Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#340 藍色の美しさに惹かれます

 『あきない世傳 金と銀(11)』高田郁 著

藍染はどうなる。

 

この頃すっかりポアロ三昧だけれど、時代小説もやっぱり読みたい。特に高田郁さんの作品はワクワクしながら次の作品を待っているので今回も発売日に近くの書店で購入した。それにしても都内はあまり人の流れに変化が無いような気がする。出勤日だったので時差出勤で6時台の電車に乗っていたのだけれど、オリンピック前後で大きな差があるようには思えなかった。ただ、東京駅周りは少し人の出が無かったように思えた。

 

さて、本書あきない世傳だ。10冊目が2月の発売だったので、半年に1冊とかなり早いペースで作品が生まれている。純粋にすごいなあと感動。

 


 五鈴屋は主人の幸の突出したビジネスセンスで毎回大きなトラブルを一同で乗り越えている。もともとは貧しさから幼くして五鈴屋へ奉公に出た幸だが、父親が学者であったせいかとても聡い子供だった。五鈴屋では下働きの女性はお竹どん、お梅どんのように「松竹梅」の順に名前を付けていたけれど、幸がその伝統を踏襲せずそのまま「幸」を名乗ることになったのは、お家さんが早くから幸の才能に目を付けていたからだろうなあと今になって思う。

 

さて、今、五鈴屋に何が起こっているかと言うと、大阪本店は呉服屋でありながらも、江戸店は呉服を扱えなくなった。今後は木綿などの太物しか扱えない状況に陥ったことから営業戦略を大きく変更せざるを得なくなり、今まさにその大きな賭けとも言える新たな戦略を仕込んでいるところだ。さらには五鈴屋の成功をねたみ、店を我が物にしようとたくらむ音羽屋の存在もうっとうしい。姉を慕って五鈴屋に来た妹の結が、その敵対する音羽屋へと背信とも言える婚礼をしたことから五鈴屋の面々は傷を負った状態だ。

 

紺屋という仕事がある。染め師のことで、着物を鮮やかに染めていく仕事だ。日本の藍は美しく、深みのある落ち着いた色味は日本らしい色と言えるのではないだろうか。ネイビーともちょっと違う。紺色や藍色はダークな色でありながらもどこか華やかで凛とした色だ。だからこそ制服やスーツに愛用されるわけだけれど、紺色が似合わない人はいないと思う。とくに袴などにすると色の深みが心に染みる。そんな日本に馴染む夏の夜のような美しい紺色、藍色は江戸の頃に発展したのだろうなと思うと感慨深い。11巻目も藍染の美の道が見えるようで思わずのめりこんで読んでしまった。

 

やっぱり時代小説はいいなあ。この頃推理小説ばかり読んでいたせいか時代小説の言葉選びや心の機微が特に心の栄養となった気がする。