Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#372 ドレッシング、オニオンはたしかに美味しいと思います~『左遷社員池田 リーダーになる』

『左遷社員池田 リーダーになる』鈴木孝博 著

食品会社の承継によるトラブルにどう対応する?

 

あまり機械が得意ではないので、パソコンでトラブルが起きるとあわあわとしてしまう。きっと得意な方にとっては一瞬で解決できるような出来事だと思うけど、苦手側としては何から手を付けるべきかが全くわからない。検索しても出てくる単語がわからないし書かれている内容も全く理解できない。購入してまだ1年くらいしかたっていないのに「仕方ない、買い替えるかな。」と斜め上の方向に解決しようとしてみたり。

 

今回の在宅勤務の間、NetflixやHuluで海外のドラマを見ていた。リスニング力がアップした実感はあるけど、その時間に他のことができたのでは?と思ったりもする。完全にパソコンで起きた面倒から逃げる行き先がドラマだったのかもしれない。おまけに読書の時間も削られて、読もうと思っていた仕事の資料などがテーブルに山積みされたままだ。とにかくパソコンをどうにかせねば!とやる気を出したのはいいけれど、途中で飽きてまたAmazonを見たり、結局トラブル解決には至っていない。

 

Amazonを見ながら、この間経済関連の小説が面白かったので他にももう少し読んでみようかな、とランキングをチェックした。その中でPrime会員が無料で読めるものに本書があった。

 

左遷社員という単語に惹かれたわけだが、左遷とは言っても子会社や関係会社や有閑支店への出向とかではなく、新設された謎の課への異動だった。とはいえ、メンバーは池田一人だったので左遷と言えば左遷。池田の勤めるフリージア創立者である大山の他界により、銀行勤めしていた娘婿が2代目として舵を取ることとなった。大山の右腕として創業当時より共に歩んできた副社長の近藤も、2代目への移行時に退社の道を選んでいる。新社長の白川はMBAを取得しており、片腕としてコンサル経験のある後輩を引っ張ってきた。そこからフリージアがおかしくなる。

 

まず、池田の左遷の理由は、白川主導の経営改革において先代のビジネススタイルに傾倒する社員が社内に影響を与えさせないようにするためのもので、池田は副社長にかわいがられていたし、仕事のできる橘は脅威として子会社へ出向となった。

 

フリージアはドレッシングを作る会社として神戸で生まれた企業で、会社が大きくなるに従い東京に本社を移している。左遷された池田だが、上場の準備をするという仕事が与えられ、まずは社史の編纂と社内報を作るというタスクが与えられた。メンバーもいないので部屋でたった一人あれこれ考えを巡らせていると、掃除の人が部屋に入ってくる。それがなんと前副社長の近藤で、身を隠して池田の前に現れた。裏の流れを知る近藤がフリージアのためにと池田を導き、育て、会社を正しく導くというストーリー。近藤は声が出なくなってしまったらしく、交換日記のような形で意思疎通を開始する。

 

今の日本で経済小説のトップと言えば池井戸作品が挙げられると思う。半沢直樹のようにスケールも大きく、悪役のキャラもたつ作品はストーリーに動きもあって読んでいる時のハラハラ感も、読み終わった後のスッキリ感も格別だ。本作はそういう意味ではちょっと薄いかなと思う。初めて「会社とは」を知る人には楽しめる内容になっているかもしれないけれど、30代を過ぎ、社歴を重ねたビジネスパーソンには物足りないと感じられるかもしれない。

 

とはいえ、社長白川のようにバカげた理由で会社を私有化しようとしたり、自分の都合の良いように会社を使って利益を吸い上げようとする人が出てきたりというのは、実際に有り得るのかもしれない。保身のために上に意見をしない管理職なんていっぱいいるし、やる気ゼロの人もかなりいる。フリージアのように意識高い系の社員ばかりいる企業なんてあるのだろうかという疑問も残るけど、仕事が楽しすぎる!というのはビジネスパーソンなら心底「羨ましい」と思うのではないだろうか。そんな会社を作るために、本書のパターンは相当ゆるいけれど「こういう例もありますよ」としてさっくり読むには良いかもしれない。

 

タイトルにあるように、池田は近藤からの遠隔指示により会社を救るのだが、いきなりぽんぽんと出世して、そこはちょっぴり謎だった。最後にはいきなり副社長になっているのだが、出世街道についての詳細は記されていない。

 

ところで、ドレッシングの会社なので料理の話がちらっと出てくるのが面白かった。淡路島のたまねぎを使い、地場密着のドレッシング作りの話が出てくるのだけれど、普段たまねぎを食べない私でもオニオンドレッシングはかなり好き。