Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#145 この世界を受け入れられるのって日本人だけなのだろうか

 『聖☆おにいさん 18』中村光 著

立川でバカンスを楽しむブッダとイエス

 10月の半ば、フランスで事件があった。コロナ禍だけでもストレスのたまる日々、ヨーロッパは日本以上に感染者数も多く、実際に街も完全にロックダウンになるなど自由から遠ざかった日々が続いていることと思う。そんなかでのこのニュース。

 

日本人は宗教に対する寛容度がかなり高いような気がする。無宗教を言う人もいるくらいだし、結婚式は教会であげるのに、葬式はお寺だし、年始にはまずは神社を訪ねる。その土地の宗教に敬意を払うことは当然のことと私は思っているが、以前外国人でとある宗教の敬虔な信徒さんが「他宗教の祈りをささげる土地になど絶対に入らぬ!」と言っていた。私は礼儀を尽くす程度に「お邪魔します」的な挨拶をしたりするけれど、その方曰く、それは自身が信ずる神や信仰を軽視することにつながるらしい。日本の八百万の神様ならば「楽しんでおいで~」と見送られるような気がするのだけれど(まあ、よっぽどブラックな宗教の本拠地に行くわけじゃなければ)、世の中には信仰こそわが命という生活を送っておられる方もいらっしゃる。

 

まあ、外国の方は浅草寺に来て写真は撮ってもお参りはしないだろう。京都で清水寺伏見稲荷だ東寺だとあちこち行くけれど、お参りもしないだろうし参道の真ん中を平気で歩いてしまうだろう。

 

昔、会話に困ったときは天気の話をしろ。絶対に「宗教、セックス、政治」この3つには何があっても触れてはならないと習ったことがある。後ろの2つは文化的な側面を加えることで小説にされたりすることもある。それが映像化されることもあるけれど、宗教に関してはちょっとハードルが高いような気がするのは私だけだろうか。

 

その点、このマンガはすごい。最近は北欧神話ギリシャ神話まで登場するようになった。主人公は仏陀イエス・キリストで、そもそも二人が仲良しで一緒にバカンスを過ごすという設定自体も日本ならではなのかもしれない。実際に神々の純真さはマンガの中では「天然な人」風だし、たまに経典を面白可笑しい設定に落とし込んでいるので、これは人によっては受け付けられん!となるのかもしれない。

 

エスはゲームやドラマ大好きでブログを書いているし、仏陀スクリーントーンでTシャツづくりを趣味としている。お笑いコンビ「パンチとロン毛」も組んでいるし、大親友は背中に入れ墨の入った人だ。仏教とキリスト教をかなり自由に書いている。その自由さがむしろ宗教への距離を縮めるようにも思えるし心が軽くなる。これを読んでいるとキリスト教と仏教は仲良くできてると思えてくる。まあ最近はキリスト教徒がヨガだの禅だの言ってるし、仏教徒も喜んで海外の教会を巡る旅なんかに出かけているし。

 

けれど、この本でもやっぱり中東方面の話題はない。宗教に詳しくないので登場していることに気が付いていないかもしれないけれど、今まで読んだ中には一度も登場していないと思われる。

 

日本人にとっては良く知らないというのが本当のところだと思うし、知らなさ過ぎてマイナス感情もプラス感情も抱けない。ただやっぱりこのフランスの事件のように風刺画すら許容できないのであれば、マンガに登場なんて言うのは夢のまた夢なんだろうなという意識が働く。

 

あははと笑って世界が仲良くできたらいいのに、なんていうことを久々にこの本を読みながら考えてしまった。