Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#069 母親から家事を学ぶということは今や古い習慣となってしまったのだろうか

『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』有元葉子 著 

食材の扱い方を中心にお料理の基礎を教えてくれる本。

レシピを見ないで作れるようになりましょう。

レシピを見ないで作れるようになりましょう。

  • 作者:有元 葉子
  • 発売日: 2017/12/16
  • メディア: 単行本
 

 

7月は徹底的に料理に関連する本を読もうと思っている。この本はずっとずっと気になっていて、書店で見かける度に買おうかな、どうしようかな、と迷いつつも今の今まで購入に至らなかった。タイトルから受けた印象が、なぜかよくある「初めて本」かと思っていたからだ。お米の炊き方や卵焼きの作り方のような初めて一人暮らしをする人を対象とする本は数多くある。きっとそれに似た内容だろうと思っていたし、それ以外にも有元さんのレシピ本は数多く、他にも欲しい本が多かった。

 

コロナの影響でいつもはあまり行くことはないのだが、ふと近所のスーパーの中にある本屋に立ち寄った。丁度目の届く高さにこの本があり、何気なく手にとって驚いた。しっかり学んだことはないし、下手の横好きに過ぎない私だが、それでも毎日キッチンに立つし料理の本も好んで読む。有元さんのレシピ本も数冊読んだ後だったが、知らないことが沢山あった。

 

この本は読み物とレシピ本の中間のような存在である。写真は書籍の真ん中に集められているが、実際の作り方のコツのようなものはすべて文章。容量もグラム数などではなく、大さじ小さじの目安はあれども「お好みで」という感じ。

 

有元さんの年齢は公開されてはいないし、女性の年齢を詮索するつもりはないが、すでにお孫さんのいらっしゃる年齢とのこと。今でもお弟子さんや生徒さんに日々接し、お仕事をしておられる。文明の利器は料理の世界にも到来し、家電を初め道具もどんどん進化した。平成生まれには七輪の使い方すらわからないかもしれない。雑巾がけのやり方がわからないとか、畳の歩き方がわからないとか、生まれた頃からIHしか使ったことがないのでガスレンジが恐いとか、時代とともに家事の内容が変わってきていることは否めないけれど、家事に心を込め、常に背筋を伸ばして台所に立ってきた世代には、きっと今の若者のやり用に一言申したい気分であろう。

 

常に若い世代がそばにいらっしゃったことと思うので、家事の変容にもっとも気づいておられるのは料理家の皆さんかもしれない。昔は家で作るものであったのに、今やコンビニで買うものへと変化した食べ物は沢山ある。そしてその外食や中食で培われた味覚が自分の「味」となってしまうことに警鐘を鳴らす人は沢山いる。有元さんは声を大にして食育を語っているわけではないし、家事の基本は家で母親から学ぶもので料理教室や仕事場で学ぶものではないという思いがおありなのだろう。けれども、やはり「伝えなくては」という思いがお有りだったのだと思う。これが私達日本の食文化なんだ。残さなくてはならない文化なんだ。そんなメッセージがひっそりと込められていた。

 

真似したいこと、試してみたいことはメープルシロップの使い方と里芋の下準備でぜひやってみたいと楽しみになった。本当ならば、母や祖母とともに台所に肩を並べて一つ一つ学ぶべきことが、この本につまっていた。とてもとても温かい本。

 

「レシピを見ないで作れるようになりましょう」にはあと2つシリーズがあるのでこれも早速購入したいと思う。