Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#466 ダメ経営者の見本です~「下り酒一番2」

『下り酒一番 (2)』千野隆司 著

今度は次男が難題を。

 

去年、シリーズものの1巻目を購入し、面白かったら続きも読もうといくつかの時代小説を購入していた。その中の1冊がものすごく面白くて早速残りの全巻を購入したのだが、これまたKindleの沼に沈んで発掘できず。すっかり忘れていたところ、昨日ふと日本酒の話が出た時に本シリーズのことを思い出した。

 

 

ちょっと時間が経っていたので巻頭の登場人物の紹介をちゃんと読み、1巻目の感想を読みなおし↑、早速2巻目を読み始める。

 

この小説の共感ポイントというか、「いいね!」ボタンがあったら連打したくなる部分は主人公の卯吉の勤め先である「酒問屋武蔵屋」のオーナー一家がいろんな意味で最悪すぎて、それをカバーする部下たちのがんばりが目に浮かぶところだ。

 

昨日ニュースを見ていたら、嫌いな上司の特徴ランキングというのがあった。

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卯吉にとって武蔵屋は父の立ち上げた店だが、妾腹の子だ。今は正妻とその息子が武蔵屋を切り盛りしている。いや、切り崩しているというところだろうか。血縁でありながらも卯吉は店で小僧と変わらない扱いを受けるが、正妻の息子1と息子2は武家から嫁いだ母親に頼りっきりで、その上商才もなく、店は傾く一方だ。まさに上のリストにあるもの全部が含まれており、加えて「部下の手柄を自分のものとする」という点も加えなくてはならない。

 

部下の手柄を自分のものとするという意味で、もう一人厄介なのが同心の田所という男。卯吉の幼馴染の寅吉はこの田所から十手を受けており、町人から金をせびるだけの同心にうんざりしている。ああ、わかります。だってうちにもいますから!

 

卯吉の母親はすでに鬼籍に入り、残された母方の血縁としては実弟の茂助がいる。茂助は祈祷師として旅をしながら暮らしている。2巻では茂助の活躍も素晴らしい。茂助の先を読む力や決断力や行動力こそ卯吉の強さの支えになっている。

 

卯吉は今回、新しい酒を扱うこととなった。廻船問屋の推薦で味をみた稲飛という小さな造り酒屋の商品でまだ無名に近い。六甲の豊かな水のおかげですっきりとした味わいが特徴だが、灘の下りもの同様大変高価だ。しかし卯吉はしっかりと軌道にのせ、今では武蔵屋を代表する酒に育ちつつある。

 

そんな傍ら正妻の息子2は分家させてもらった店で事件を起こす。武家に取り扱ってもらいたいがために借金の保証を受けるのだが、利子の膨らみ方が尋常じゃない。いつもなら早々に本家の母親に泣きつくところだが、「一人ですごい契約取った!」と褒められたいという欲が先に立ち、なかなか失敗を認めない。早い段階で本家に助けを求めていたら大事になる前に解決できたものを、怒られたくないという気持ちからか払えない代金になってやっと本家に出向いた。

 

もちろんこの息子2の起こした不祥事の後始末をしたのも丑松という分家の手代と卯吉たちだ。どうしようもない上司を持つと部下がよく育つ。とはいえ、この武蔵屋はひどすぎる。そもそも見栄が判断基準なのでどんどん状況は悪化し、卯吉の凛々しさが引き立ってしまう。卯吉に対するひどい仕打ちが続くせいか応援したい気持ちがどんどん高まり、一つの山を越すたびに「よっしゃ!卯吉!」と感情移入してしまう。

 

社内の上の人間に不満を持っている私にはスカッとする展開。