『ヨーロッパたびごはん』ながらりょうこ 著
パリ、アムステルダム、北欧、ロンドン、ベルリンのごはん。
この頃仕事で外歩きすることが増えた。なかなかプライベートでは行かないエリアなのでそれはそれで外歩きを楽しんではいるけれど、行く先々で日本語より中国語が聞こえてくる不思議さよ。外国で街歩きをしている人たちを見ていると、自分も外に出たくなった。
そこでこの本を購入。漫画で気軽に気分転換したい気持ちをも満たしてくれる。著者とご主人の漫画旅行日記なのだけれど、二人共美味しいものに貪欲でしっかりとそれぞれの土地の美味しいものも下調べしつつも「勘」が働いて美味しそうなお店にも入っていく。
著者は今ベルリンに住んでおられるとのことで、ベルリンから移動しやすい周辺国への小旅行となっている。ヨーロッパはそれぞれの国に美味しいものがあるわけだが、主としてじゃがいも愛が強いように思う。よく主食という概念がないと言うけれど、じゃがいもこそが紛れもなくヨーロッパ人の主食のような気がしてならない。なぜならお皿の上に供されるパンは数切れなのに、じゃがいも料理はこれでもか!というほどに盛られているからだ。しかもあらゆるメニューにじゃがいもが隠されている。
まずスタートのパリがすでに美味しそうなのだから期待が高まる。その中でパンに関するコメントで「そうだ!それだ!」と思うものがあった。
フランスのパンといえばクロワッサンやバケットがあるけれど、バケットは本当に本当に食べだしたら止まらない。以前にイベントでパリに行った際、あまりの忙しさに「簡単にすまそう!」とサンドイッチを作ることにした。バゲットにパテを塗りチーズを挟んだ簡単なサンドイッチだったのだけれど、簡単どころか余りの美味しさにこんなごちそう食べたことがない!という気持ちになった。適度な塩加減に歯ごたえがたまらない。翌日はハムを挟んで食べたのだけれど、これが数百円でいくつも作れてしまうなんてフランスはなんと偉大なんだ!と全員でサンドイッチに大興奮だった。
日本の柔らかくて甘いパンも好きだけれど、パリのバケットの食感は別格だ。例えようがないと思っていたのだけれど、この漫画で「焼き餅」という表現に出会ってしまった。そうそう、まさにそんな感じかも。
あと最近気になっているのはスウェーデンのレシピによく出てくるコケモモのジャム。Rachel Khooという料理家さんの動画をよく見るのだが、現在スウェーデンに住んでおられる。お肉料理に添えたり、お菓子につかったり。ちょっと気になっているジャムなのだが、この本にもちらっと出ていた。
しかしこの本は失敗だ。コロナ禍に読むものではない。頭の中がヨーロッパでいっぱいになってしまって余計に今の出られない境遇にむぐぐぐと歯ぎしりしたくなる。ロンドンのフィッシュアンドチップスが恋しくなり、ボリューミーなフルブレックファーストが懐かしくなり、ドイツのソーセージがどうしても食べたくなってしまう。多分まだヨーロッパは入国制限が敷かれているころだろう。ヨーロッパに駐在している友人曰く、3度目のロックダウンになるかもしれないということでアジア人に対する反感がある街もあるという。
ではこのバケットへの思いをどうするべきか。久々にVIRONに行こうかな、など現地へ行けない思いを発散する方法でむしろ頭がいっぱいになってしまった。恐るべし一冊である。