Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#242 できる限りの優しさを

 『Wonder』R.J. Palacio 著

 障害を持つ男の子が初めて学校に通うこととなった。

Wonder (English Edition)

Wonder (English Edition)

 

 

巷にはあれがよい、これがよいと英語を身に着けるためのいろいろな方法が取り上げられているが、自分に合った方法はなんだろう?と考えたとき、私には多読がもっともストレスなく楽しく進められることの一つであることに気が付いた。きっかけは学習指導を受けた時、あれこれ試させられた中で最後までストレスフリーだったのが英語での読書だったことにある。(そして一番嫌いなのは語彙習得!)

 

この頃また出勤が復活し、英語でのコミュニケーションの場が増えつつあることに危機感を覚え、早速英語での読書を再開した。今の段階で気を付けていることはたった一つで、身の丈にあったレベルの本をたくさん読もう!たったこれだけ。となると、ジュニアレベルの書籍を選ばなくてはいけない。

 

学習指導では、語彙数やレベルに沿った英文で書かれたラダーシリーズというものを読まされていた。語彙数が記されている必要があったのは、語彙数と読書時間をチェックしどのくらい早く英文を読め、解釈できるようになったかを測るためだったので、こういった学習用の多読教材は自分の力量を数値化するのには役立つだろう。

 

とはいえ、内容が面白くないと続かないので、他にもPearson English Readers(昔はPenguin Readersでした)あたりから面白そうなものを見繕ってと思っていた時、おすすめ本としてこの作品があがってきた。評価も高く、早速購入。

 

主人公のオーガストは生まれつき障害を持っていた。顔が他のみんなとは異なっており、小さな頃から何度も手術を重ね、今は小学生の年齢になったけれど母親から家で勉強を教わっている。

 

ここまで読んで、もしかして?と思った。そう、これ。

 


映画『ワンダー 君は太陽』特別映像《スペシャルフィーチャレット》6.15

 

アマプラのおススメに上がってきていたので何となく予測できた。そう、この映画の原作である。

 

Wonderは実話ではない。作者の体験から書かれたものである。オーガストは5年生になって初めて学校へ通うのだが、やはり容姿が異なることからなかなか溶け込めない。しかし素晴らしい教師陣、楽しい父親、優しい母親、愛すべき姉に囲まれながら、少しずつオーガストの未来が開けていく。

 

書籍は章ごとに語り手が変わる。オーガストの時もあれば、学校の友人、姉のオリヴィア、その他周りの人々が交互にオーガストの学校生活の1年を語っている。ふと涙する場面も多く、これが映画化となればきっと大きな感動を呼ぶだろうなと思われた。

 

オーガストの通う学校の先生の贈る言葉がまた美しく、最後に胸をうつ。

 

Kinder than is necessary.

 

先生の言葉もそうだけれど、両親の愛情の深さに何度も涙した。小説の中にも登場するのだが、親が離婚するなど心に傷を持つ子供が多い。その中でオーガストの両親は何よりも子供を愛する。文中ではdeformedという言葉でオーガストを表現する場面があるのだけれど、一般の小学生にはどうしてオーガストの容姿が他と違うのかがわからない。だから辛辣な言葉を吐く。でも両親はそんな言葉を跳ね返して余りあるほどの温かさでオーガストを支えていく。

 

次第にオーガストは学校にも溶け込み、その人柄に魅了される生徒が増えていく。5年生の1年間のお話なのだが、何度も何度も危機があり、変化があり、涙した。

 

人間は大人になってもいつまでも学び成長していくものだと思っている。ただ、その成長は自覚しにくいし、進んでいるのか後退しているのかも定かではない。心の成長という意味でオーガストや両親の成長から「優しさ」は大きな目安になると思った。人に優しくあること、それが一つでも多くできたら人間は成長できているんだろうなと思う。

 

心をピュアにしてくれる作品。映画もいつか見てみようと思う。