Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#139 今年も何もしていない…と反省のさなか、時代小説を読んでやる気が出た

『幻の声 髪結い伊三次捕物余話 1』宇江佐真理 著

廻りの髪結いの伊三次は定廻り同心、不破のもとでちょっとした聞きまわりなどをしている。 

幻の声 (文春文庫)

幻の声 (文春文庫)

 

 

あっという間に10月も終わりに近づき、日の出も少し遅く、日の入は少し早くなった。どちらにしても冬が近づいてきていることを教えてくれているに過ぎないのだけれど、「ああ、この一年何にも成長してないな」と最早今年を振り返り始めただただ反省というか、愕然したというか。暗く寒くなるとどうも気分が暗くなってしまう。そこへ満を持してのクリスマスが到来し、街が明るくなるのにつられて来たる新しい1年への期待感が高まるというものだ。

 

そして元旦に気合を入れて抱負を立てるけれど思うままに進まず、4月の事業始めの時期にまた目標を修正し「今度こそやるぞ!」と思いながらもまた挫折。下半期がスタートする7月に懲りずに「まだ間に合う。よし、軌道修正だ」と目標を改め、今こうして10月もそろそろ終わるころになり、ああああああああああああああああああああああああああああああ!と情けなくなる。

 

今年はコロナがあったからと言い訳がましく自分の不甲斐なさを甘い目で見ているけれど、コロナが終息すれば停滞していたことがどっと押し寄せるだろう。今のうちにそのための体力能力気力を蓄えなくては。レベル維持どころか確実にレベルダウンしていることが自分でありありとわかるのがつらい。

 

とはいえ、今年は読書だけはしっかりまったり続いている。今までは読書時間を確保するのが難しく、主に移動時間に限られていたためなかなか読み進めなかった上に、じっくり腰を落ち着けて没頭することができなかった。このコロナ禍はそういった意味で読書の楽しみを再び味合わせてくれた。

 

そんなところに太っ腹にもAmazonで数々のキャンペーンが催され、ここぞとばかりに時代小説を読んでいる。きっと普通に仕事をしていたらこの選択肢はなかっただろうなと思う。今は文藝春秋社のキャンペーンの真っ最中でこの本は現在10巻出ているシリーズものの1作目にあたる。

 

Amazon.co.jp: 【最大50%ポイント還元】Kindle本ストア8周年キャンペーン: Kindleストア

 

このシリーズの主人公は伊三次という髪結いで、定廻り同心の御用聞きのようなことをしている。もともと伊三次は髪結いになる予定ではなかった。大工の親を亡くし、たった一人の家族であった歳の離れた姉の嫁ぎ先に預けられることとなった。姉の嫁いだ相手が髪結いで、そこで仕事を覚えつつこき使われる。跡目を作ぐ事もできないのに給金もなく働かせられるばかりだった伊三次は、ある日義理の兄に逆らい家を飛び出した。

 

出来る事は髪結いしかなく、食べるために仕方なく流しで髪結いを始めた。江戸時代、髪結いは店を構える場合と道具を持ってそれぞれの顧客を巡る場合があったらしい。しかも丁場と言って登録のようなものをせねばならず、手順を踏んで行わない限りは髪結い業を行ってはならないので、伊三次のような流しは忍び髪結いと言い、不法ということになる。

 

ある日伊三次は定廻り同心の不破の自身番にしょっ引かれるのだが、噂を聞いた実姉が伊三次が大切にしていたにも関わらず置いて行かざるをえなかった髪結いの道具箱を持ち自身番を訪れ、事情を知ってか同心の不破は伊三次を側に置くようになった。

 

伊三次には惚れた女があり、辰巳芸者の文吉と言う。この小説で「権兵衛名」というものを知った。深川の辰巳芸者は法のご法度を避けるために男名前を使ったらしい。それを権兵衛名なんだそうだ。また一つ江戸の風習を知ることができた。

 

文体もぎゅっと引き締まった力強さがあり、そこにほろっとした人情が現れるたびに涙を誘う。1冊目がここまで面白いと次も読まずにはいられない。ひとまず3冊までを購入したので続けて読んでいきたいと思う。少し凹んだ気分でいたところに人生を自分でコントロールしていく主人公たちの姿にこうしちゃいられない!と腕まくりした。