Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#334 ついに8弾目にして王道来ました。オリエント急行乗ってみたい。

 『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティ

ポアロシリーズ第8弾。

 

本当に北海道でマラソンなんてやって大丈夫なんだろうか。30度超えの日々が続いているようだけれど熱中症がかなり心配だ。しかし本当にオリンピック開催したんだなあと感慨深い。とはいえ、オリンピックの影響か都内の感染者は増加の一途で、緊急事態宣言下でも通常勤務が続いていた私の勤め先もついに在宅勤務を導入するほどだ。しばらくは家での作業となるので、仕事がサクサク進みそうな予感。

 

それにしても、在宅勤務で仕事をさぼっている人は私の周りには非常に少ない気がする。というより、大手はサボれないシステムがたくさん組まれており、リアルタイムで「あいつ今さぼってんな」っていうのが見える化されている。さらには日々の業務報告もより一層厳しくなり、それをチェックする管理職も仕事が増えているので作業量はむしろ増えていたりも。私の場合はそこまで立派なシステムを組める会社に勤めているわけではないので、単純に話しかけてくる人が少なくなること、時間のコントロールがしやすいことくらいがプラスで、加えて自己啓発的な勉強時間を確保したいと思っていたことが実現できそうで嬉しいくらいかな。

 

さて、思わず「ついに来た!」とタイトルだけでもワクワクなこの1冊。アガサの作品の中でも代表作として挙げられるし、映画化もされている。まさかこんな初期の作品だとは思ってもいなかったので驚きとともに読み始めた。

 

ポアロは今回一人で旅をしている。今まで何度か親友として登場しているヘイスティングズは今回名前すら登場せず、今までとはちょっと異なった推理の場面となった。

 

そもそもオリエント急行は今でも現役で誰もが知っている「豪華な汽車の旅」の代名詞とも言える存在だ。乗車にあたってはドレスコードもあるというから本当の意味での紳士淑女の世界が広がっていることと思う。一度は乗ってみたい憧れのオリエント急行だが、誰もが気軽に利用できるものではないようだ。

 

Wikipediaによると、ポアロの乗った1930年代のオリエント急行のルートはこんな感じ。ポアロアレッポからイスタンブールへ移動し、そこからフランスのカレーを経てロンドンに帰る予定だった。

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本当はイスタンブールで数泊の予定だったけれど、ロンドンから電報があり急遽宿泊を取りやめた。そのホテル、どうやらこちららしい。

 


帰途の予約に走るポアロだが、冬の閑散期のはずなのにオリエント急行のコンパートメントは満室だという。ところがそこへベルギー時代の友人でオリエント急行のオーナー会社の役員というブック氏が現れて難から救ってくれた。なんでもいつも1等の1部屋だけは緊急事態のために必ず空けているらしく、そこをポアロのあてがおうということだった。

 

けれど、ブック氏と共に駅に着くもなぜか必ず空いているはずの部屋も満室。2等すら空きが無く、たまたま乗り遅れた等の部屋にどうにかすべりこんでの出発となった。2等は2名での使用なのだがポアロアメリカ人の秘書と同室となる。ひとまず難なく進み、途中でアテネからの寝台車が連結されたことでポアロはブック氏の使っていたコンパートメントに移り、ブック氏はその連結された新しい寝台へと移ったのだが、そこで事件は勃発する。

 

コンパートメントが満室設定なので登場人物が今までの作品よりも多めでそれぞれみんな影の有りそうな、無さそうな微妙さを醸し出している。さらにはもう一難、汽車は当時のユーゴスラビアのヴィンコヴツィあたりで雪のために立ち往生してしまった。雪山に突っ込んでしまったという。汽車の中という密閉された空間で、どこにも行くことができないような状況下での事件となると電報も使えないし警察から情報収集もできないわけで、ポアロの推理は困難に陥るのだけれど、それを限りなくスマートに終わりに導く手腕がお見事!なるほど、アガサファンがこぞって上位に押し上げる作品だけあると思った。

 

本書にも冒頭にアガサの甥っ子さんのメッセージが添えられており、本作が実際にアメリカで起きた幼児殺害事件とアガサが雪で立ち往生したという経験をヒントに書かれているものとの解説があった。

 

今でも汽車の旅に魅力を感じる人は多く、汽車がテーマのミステリーはこの作品からスタートしてるのかもと思わせるような奇抜さと安定感があった。最後まで一気に読んで、読み終わった後も種明かしの種を確認するためにもう一度読みたい!という気持ちにさせる一冊。

 

基本情報はこちら。

Title: Murder on the Orient Express

Publication date: February 1934

Translator: 山本やよい

 

翻訳者の山本さんは1947年生まれで、同志社大学文学部英文学科卒。翻訳作品も多く、最後までぐいぐい読者を引っ張るようなとても読みやすい訳だった。このところ7冊目までのポアロのキャラの飛びっぷりが気になっていたけれど、この翻訳は思い描いていたようなポアロ像が見られたこともあり、読書が本当に捗った。

 

評価:☆☆☆☆☆

おもしろさ:☆☆☆☆☆

読みやすさ:☆☆☆☆☆