今は書籍以外にも情報を発信する方法は簡単になり、ブログやSNSなども含めると著者のようにフランスの情報を発信しているライターさんは本当に多い。フランスのように360度目に見えるものが全て絵的で「とにかく映える!」となれば、情報発信したくなる気持ちもよくわかる。

 

本書の著者はフランス人のご主人を持ち、フランスのシャンパーニュ地域で暮らしておられるそうだ。ご自身で車も運転し、現地の方とも普通のコミュニケーションを取っておられる。しっかりとフランス社会の構成員として、旅行者や短期滞在ではなかなか知りえないフランス人の生活について書かれているところが非常に興味深かった。

 

内容の多くは、よく聞くフランスで起きた困った事についてだ。著者はなぜフランス人は日本人には無責任にも取れる対応をするのかを丁寧に説明している。そして読めば「ああ、なるほど」とストンと納得できるはずだ。私が本書から理解したことは、フランスは個人の責任範囲というものがあらかじめはっきりと決まっているから、それ以外のことには関わらない文化が根底にある、ということだ。

 

例えば就職する時の契約書の中には業務内容の詳細が記載されている。日本のオフィスでは(多分今はそんな会社あんまりないだろうけど)お客様が来たら、女性社員がお茶を出す。たいていはお客様が訪ねてきた部署や会議室に近い人、または新入社員などが担当する。フランスの場合、これがもし営業アシスタントだったり秘書だったりと、職務の中にあらかじめ記載があったのであれば、何の文句もなくお茶出しするだろう。そのお茶を美味しく淹れるとかは個人の器量によるものかもしれないけれど、とりあえず文句言わずに出す。

 

しかし、たまたまその日は総合職や技術職の人しかオフィスにいなかった。日本ならその方にお茶をお願いしたり、もしくは気を利かしてお茶の準備をして下さるかもしれない。しかしフランスならば、業務に「お茶出し」という項目が無いのに、その業務を請け負うことはしないだろう。だって自分の仕事じゃないもの。もっと言えば、こんなことはまず絶対に起きないが、そのお茶でお客様が倒れたら!そのお茶のせいで席を立っている間に業務に大きなトラブルが発生したら!そのお茶で大けがしたら!などなど、予想外の事件に発展することだってあるかもしれない。

 

他にも、会社へのクレームがあったとする。自分の業務外の製品についてのクレームだった。自分の守備範囲外の案件は「知らない」から、本当にそう答える以外術がない。親切にしたくとも、そもそもわからないから対応することができない。そこでぐずぐず担当外のことで文句言われても、「なんで私にそんなことを言ってくるんだ!」と逆に強気でNon!と言いたくなってくる。もしフランスの境界線の概念がわかっていれば、もう少し気楽にトラブルすら楽しめるようになるのかもしれない。

 

日本は社内の暗黙の了解みたいなものにより、若手に雑務が集まる傾向があるが、フランスはそのあたりの線引きがハッキリしているから、「しりません」「できません」など、はっきりとNonと言うことを知った。なるほど、私も毅然とした態度で一度言ってみようかな。

 

本書の中で一番印象的だったのが、義家族への呼称だ。義母や義父のように配偶者の家族を指す際には「義」という文字を当てはめるが、フランス語ではbeau/belle、英語で言うところのBeautifulを使うのだそうだ。著者は日本語では美母とか美父と書いており、それがものすごく愛らしい。美母とかだと「渡る世間は鬼ばかり」も少しやんわりムードになるのかも。

 

さて、週末は和菓子にあった読書がしたいな。楽しみ。