『英国一家、日本を食べる 上』マイケル・ブース
小さな息子二人を連れての日本取材。上巻は東京、北海道、関西編。
しばらく気になっていた本なのだが、少しお安くなっていたので思い切って購入してみた。こちらは上下巻のうちの上巻で、表紙にあるようにマイケルさんと奥様のリスンさんと金髪息子たちが数か月に渡って日本の味を知るための旅に出たというストーリーである。まだ上巻しか読んでいないけれど、あっという間に楽しく読めてしまった。
そもそも、なぜこの方は日本の「食」を求めたのだろうか。この本から推測するに、理由はいくつかある。英国でこの本が出版されたのは2010年。東京のオリンピック招致が確定する前に出版されているので、オリンピックでの日本への旅行者をターゲットとしたものではなさそうだ。とは言え、日本への旅行者は年々増えているのでまあ完全に旅行ガイドを目指していないわけでもないだろう。
思い当たることが一つある。それは、Umamiだ。うま味。今やうま味はUmamiとして海外で通用する言葉となった。寿司、てんぷら、ラーメンなどの料理名はすでにSushi、Tempura、Ramenとして堂々と海外を歩き渡っている。そのうちに和食への理解者が増え、次に具材が世界へ飛び出した。豆腐、味噌、しいたけ、まぐろ、などなど。ただ具材を調理してもなんだか物足りない。レストランの味にはならないし、今まで食べてきた食材とは異なるわけだから調理法もよくわからない。そこで調味料が登場する。味噌、酒、みりん、わさび。あっという間に外国でも通用するようになった。
少し前だけれどイギリスのラジオを聴いていたら、ロックダウンで体重が増えたので家で和食を作っていると言っていた。そしてHarumiがすごいと連呼。一瞬Harumi?となったけれど、すぐにピンときた。これだな。
一昨年ロンドンに行った時、この本が書店に山積みされていた。そして手に取っている人がかなりいた。ちょうどその頃、ロンドン西部のShephard’s Bushというところにある大きなショッピングモール内にJapane Centreという日本の食材を扱うお店が新店をオープンさせた。その名もIchibaでヨーロッパ最大の規模を誇るらしい。
とにかくモールが巨大で店舗を探すのに迷ってしまった。食材の販売だけではなく、フードコートもある。きつねうどんを食べたのだけれど、ふつうに日本の味だった。やはり食材は少し高い。輸入であったり、英国内で生産されていたとしても大量生産ではない上に一般のスーパーでも取り扱われているならともかく、アジア食材店に限られる野菜などは価格を抑えるのは難しい。とはいえ、日本に比べて物価が高い国なので現地に居ればとんでもない価格とは言えないのだろう。
Ichiba内はクリスマス直前だったこともありとても混雑していた。少なくともイギリスでは和食はヘルシーであると認識されているようだし、むしろ体に良いものと思われているようだ。私たちが洋食を日常に取り入れたように、海外でも和食が日々の食卓にあがるようになったということだろうか。
とにかく、海外の大都市では日本の食材が手に入るようになったし、日本の料理家さんのレシピ本が翻訳されたり、動画も含めれば今や和食はご自宅で簡単に作れるお手ごろさである。その中で、どう美味しく作るのか、決め手はなにか、というところで「うまみ」に行き着いたのだと思う。2000年を過ぎたあたりからUmamiとして外国でも使われるようになり、ついには出汁もDashiとして使われているようになる。
著者はフランスのコルドンブルーで学んだ方なので、世界の料理にはお詳しいことだろう。トシという友人が著者へ和食の奥深さを教えるために1冊の本を手渡した。それが、こちら。
昭和時代に書かれた本の英訳本。これを読み、著者はますます和食の謎に引き込まれたらしい。
まずはロンドンから東京へ。そこで服部料理教室 へ足を運んだり、築地へ行ったり、味の素本社を尋ねたり、あちこち足を運ぶ。そこから北海道へ行き昆布を見た後、関西へ飛んだ。京都で懐石を満喫し、和食とフレンチの違いを考えたりと和食の核心へ近付こうと必死である。
上巻はまずここまで。これからゆっくりと下巻を読んでいこう。