『白昼の悪魔』アガサ・クリスティー著
ポアロシリーズ第24弾。
ちょっと勢いをつけて一気にアガサ作品を読み進めようと思っている。本にも音楽にも季節感があるような気がするのだけれど、推理小説というのはもしかすると冬に向いている?と思うようになってきた。暑い時期に読み始めたけれど、その頃よりも秋めいた今のほうが読むテンポが速くなってきているように思う。気のせいかな?
さて、基本情報はこちら。
Title: Evil Under the Sun
Publication date: June 1941
Translator: 鳴海四郎
今回の翻訳は鳴海四郎さんで、英文学者かつ翻訳者とのこと。特徴は、やたらとカタカナが入ってくること。やはり翻訳者さんが変わるとポアロの口調も変わり、なんだか今回はやたらと女性口調だったり、大胆だったりと統一感の無さがまたもや気になってしまった。カタカナ、こんな感じ。
ア、 ご存じなかったですか?
あア!これはこの辺デヴォン州独特のものです。
ここでひとつ、よオく思い出していただきたいんだが、
これがテンションを下げてくるのでちょっと読みにくかった。
翻訳面でもよくわからなかった場所が一つあり、原文を探して理解したところが1か所あった。
「セックス・アピールだよ」と少佐。「それだよ、イットというやつだ」
原文を確認してみると、
‘It’s IT, my boy,’ said the Major. ‘That’s what it is—IT.’
美人の登場にみんなが関心を持って彼女を見ているが、ポアロはそれを一蹴し「美しさに目を奪われて彼女を見ているわけではないはず」と主張する。それを受けて少佐が言った言葉なのだけれど、「イット」がよくわからなかった。文脈を見ると下ネタを遠回しに言っているような状況だと思うけれど、「イット」はなぁ。
ストーリーも最初からどこか既読感があった。調べてみると『死人の鏡』という短編にある「砂に書かれた三角形」にプロットが似ている。
ポアロは8月のホリデーをイギリス南部の島で過ごす。そこには数人の旅行客がおり、みなそれぞれ退屈したり楽しんだり、それぞれの時間を過ごしていた。そこに元女優という女がやって来て、旅行客の新婚夫婦の夫を誘うかのようなしぐさをする。そこから事件が発展するというものなのだけれど、「砂の上の三角形」と事件の起こり方も、アプローチもそっくり同じで読み始めてすぐに予測ができた。まるで過去問をすでに解いた後で類似問題に取り組んだような感じ。
地方での話なので、ジャップ警部などおなじみの登場人物はなく、ほぼ初登場の人たちばかりなのに、短編を読んでしまった人には答え合わせのような読書になってしまうかも。
評価:☆☆☆
おもしろさ:☆☆
読みやすさ:☆☆