Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#502 地域に根差した百貨店~「幸腹な百貨店」

『幸腹な百貨店』秋川滝美 著

地方百貨店と街の復興のお話。

 

蔓防も明け、年度末らしい忙しさとなって来た。都内の桜もそろそろ咲きほこる時期、早く落ち着いてゆっくり春を楽しみたい。

 

さて、著者の作品は『居酒屋ぼったくり1 (アルファポリスCOMICS)』を読んだのが初めてで、次にこちらの時代小説を読んだ。

 

 

何となく軽いお話が読みたくなり、本書を読む。舞台は名古屋から電車で移動できる距離の東海地方のある都市。駅前ではない場所にある地方百貨店では、時代のせいかどんどんと売り上げが落ちていた。この百貨店のみならず、街自体がどんどんと繁栄から遠ざかっているような感じだ。

 

高橋伝治は五代グループにて百貨店の事業部長を務めている。もともと伝治は五代グループの人間ではなかった。堀内百貨店という地方に数店舗を持つ会社に勤めていたのだが、堀内百貨店が本店のみを残すだけとなるほど経営状況が落ち込んだ時、五代グループに吸収合併された。

 

地域に根差した百貨店と言う特徴があったため、名前はそのままに、五代グループにて経営を行っている。経営母体が変わった今でも、堀内百貨店の状況は好転には至らずにいる。ある日、伝治は名古屋から懐かしい堀内百貨店を訪れた。もともとここで店長まで登りつめた伝治であったので、思い入れはある。ところが今や若手のスタッフにはやる気も見られず、世代差を感じてしまう。

 

長く堀内百貨店に勤める優秀な後輩のみが頼みの綱だった。どんどんど社内で堀内を閉店させようという話があり、あせる伝治は後輩たちに事情を話す。そして堀内に何度も通ううちに、周辺の街の様子や地域復興の活動などに触れ、堀内百貨店のみならず街の復興にまで話が大きくなった。

 

タイトルが「幸福」ではなく、お腹を指す「幸腹」となっているが、1巻目では行きつけのイタリアンと割烹が出てくるのみて、今までの作品のように料理の話題が豊富というわけではない。

 

本作はシリーズになっており、1巻目を読んだだけではその後堀内百貨店がどうなるのかまではわからないが、現在6巻まで出ているところを見るとこれからも続いていくのだろう。ひとまず私は本作はここまでとし、もし続編がセールになることがあれば読んでみようかなと思う。