Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#326 ポアロシリーズ第3弾にして読み応えのあるスゴいの来ました

 『アクロイド殺しアガサ・クリスティー

ポアロシリーズの第3弾。

 

待望の連休スタート。去年は在宅勤務が多かったせいか体が緩い感じでコントロールされてしまったような気がする。今年の春から時差勤務をしているけれど、同じ労働時間でも出勤しているほうが疲れがどっとでるのはなぜだろう。移動時間?対人関係?環境?在宅のほうが仕事はかどっていたような気もするのは気のせいだろうか。

 

さて、今のところ良いペースでアガサ・クリスティーで夏を満喫しているのだけれど、この連休の間にたまりにたまっている紙の本も読まなくてはなと思っている。紙の本は置き場所の問題があるので時々入れ替えをしているのだけれど、料理関連本は永久保存としてもファッションやインテリアの本は時々古く感じるものは処分していかないと小さな部屋に置くところがない。本当に切実な問題なのです。ひとまず、本棚以外の場所にある本をどうにかしたい!それもこの夏のうちに!とまたもや夏に大きな目標を立ててしまった。

 

さて、第3弾目の基本情報からおさらいしたい。

Title: The Murder of Roger Ackroyd

Publication Date: June 1926

Translator: 羽田詩津子

 

クリスティ文庫以外はちょっとオブラートに包んだようになっていて「殺し」ではなく「殺人事件」となっている。2弾目が「ゴルフ場殺人事件」なんだから同じような感じでもよかったのでは?と思うけれど、このタイトルも読了後では「そうだよね、タイトルからして只ならぬものがあったもの!」と絶賛してしまうほどにとにかく面白かった。

 

舞台はKing's Abbotという田舎町でこちらも架空の街のようだ。リバプール行きの電車が出ているところで、それ以外には特に何もないような本当にごく普通のイングランドの田舎町を思わせる。そんな田舎になぜポアロがいるのかというと、友人のヘイスティングスがなんとアルゼンチンに行ってしまったとのことで、ひっそりと引退生活を送るために選んだ土地がこのKing's Abbotだったとのこと。

 

ここでヘイスティングスの不在ということで、語り手はどうなる?問題が現れるのだが、今回はたまたまポアロが借りた家のお隣に住むシェパード医師が勤めている。探偵と医師のコンビと言えばまさにホームズとワトソン!それだけでもテンションのあがる読書となった。

 

田舎町にはありがちなことで、特にイギリスの1900年代初頭をテーマにしている作品だと噂話というのは必ず出てくるキーワードのように思う。情報通のおばちゃんがいて、退役軍人がいて、教会があってというのが定番中の定番だと思うのだけれど、今のところクリスティの小説3冊の中では教会は登場していないように思う。

 

このシェパード医師の住むKind's Abbotもそんな街の噂話以外に娯楽のない田舎町だった。タイトルになっているアクロイド氏は地元の富豪で初婚で連れ子のいる女性と結婚するも、妻に先立たれて連れ子を自分の子供の様に愛を注ぐ。そしてカナダへ渡った氏の弟が亡くなり、未亡人と姪も氏のもとへ身を寄せている。そんな中で殺人が起こるというお話。

 

余り多くを書くとネタバレになってしまうのでプロットはここまでに。それにしても第3弾にしていきなりすごいの来た!と読了後の満足感が半端なかった。読み進めていて全く予測ができなかったし、なにより綿密さが増しているのがまたすごい。手品を見た後のような、見た目と味の差が大きな不思議な料理を食べた後のような気分になった。

 

原文で読んでいる人ならば読み進めながら各所にちりばめられたヒントに気が付いたのかもしれない。翻訳文もすんなり読み進められるのだけれどスイスイとストーリーにのまれて読み進めてしまい、読み終わって「もしやあれは!」と後になって手の内に気が付いてしまうような構成になっている。いったいどうすればこんな裏をかくようなストーリーを思いつくんだろうというくらいに秀逸。

 

翻訳も大変読みやすく、2弾目とは違いムッシューの繰り返しもなく、フランス語のところもちゃんと和訳の横にフランス語が記入されていた。強いて言えば、3弾目ではmon amieを「わが友」と訳しているけれど、1作目は「モナミ」と訳していたので気になったくらいだろうか。後半ではモナミになっているところもあったように思う。

 

翻訳者はお茶の水女子大学英文学科を卒業後、20代から翻訳の世界に入られたとのこと。年に2~5冊の翻訳本を出版しておられるようで、推理小説の分野が多いようだ。今まで3冊がすべて違う翻訳家なのでなぜ同じ翻訳家さんにお願いしてないのかな?という素朴な疑問が残る。

 

この本ですっかりアガサワールドに取り込まれてしまった。シリーズ完読したらもう一度読み返してヒント探ししたいと思う。原語でも読みたいな。

 

評価:☆☆☆☆☆

おもしろさ:☆☆☆☆☆

読みやすさ:☆☆☆☆