『美貌の果実』川原泉 著
川原作品の傑作集。
こちらもおすすめ度の高かった作品で、短編が6編収められている。3冊続けて同じ著者の作品を読んだのだけれど、この作品が3作中では一番古いと思われる。
設定はそれぞれで前半の3編は鹿児島でパッションフルーツ、北海道で酪農、山梨でワイン醸造と地方の生活の中にある「テーマ」を描いている。後半の3編はちょっと特殊な環境だったり一風変わったキャラクターが活躍。
川原泉さんの作品はどの時代のものなのかがわかりにくい。例えば機械など技術の進化が現れやすいものがあまり出てこない。その時の流行の芸能人だったり映画だったり歌だったりも出てこない。強いて言えば服装が古いのだけれど、制服だったり剣道着だったりが出てきてしまうとそこもまたわかりにくくなる。一見すれば古い作品だなとはわかるのだけれど、どのくらい古いのかが全く見えてこないから不思議だ。独自の世界が確立されていて、そこに書かれている当時の「今」があまり入っていないからなんだろうなと思う。
少女マンガらしい内容でゆるりとした時が全体に流れている感がある。川原作品はそのゆるり感が特徴でそこに癒されるのかもしれない。当時オンタイムで読んでおられた方にはきっと懐かしい作品なのではないだろうか。