『居酒屋お夏 二、三』岡本さとる 著
行人坂を上がった所にある庶民の居酒屋で采配を振るう婆ァことお夏と清次の他、相模屋の面々が戻り始める。
結局続きを購入してしまった。ひとまず四巻まで購入したけれど、きっと続きも読みたくなるんだろうなぁと思う。基本的にストーリーはつながってはいるけれど、主要人物以外の各章の主人公は大抵読み切りでその他の章では登場しない。
居酒屋を経営するお夏はかつて神田で相模屋という枡酒屋の長女として生まれた。父は正義を何よりも尊ぶ人物で弱きを助け悪を憎むという自らの心情を店の経営にも活かしており、見えぬところで悪を成敗する。その姿に心酔した店の者も成敗に加わっていた。父の他界により相模屋は解散するが、数年を経てお夏は目黒に店を出す。そこには相模屋の清次の姿はあったが、他の面々は集っていない。
鶴吉という髪結いが唯一相模屋にゆかりのある者の行方を知る連絡網的な役割をしており、二巻と三巻で鶴吉の他にメンバーの姿が浮かび上がってくる。
正義の味方が登場する時代小説や時代劇はいくつもあるのに、どうしてまた同じようなストーリーに手を出してしまうのか。きっと成敗されていく過程を読みたいからかもしれない。なんとなく胸がスカッとするし、今や過去の遺物となりつつある義理・人情・思いやり・家族なんていうものが根底にあるからだと思う。
もしかするとこのコロナ禍で一人で過ごす時間が増えたことで、いつもより人情物を知らず知らず欲しているのかもしれない。