Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#443 家計の管理で社会を把握~「羽仁もと子著作集 第9巻 家事家計篇」

羽仁もと子著作集 第9巻 家事家計篇』羽仁もと子 著

家計のやりくりを学ぶ。

 

新年あけましておめでとうございます。

本年度も日本にとって多幸な一年となりますように。

 

一年の計は元旦にあり、ということで我が家は三が日はお金を使わない習慣が続いている。もともと商家だったこともありこんな家風なわけだけど、学生の頃などは初売りにも行きたい、バーゲンにも行きたいと不満たっぷりだった。自分で稼ぐようになってからは何となく理解が行くようになったと思う。今はネットショッピングも楽にできる上に品物の到着も早いから不便を感じなくなっただけかも。でも福袋は惹かれます。好きなメゾンのお菓子の福袋とか、キッチン雑貨の福袋とか、化粧品とか食器とか、あと1日自制しなくては!!!必死に「感染を避けよう!Stay Homeだ!」と自分に言い聞かせているところだけど、今年は書店に走ってしまいそうだ。

 

さて、年始にあたりこの本を読んだ。著者は明治、大正期に活躍した方で婦人之友社を創立した方だ。年末に掃除関連、お金関連のことを調べている時に知り、早速購入した。著作集となっており、購入したのは9巻目の「家事家計篇」のみ。買ってみようと思ったのはこの本でもバイブルとして扱われたから。

 


江戸時代が終わり、明治期は海外の思想や習慣がどっと日本に入って来た時期だ。本書でもアメリカ、フランス、イギリスで生活した人たちによるライフスタイルに関する海外の風習が紹介されている。江戸っ子は宵越しの銭は持たねえ!と床下の甕に小銭を貯める程度だった。それでも町人には帳簿をつける習慣があった。ただそれは商売に限られることで一般家庭の収支で帳簿を用いることは少なかったのではないかと思う。

 

そこへ登場したのが羽仁もと子家計簿だ。表紙も超シンプルでこの形態が長く続いている。

 

この家計簿は1904年(明治37年)に創刊され、令和の今まで長く続いている。なんと戦時中にも続いていたというのがすごい。当時の日本人の家計のデータを取るにも役立ったという背景もあるらしいから、かなり完成度の高いものだったのだと思う。

 

本書はこの家計簿を使っているという前提で書かれているので、日頃ざっくりとExcelで家計簿をつけている私には、まず「細かいなあ」という印象が強かった。年始には必ず1年の予算を立て、年→月→週→日とダウンキャストしていくのだが、予算の項目もかなり細かい。

 

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例えば「食費」は口に入るもの全部を考えていたが、本書の中で「副食費」という言葉が多用されており「なんだこれ?」となった。どうやらこの家計簿では調味料と米は別カウントで、それ以外が該当するらしい。

 

本書ではこの家計簿を用いることで、主婦が一家のお金のやりくりを効率的に導き、さらには生活も同時に管理するということができると説いている。決してその日暮らしにならないように、一家に万が一のことが起きても生きていくことができるように。例えば、貯金は年にかかる費用の1年分はしっかり持っていなくてはならないと言う。もし夫の仕事が無くなったら?給料が減ったら?病気になったら?そんな事態に慌てることなく対応するためだ。

 

たしかに貯金には目的が必要で、例えば「老後のため」という目的があるにしても「では1年に使うお金はいくらだろう?」ということがわからなければ江戸時代の床下貯金と変わらない。学業のため、家を買うため、夢を叶えるため、家族の健康のため、いろんな理由があるなかで「目標」をクリアにするには現状把握が大切なのかも。本書を読んで家計簿買っちゃおうかなという気になりましたよね。

 

そして家の管理についても身を引き締められるような助言が多い。私が本書を購入するに至ったきっかけは掃除関連の本からだった。掃除の管理については「主婦日記」というもので管理したようで、家のことをまとめるノートと言う感じだろうか。明治頃は家に女中さんがいたり、ガスや電気ではなく炭で調理したりと家庭の有り方は変わっている。

 

本書で触れられていることで改めて感じたことは、気候の違いもあるが日本の昔の家は障子や襖1枚で部屋を区切り、通常は開けっ放しで暮らしていたからプライバシーは皆無に近い。しかも「うさぎ小屋」と言われるくらいに狭い。明治時代に欧米に出た人たちは、欧米の住宅は壁で一部屋一部屋が区切られていることに驚いたとのこと。靴を履く脱ぐの違いのほうが驚きでは?と思ったが、この区切られた空間というのは確かに驚きに値するかも。

 

「区切る」という欧米の考え方は空間を区切るだけではなく、時間や、人との関係などにも影響を与えていたのかもしれない。その哲学が日本に入って来たことで明治は一気に変わるわけだが、洋服にしても帯で1枚の作りのものを留める着物とは異なり上下で分かれていたりとか、ポケットがあったりとか、当時の日本人は「なんと効率的!」と思ったことだろう。当時、盛んに読まれた本として『簡易生活』という本の話がでてくる。シャルル・ワグネというフランス人の書籍を翻訳したもののようだ。現在は和訳は販売されておらず、英語版があるようなので読んでみようかと思う。

 

 

明治の人たちにすれば強烈なライフハック本だったのではないだろうか。そもそも椅子とテーブルを知らなかっただろうしね。「区切る」=合理的、効率的という考え方が生まれたのは明治期なのかもしれない。こういうことを一つ一つ学ぶとより歴史に関心が出てくる。明治の合理的に過ごそうというブームが一気に日本に西洋風のライフスタイルを持ち込み、大正期にはモダンが流行り、そして昭和に突入する。戦争があり、何もなくなったところから復興し、世界にならぶ経済基盤を得たはずがバブル崩壊。その後なんとか盛り返しつつある私たちだが、学生時代には「歴史なんて!」とあまり興味を持てなかったのに自分の身近なトピックに置き換えると俄然歴史が好きになる。

 

目指すところは茶室のような整然とした空間で、明治のこの時期ですら断捨離の話が出てくるのが面白い。断捨離という単語ではなくて、「物持ち主義」と言っている。物がたくさんあって整理整頓が出来ていないという状態のことだ。逆にミニマリストは「一張羅主義」。物が多くては片付かない。じゃあどうする?単純明快で「買わない」という答えだった。

 

著者の「家」で起きることの全般に関する考え方は明治時代にしてすでに完成されたものがあり、今の世でも十分に通用すると思う。今までは『楽しく、貯まる「づんの家計簿」 書きたくなるお金ノート』を参考にルーズリーフとExcel表で管理していた家計簿を婦人之友社のものに変えようかな、という気になっている。うーん。3が日だけど家計簿なら消費してもいいかな?図書カードあるしね。