Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#285 美しすぎるレシピ本。むしろこれはアートです。

ヴィーガン・レシピ』 米澤文雄 著

とにかく美しいヴィーガンレシピ90品。

 

 

どういうことだろう。Amazonでのリンク検索が昨日に引き続き上手くヒットしてこない。ということで、今日も楽天のリンクを貼ってみた。

 

今日は早速本題に入りたい。今まで購入してきたレシピ本はたいてい2000円程度で購入できるものが多く、多くの場合には2000円あればおつりが来た。本書は2800円とレシピ本の中では割と高額な本だが、手に取って納得せざるを得なかった。この本はレシピ本ではあるけれど、かなりアートのテイストを持つもので、むしろ写真集と言っても過言ではない。

 

f:id:Dahliasbook:20210516080443j:plain

 

個人的には食のスタイルとしてヴィーガンを取り入れることはないと思う。肉は別になければ食べなくても良い。でも魚を我慢するのは辛すぎる。加えて卵と牛乳とハチミツがダメと言われるとスイーツ好きには禁断症状が出るレベルで、毎朝のミルクティーが飲めないとか想像するだけで「無理」の文字が頭に浮かぶ。加えてハチミツは喉の弱い私には常備薬替わりで必須。年々ミツバチが減っているというニュースもあり、むしろハチミツを通して環境保全に関心を持つようになった。環境破壊要素となる工業用品を使うのはやめられるけれど、ハチミツはやめられない。

 

それなのに、なぜヴィーガンレシピ本を好んで読んでいるかというと、野菜が好きだからだ。幼少の頃を思い出すと、毎日の食卓に上がる一番の大皿は野菜の千切りだった。キャベツ、レタス、パプリカに季節の野菜が加わるのだが、単に千切りしただけ。それがこんもりと大皿に盛られ食卓の真ん中に鎮座していた。それが我が家では当たり前で家族4人で毎食食べていた。お味噌汁の具も野菜が多かったし、お肉やお魚がメインでも付け合わせの野菜料理が何品も加えられていた。単に家族の食の好みが野菜だったのだ。母曰く、家族全員やたらと野菜ばかり食べるので食費の工面が大変だったらしい。そんな食生活下で育ったせいか、野菜のレシピには常に関心がある。

 

話を戻そう。本書を書かれた米澤文雄さんは現在青山にあるThe BurnでExective Chefとして活躍しておられる。

 

 

もとはNYで活躍した後、日本でも有数のレストランでスーシェフとして働いた経験もお持ちだ。このレシピ本を開いた瞬間、NYの雰囲気が一瞬で広がってくる。アメリカでヴィーガンのライフスタイルを取り入れている人は健康に気を使う方、ライフスタイルや人生哲学として取り入れている方などいろいろあるとは思うが、ヴィーガンは正直申し上げてお金がないと続かないのだ。野菜は確かに自分で育てればよいのだけれど、正直いつまでも生の野菜をバリバリ食べるような食卓ではすぐに飽きてしまうだろう。そもそも肉食文化のアメリカでの菜食なわけだから、ヴィーガンにも食感やボリュームを求めてくるような気がする。

 

f:id:Dahliasbook:20210516080845j:plain

 

NYでヴィーガンレストランの常連になるような方は恐らく洗練された方が多いだろうと想像される。食を堪能する感覚も鋭く、あらゆる方面に精通しておられることだろう。よって、生半可な「美」では通用しない。見た目の美しさ、食感の驚き、味覚を満たすあらゆる工夫が必要だと思われる。NYでなくとも、ヴィーガンの食生活を長く続けるコツは共通なのではないかと思われた。五感の一つでも「飽きた」と思えばヴィーガンのライフスタイルを取り入れるのは難しいだろう。だからこそ、本書のような「美」はライフスタイルとしてのヴィーガンに自信と満足感を与えるのではないかと思う。

 

そもそもヴィーガンレシピは手がかかる。サッと焼いて、蒸して、煮て、というような簡単さではない。加えてお金もかかる。野菜は割高な場合も多いし、オーガニックにこだわればなおさら価格は跳ね上がる。歯ごたえを引き出すためにナッツ類も多用するし、調味料も魚介ベースのものは使えないのでうま味を出すための工夫に使うスパイスも多いだろう。続けるためのコツがこの本にあるように思う。

 

見た目で圧倒し、肉を思い出させないようなお腹にたまるメニューを開発し、満足感を引き出すようなレシピなわけだから今まで読んできたヴィーガンレシピ本とは一線を画する。同じレベルで語ることができないほどに美しい。白いお皿に盛りつけられた野菜メインのお料理がどれもアートのようで魅せられる。フードコーディネイトの面でも学ぶところは非常に大きく、真似て作ることができなくても見ているだけで溜息が出るほど美しい。作りたい!と思えるものもいくつかあったけれど、それ以上にただ見ていたいと思える一冊だ。こんなに美しいレシピ本が日本にあったなんて!という驚きが止まらない。米澤シェフがどのような環境のもとでこのようなレシピをお作りになられたのだろうか、海外でたくさんの学びを得られたに違いない。

 

本の構成も素晴らしく、まずは美しいお料理の写真がいくつか並び、その後にまとめてレシピが掲載されている。手順を丁寧に教えるタイプではなく、箇条書きに近い内容でさっとまとめられている。ヴィーガンメニューを作る経験のない人にはハードルの高いレシピメモだけれど、とはいえやってみたくなるほどに写真の訴えかける力が素晴らしい。

 

この本を読んで、やっぱりブレンダーとフードプロセッサーを買おうかな、と考え直しているところ。本当に読んで良かった感動の一冊。レシピ本と言うよりは美術館の作品集のようなイメージ。