Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#100 児童文学は人を育てる

 『霧のむこうのふしぎな町』 柏葉 幸子 著

リナはお父さんの知り合いの住む霧の谷の町へ一人旅をする。

 

ブログを書き始めて100冊目には児童文学を選んだ。厳密には仕事で接したものなどもあるのでジャスト100冊目というわけではないのだが、節目節目には好きな分野のものを読んでいきたいと思う。

 

児童文学が好きな人はたいてい子供のころから本を読んできた人に多いような気がする。絵本はだれもが通る道で、親に読んでもらったり、兄弟姉妹で一緒に読んだり、保育園や幼稚園での読書会を今でも覚えている人も多いだろう。この青い鳥文庫や岩波の少年少女文庫は低学年、中学年、高学年とそれぞれの対象年齢が記載されており、小学校の図書館はもちろんのこと、街の図書館でも多く所蔵されている。この手の本は誰かに音読してもらうのではなく、自らすすんで読むためのものだ。年齢対象があるとは言え、もちろん大人が読んだって良い。そして昔を懐かしみつつ、童心に帰りたい時には児童文学が役に立つ。

 

各界で活躍しておられる方に読書家の方が多いという。多くの本に触れることも大切だが、どれだけ深く味わえるか、感じたことを自分の言葉で説明できるまで読み込む。読書は感性を磨くというが、確かに想像力が豊かであるからこその今の活躍なのかもしれない。

 

大人になっても児童文学を読む人たちはたいていお気に入りを持っていて、また子供のころのワクワクを思い出したくて児童文学に帰ってくるのではないだろうか。私のように。そして児童文学には多くの教えが潜んでおり、大人になるにつれ忘れかけていたことが一気に心に流れ込んでくる。

 

欧米の児童文学は文学史に影響を与えるほど深い作品も多く、児童文学のカテゴリーと文学の判別が難しいものもある。シンプルな言葉で書かれているので染みる。残る。深いのだ、児童文学は。だから好んで読む。

 

この作品はちょうど講談社のフェアをやっていた時に購入した。2006年の作品だ。この作品は講談社児童文学新人賞、日本児童文学協会新人賞を受賞している作品だ。主人公のリナはいつもの夏の旅行ではなく、お父さんのすすめで一人で「霧の谷のまち」へ行くこととなる。霧の谷はきっと岩手県にあるのだろう。電車で降り立ったまちの人々の言葉が宮沢賢治の作品に出てくるような方言を話している。霧の谷のまちは駅からずいぶんと歩かなくてはならないらしい。ちょうど耕運機でやってきたおじいさんに乗せてもらって、入り口がある山の近くまでやってきたリナはお父さんの知り合いにもらった傘とカバンを持ってまちを目指す。

 

リナがついたところはめちゃくちゃ通りにある宿だった。そこでのリナの出会いは普通の毎日では起こりえないことばかりで、リナは街に魅了されていく。このお話は冒険と友好と子供の自立がテーマとなっている。子供目線での独立とはこういうところからスタートしたな、自分の小さな頃を思い出した。

 

100冊代、一歩成長できるような書籍を読んでいきたいと思う。100冊代は秋から冬にかけての読書になると思うので、児童文学はもってこいだと思う。読書の秋に読む100冊代。これからが楽しみ。