Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#144 江戸時代に想いを馳せるのが唯一の気分転換になってます

『損料屋喜八郎始末控え』 山本一力 著

蓬莱橋で損料屋を営む喜八郎はもとは武士の出。町の内情を探る。 

損料屋喜八郎始末控え

損料屋喜八郎始末控え

 

 

リモートワークを終え、通常勤務に戻ってわかったこと。

 

リモートワークは自分の仕事に集中することができた。移動時間が取られない分、時間の配分もさることながら体力的にも楽だった。作業が終わればPCを閉じて一日の業務を終了させることができるので割とメリハリのある日々だった。あと、相手先がリモートワークを実施している可能性もあるので、今まで日に何度も電話でやり取りしていたことも「非常事態」によりSNSやメールを多用するようになったのもよかった。おかげでよりわかりやすい文章や資料の作成などのスキルもついたように思う。

 

メリットばかりをあげてみたけれど、デメリットとして思い当たるのは自宅に設備がないことが不便(例えば、プリンター、スキャナー、FAXなど)なくらいで、強いて言えばオフィスではデュアル画面で作業していたのに、自宅では小さな画面1つでちまちま作業しなくてはならないので効率が悪い、ということくらい。

 

そんな生活を数か月送ったのちに久々のオフィス勤務が始まった途端、業務量がどんと増えた。増えた理由は、各自の作業をつなぎ合わせる作業やノータッチになっていた部分の発覚、あとオフィスにくると人間関係というものも発生し、なんだかややこしいことに巻き込まれたりしているから。毎日12時間は会社にいる日々が続いているので、ここらでちゃんとワークライフバランスを整えていきたいと思う。

 

さて、そんな最中に気分転換になるのはやはり読書で特に時代小説には助けられている。買ったまま読んでいなかった一冊を読了。

 

損料屋というのは江戸時代では割とメジャーな業種だったのだろうか。損料屋が舞台の本はこれで2つ目だ。今回の主人公は喜八郎という窪んだ目と渋い声が魅力の元武士。上司であった与力の秋山とともに米に関する仕事を担当していた。そんな折に上司の周りで不祥事が発覚し、その責任を負って喜八郎は職を辞することとなる。とはいえ、喜八郎には一切の責任はない。喜八郎を信頼する秋山は、喜八郎が損料屋を営んでからも悪事追放のために喜八郎の力を借りる。

 

喜八郎のキャラクターは知能明晰で少しの情報から悪事の裏を暴くことができる。さらには元武士なので文武両道でとにかくかっこいい。武家は石高基準で給料を得ており、米で支払いを受けている。その禄米を礼差に売って換金するのだが、米の収穫は秋ごろと限られているので、もらう予定の米を担保に金を借りることもあった。札差の仕事はどんどんと拡大し、富を得た。

 

喜八郎は辞職の原因となった仕事の時に出会った札差と深い信頼関係を築いていた。万一自分が死んだあとに店を畳むことになった場合、息子ではなにかと役不足と喜八郎に必ず息子の力添えとなるよう遺言を残して他界した。この小説はその恩人の店「米屋」にふりかかった札差の裏工作を見抜いていく話となる。

 

推理小説にも似たような、そして札差の存在がビジネス小説にも通じるので浮ついたところのない面白さがある。しっかりと読み応えのあるストーリーなのでこのシリーズを読むのが楽しみとなった。今は4巻目まで出ているようなのでこの冬は時代小説にひたれそう。