Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#455 同心の人柄と奉行所チームワークに痺れる~「隠密 味見方同心」

『隠密 味見方同心 全九冊合本版』

魚之進の活躍、全部入ってます。

 

年末、きっといろんなセールに浮かれていたのだと思います…。Kindleの中の本を整理しようと中を見ていたら、なぜか1巻目ではなくシリーズ18巻目を買っていた作品があったり、同じ本を2冊買っていたり、小説版ではなくコミック版を買っていたりと落ち着いてショッピングしていない自分に「おい!」と叱咤したくなった。

 

本書は試しに1巻読んで面白かったら買ってみよう!と思っていたもの。

 


それでおもしろかったので3巻まで単行本で買ってあった。4巻目を買うときに間違えて9巻合本版を買ってしまったようだ。気付かずに読み始めて、「??? 波之進生きてる!なんで?…これ読んだやつだ!」とやっと間違えたことに気が付いた。最初から合本版を買えば良かったと後悔。3冊分が無駄になってしまったけれど、1巻ずつ買い足す必要がなくなったので良かったと言えば良かったんですけどね。

 

それから一気に最後まで読んだ。兄の死を追求すべく、同心となった弟の月浦魚之進。キャラクターがとてもとても良いのです!なんだろう、友達になりたいタイプの人。兄の波之進は文武両道、眉目秀麗、そして美人の嫁がいる。魚之進はそんな完璧な兄の存在にくさくさするようなちっぽけな男ではなく、真っすぐな心を持ったまま大人になった。確かに兄を超えられないと思う気持ちはあっただろう。だとしても、ひがむようなこともなく、日々釣りだの、読本だの、買い食いだのに精を出していた。虫や花を愛で、人を憎むことを知らない魚之進。

 

それが兄の死を境に人生が変わる。もともと一つのことを納得するまで考える知的な面のあった魚之進は次々と事件を解決する。南町奉行所は波之進の敵を探すことを信念としていた。魚之進にとってもありがたいことで、兄の事件を追求しつつも他の事件についても先輩方の指導をもとに急激に同心としての実力をつけていく物語。

 

魚之進の優しさがあらゆるところに溢れていて、読みながらも応援したくなる。あとは何と言ってもこの南町奉行所のチーム最高!!!お奉行様もカリスマ的存在でありながらちょっとおちゃめな所があるし、先輩たちも魚之進の仕事っぷりを認めてくれている。気持ちよく働ける職場、羨ましいぞ。

 

もっとすごいのが大物の悪者たちの心をも惹きつけてしまうところだ。死んだことになっているはずの悪者河内山宗俊にも魚之進は一目置かれていた。魚之進自身も今は名を北谷と変えている河内山を信頼している。本来同心が親しくすべき相手ではないのかもしれないのに、その垣根をも超えてしまうのは魚之進の人柄の良さのせいだろう。

 

1巻では波之進が味見方という役職に就き、何者かに狙われてしまう。2巻以降は魚之進が兄の死の真相を探り、味見方同心を継いで事件を解決する話だ。9巻でちょうど波之進の一周忌だ。

 

本作品は「隠密」シリーズだが、次に「潜入」シリーズがあるらしい!まだ続きが読めると思うとワクワクしてしまう。ああ、時代小説ってなんて楽しいのだろう!

 

#454 水色の木造二階建て洋館を守ろう!~「世田谷イチ古い洋館の家主になる 1」

『世田谷イチ古い洋館の家主になる 1』山下和美 著

旧尾崎邸の保存について。

 

昔から山下和美さんのマンガが好きで「天才柳沢教授の生活」シリーズは全巻紙版を持っている。この間インテリア関連の本を探してる時、本書がおススメの中に上がって来た。著者のお名前と表紙の水色に惹かれさっそく購入した。

 

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たしかに。都会のなかにいきなり木造の洋館が現れたら目を奪われるだろう。それが水色で西洋風な窓なんかあったら、つい覗いてみたくなるに違いない。

 

そう、この館は実在します。この家は尾崎行雄という日本の法に深く携わった方の家で、もともとは西麻布に建てられたものらしい。後に世田谷区豪徳寺に移築されたとのことだ。著者はこの洋館の惹かれたことから、この地域に家を建てることにしたというから、よっぽど魅力的なんだろうと思う。

 

 

こうして写真で見ると水色の家って緑が映えますね。日本風な木が植えられているけれど、プラタナスとかイチョウとかだったら一見「これはどこかしら?」と思うかも。あとこの門も和風だなあ。とは言え、色のせいもあるけれど、古い建物に見られるような驚ろ驚ろしい「夜は無理!」な雰囲気が全くない。明るい健全な洋館に見える。

 

歴史的建造物というのは出来る限り保存して欲しいとは思うけれど、安全性を考えた時に保全より建て替える方がベターという場合もあるから難しい。この物件も土地一体を道路にするという話があり、取り壊しがほぼ確定しかけていた。それを著者や持ち主の関係者、建築家さんなどがどうにか保存しよう!と取り組む内容である。

 

このマンガが描かれている時にも洋館には人が住んでいた。間借りしている方がいらしたくらいだから、生活できるように保全されていたに違いない。この間、新しく道路を敷くにあたり土地を売ったという人の話を聞いた。なんでも一生かかっても稼げないくらいの額がぽーんと入って来たらしいから、この洋館にもなんらかの大人の事情があったに違いない。1巻ではプロジェクトを推進する不動産業者との面談で内容が終わっているが、これがどうなっているのか気になるところ。

 

明治、大正、昭和初期に建てられた木製の建物はよっぽど手入れをしない限り保存は難しいと思う。ほぼ歴史建造物扱いされない限り、個人の力で維持していくとなるとよっぽどの資産家でなくては無理だろう。だから再開発を選んでしまう気持ちもよくわかる。

 

とは言え、古いものは壊してしまえば二度と手に入れることはできない。そっくりに作ってもレプリカなわけで、全く同じものはもう復元できない。写真や映像資料で記録するという方法もあるけれど、実物にはかなわないのは誰もがわかること。歴史的な資料としても価値があるが、アートとしてもその当時の美術が施されているわけで、やはり壊すには忍びない。絵画などはしっかり倉庫に保管できるが、建築物となると美術的に素晴らしい作品であっても保存の問題でやはり躓いてしまうのではないだろうか。

 

そろそろ2巻が出るらしいので、この後どういう流れになったのか、そして今はどうなっているのか気になるところ。旧尾崎邸は著名人が一歩動くことで大きな波が起き、保全の方向に進んでいるようだが、きっと日本各地に似たような案件があると思う。国としてすでに重要文化財になっているものだけでなく、「過去」を保存する活動にも力を入れて欲しいと思うところだ。

 

今、あの吉原が、あの鹿鳴館が、数々のお城が残されていたら!どんなに価値があるだろう!と、つい思ってしまう。そもそも都内にある100年以上前に建てられた建造物が空襲からも身を守り今私たちの目の前にあるというのは大変貴重なわけですよ。保全可能な歴史的建造物は一つでも多く後世のためにも残していきたいですね。

 

 

#453 これは完全に写真集ですよ!~「ひとりを愉しむ食事」

『ひとりを愉しむ食事』有元葉子 著

 

 

ああ、なんと美しい写真。この表紙、生け花じゃないですよ。サラダです!!

 

こちらも年末にいくつかまとめて購入したうちの一冊。買って良かった!と思える一冊だった。

 

著者の書籍は年々写真の美しさが際立っていて、本書も装丁がまるで写真集のようだ。表紙もしっかりとしていて、こんなに紙に厚みのあるレシピ本なんてめったにないと思う。内部の写真もアート風でただパラパラページを送っているだけでも楽しくなる。

 

いや、でもこれはレシピ本と言っていいのだろうか。分量がざっくりと記されており、手順の詳細は説明されていない。料理の説明はすべて文章なので、じっくり読むタイプの一冊だ。お料理教室風なレシピ本ではなく、料理好きな友達に「これどうやって作るの?作り方教えて!」と教えてもらっているような感じかな。

 

著者の年齢は存じ上げないが、お孫さんもいらっしゃるそうなので恐らく還暦くらいかな?と想像するが、今や60代はまだまだ若くてリタイア後の自由な生活を満喫している人が多い。とはいえ、心は若くも体の衰えを実感することもあるのではないだろうか。この頃の著者の本にはシンプルかつ健康的なレシピが基本で、そこに自分が食べたいと思えるものをアレンジしていくような風潮があるように思う。

 

著者は日々お仕事柄、子供から高齢者まで各世代に対応できる料理を作り、教えていることだろう。けれど仕事が終わり自宅で自分のために準備する食事はさっと手軽で胃に優しく体に適量と思えるものを食しているのではないだろうか。ただそこはプロだから、決して私の様に無骨ではないだろう。同じお茶漬けでも素敵な器、美しいテーブルコーディネイト、見た目に美味しいお茶漬けが登場するに違いない。だからこそ、こんなアート的な一冊が出来たはずだ。

 

ひとりを愉しむ 食事 | 有元 葉子 |本 | 通販 | Amazon

 

出てくるお料理は本当に本当に普通のものもあって、ファンとしては親近感が湧く。そして玄米ごはんに白ご飯、汁物、惣菜、どれも今までに出て来た本にも紹介されていたものが多いが、それぞれのエピソードがまた深い。

 

著者はイタリアにも家があり、イタリア料理もお好きなようだ。その中でよくピザのお話がでてくる。

 

ひとりを愉しむ 食事 | 有元 葉子 |本 | 通販 | Amazon

 

こんなピザ台、いいですね。私はゴム?ビニール?のパン用のシートを使って作ることが多いけれど、大き目のまな板は一枚欲しい所。

 

で、ピザです。著者はちょっと変わったピザを作る話をいろいろな書籍で紹介している。本場イタリアでいくつも美味しいピザに巡り合っておられるだろうし、チーズについても熟知しておられるはず。生ハムとかオリーブとか、新鮮な物で作ればいくらでも食べられるだろう。

 

ところが、そんな定番中の定番を思わせるピザではなく、著者のピザはどちらかというとデザートのような感がある。本書ではホワイトチョコや桃をつかったフルーツのピザの話が出てくる。

 

おしゃれな食卓に気分も上がる!休日の昼下がりに“フルーツと泡“【有元葉子さんのシャンパーニュとこの一皿】 | Web eclat |  50代女性のためのファッション、ビューティ、ライフスタイル最新情報

 

なんだろう。フルーツサンドみたいな感じなんだろうか。著者もこんなピザは外では食べられないからとご自宅で手作りしておられるようだ。

 

パスタもピザもイタリアではもっと多彩な食べられ方をしているのかもしれない。子供用だったり、ラクトアレルギーの人のためだったり、ピザ生地が余ってしまったためだったり、いろいろな理由でのご家庭アレンジ版があるのかも。

 

私が還暦になる頃、こんなオシャレな生活をしていたいな、という思いが強くなった。美味しいものをしっかり食べ、栄養を取り、美しく過ごしたい。ライフスタイルという面でも著者は憧れの存在です。

#452 スーパースターの弟もなかなかやります ~「隠密 味見方同心2」

『隠密 味見方同心 2』風野真知雄 著

魚之進が継ぐ。

 

年末に読んだ本の2巻目。

 


1巻目はえっ!?という終わり方だった。イケメンな上に仕事のできる月浦波之進が家督を継いで同心となった。新しい役割として登場した味見方に抜擢され、あっという間に4つもの事件を解決する。嫁は町人出身だが超美人で料理もうまい。これから波之進の大活躍で悪事が裁かれるに違いない!と読み手はヒーローのような主人公にワクワクしながら読み始める。

 

ところが、その波之進が1巻目の終わりに殺されてしまう。家の前で襲撃を受け、あっという間に命を落とした。兄の襲撃をたまたま遠くから見かけた弟の魚之進は、兄から家督を継いで同心となった。

 

この魚之進も愛すべきキャラクターで、完璧すぎる兄がいても卑屈にならず、温和でマイペースな人物だ。波之進も弟を可愛がっており、研究学徒のような姿に一目置いていたようだ。やはり兄の仕事も継ぐこととなり、次男坊の呑気さで生きて来た魚之進は右も左もわからない八丁堀の仕事に従事する。一応父親から仕事の勝手について聞いては来たけどいまいちよく見えてこない。しかし兄の死を究明したいという思いもあり、魚之進は奉行所の一員となり任務をスタート。

 

波之進には麻次という岡っ引きのサポートがついていた。魚之進も麻次を頼り、今は一緒に行動している。デキる兄のかっこいい隠密っぷりに比べ、魚之進は口の利き方から啖呵のきり方まで麻次を頼りにする始末。しかし気になったことについてはじっと観察し、調べ、考えることを繰り返してきた波之進は頭脳を使っての解決に翻弄する。これがなかなか切れ者で、さりげなく活躍しつつ奉行所に馴染んでいく。

 

今回も食べ物絡みで豆腐、ちくわ、たまご、天ぷらを食べる味見方同心。魚之進のキャラクターが愛らしく、続けて読んでいきたい。

 

#451 ワンプレートを大人風に ~「バランスごはん」

『バランスごはん』有元葉子 著

ワンプレートを上手に作ろう。

 

本書、年末にいくつか書籍を購入した際に楽天で購入したもの。オンライン書店さんには早いタイミングで配送頂くなどなど、とってもとってもありがたい存在ではあるけれど、この頃雑さが目立っていて残念至極。本書もページが破れていたり、端が折れていたりと、本好きとしては書籍を乱調に扱われることが残念でならない。そのまま使う予定ではあるけれど、もし「きれいな状態がいいわ」と思い直したらまた改めて購入するとしよう。

 

さて、この本を読んでまず最初に思ったことは「食器欲しい~!」だった。なぜなら、ワンプレートに盛られたお料理が美味しそうだったからだ。ごはんは玄米が多く、少し色のついたごはんにあらゆる色の野菜が乗せられている。ダークカラーのプレートに色鮮やかなお料理が映える。

 

バランスごはん | 有元葉子 |本 | 通販 | Amazon

 

お料理は蒸す、焼く、揚げるで和洋折衷だがどれもこれもタイトル通りのバランスの良さ。ガツンとボリューミーなお料理というよりは、腹持ち良く満足感の高いレシピのような気がした。

 

例えばミニトマトも表紙の写真のようにパセリやハーブをオリーブオイルで和えるだけでも多彩になってプレートの風景がガラッと変わる。こういうの真似していきたいなあ。

 

意外だったのがパンレシピがあったこと。有元さんのパンのレシピで真っ先に思い浮かぶのはきゅうりのサンドイッチ。軽く塩をしたキュウリをこれでもか!というくらいにぎゅうぎゅうに入れたサンドイッチで、しっかり水分を出し切ることがポイント。

 

有元葉子さんの大反響メニュー!コリコリっとした食感とバターの組み合わせの「きゅうりサンド」 | Web eclat |  50代女性のためのファッション、ビューティ、ライフスタイル最新情報

 

具だくさんのスープと共に食べるとして黒パンが登場している。パンにはバターを塗っただけのシンプルなものだったけど、この頃よく話題にあがるので気になっていた黒パン。オープンサンドなどのレシピが多いのでちょっと面倒だなーと思っていたけどバターだけでも美味しいなら一度買ってみようかな。

 

ところで、ワンプレートというとカフェで出てくるようなブランチのような見栄え重視のものを想像しがちだが、本書は見栄えと言う意味では少し大人向きというか、きゃあかわいい!とインスタにアップしたくなるような感じのものではない。でも、体が欲するような食べ物をワンプレートに乗せることで適量を美味しく、さらには体をいたわりながら食べることのできるレシピが多い。

 

やっぱり著者のレシピ、好きです。

#450 セルフ冷食作りにハマりそうです~「冷凍お届けごはん」

『冷凍お届けごはん』上田淳子 著

目からうろこ。

 

著者の作品を続けていくつか読み、すっかりファンになってしまった。おすすめはこちら。

 


料理のレシピ本を購入するようになり、自分の好みのレシピや好きな料理家さんのレシピがわかるようになってきた気がする。上田さんのレシピ本はまずどれも写真が美しくて、「これ作ってみたい!」という気持ちが止まらなくなる。私の持っている本はすべてフレンチのものだけど日本の食材でも作ることができるものばかり。しかも本当にシンプルレシピなのにしっかりおいしい。

 

ということで、今回はフレンチではなくセルフ冷食の本を買ってみた。私が離れている家族にご飯をお届けするようなことはほぼ皆無で、いつも実家から支援物資が送られてくる側ではあるが、「冷凍」というキーワードに飛びついた。

 

お料理の分量ってどうしても多くなってしまうことが多い。材料を余すことなく使い切ろうと思うからかもしれないけど、大抵の場合は一度に食べきれずに残してしまう。ちょっと前まで無理に食べていたけど、そのせいでダイエットが欠かせないことになってしまったので、これからはセルフ冷食の時代なのです。

 

そもそも、冷凍OKなお料理を見極めなくてはならない。冷凍すると途端に味が落ちるものがいくつかある。一度冷凍してから創作料理にリメイクする目的があるなら別だけれど、加熱して味付けしてしまったもの全てが冷凍に向いているとは限らない。そして例えば何等かの予定があって、事前に料理を準備しておく必要になった時、冷凍できればちょっと楽。お弁当にしてもいいし。

 

ラッキーなことに年末の冷蔵庫掃除のおかげで冷凍室にもゆとりがある。冷食、作ろうではないですか。まず、びっくりしたのはこれ ↓↓↓

 

離れている家族に 冷凍お届けごはん』(上田淳子著) |株式会社講談社のプレスリリース

 

上田式セルフ冷食の場合、お料理を包むのはラップやジップロックではありません!上のようにオーブンシートを使います。というのは、食べる時はレンチンするか蒸し焼きするから。確かにオーブンシートなら食材がくっついて取れないこともないだろうし、捨てる時もエコ。右側の写真のようにきれいに形作って冷凍すれば加熱するときも楽というもの。

 

そうか。オーブンシートなんて考えたこともなかったから、読み始めすぐにかなりの衝撃だった。なるほどな。やっぱり上田さんのレシピ本はすごい。

 

レシピもやはり再加熱することを考えているので工夫が多い。こちらの生姜焼は焼く前の下味の段階で冷凍する。片栗粉で味が飛ばないようにするなどの工夫あり。

 

 

調べてみると動画があった。

 



冷凍から調理まで、動画がいくつかに分かれているのでこちらのほうがわかりやすいかも。

 


レシピはまず材料と作り方の説明があり、簡単な食べ方の説明がある。加熱の方法についての説明がメインでちょっとしたプラスαの説明などは読み逃さないようにしたい。

 

それにしてもオーブンシートとは確かにこれは革命かも。年始から幸先がよいレシピ本。買って良かった!

#449 思わず足が深川に向いちゃいますよね ~「善人長屋 2」

『善人長屋 2』西條奈加 著

加助の善意が長屋を動かす。

 

さて、2巻目です。

 

 

1巻目は短いお話がいくつもあって、登場人物を紹介するような流れだった。一方2巻目は一つの大きなストーリーとなっており、善人長屋が一つとなって悪に対峙する話だ。

 

そもそも、善人長屋は通名通りの善人ばかりが住む長屋ではなく、一見普通の町人のようだけれど裏稼業を持った悪人ばかりが住んでいる。主人公のお縫も2巻目で一つ歳をとり、娘盛り。長屋の住民たちの悪行の中にも「善」があることに気が付き始めている。

 

さて、善人長屋には問題児がいた。加助は本来この長屋に来る予定の人物ではなかった。たまたま来ることになっていた人と同姓同名、元住んでいた地域名まで同じだったことから、差配一家はすっかり勘違いして加助を受け入れてしまった。一度受け入れてしまったので「間違いでした」と追い出すことも出来ず、そのままともに暮らすことに。その加助、何が問題かというと裏稼業を持たないことが大問題。しかも本物の善人だから問題はさらに増す。人助けを信条としており、長屋に次々と困っている人を連れてきてしまう。加助は長屋の住民の裏稼業については何も知らない。自分と同じく善人であり、世のため人のために尽くしていると考えている。長屋の住民も加助には悪行がばれないように暮らしている。

 

善人長屋としては加助のおかげで本当に善意に溢れる生活となり、世間の目をごまかせるような気もするが、それがかえって居心地が悪い。でもお縫にとっては加助の善意が長屋の悪を清算してくれるような、救われる気持ちの素となっている。

 

そんな加助が今回の話の軸だ。加助は妻と娘を火事で亡くしていた。たまたま外出していた加助が家に戻った時には一面が焼け野原となっており、妻と娘の亡骸すら探すことができなかった。家族への思いを断つために、縁の無かった深川に越して出直すことに決めたのだが、ある日八幡宮の祭りで亡くなった妻を見かける。追う加助、逃げる妻。これは何かあると勘繰った善人長屋の面々は真相を探り加助を支えるというストーリー。

 

探る中でのお縫の淡い思いの切なさも堪らない。どんなに江戸娘らしい気風の良さでも、一度心に同じ人の姿ばかりを描くようになれば、強さよりも弱さが目に付く。江戸のお話は斬った斬られたばかりではなく、人の心の繊細さが胸に染みる。

 

このシリーズは読みごたえがあって、朝から電車の中で没頭してしまい、ふと「出勤やめて深川まで行っちゃおうかな」と思うほど。頭の中に長屋の様子がくっきり浮かんできてしまう。そういえばニュース。その後どうなっているのかな。コロナ禍に完全に打ち勝つ日が来たら、また歴史を巡る旅を再開したい。